外国人採用の基礎知識、介護分野の外国人採用制度の概要と現状を詳しく解説

介護DX・テクノロジーの導入などによる職場の環境改善が進んでいますが、やはり介護サービスを提供する人材「介護士」がいなければ、施設の運営はできません。今回は業界の人材採用難の対策として、注目されている「外国人介護人材」について、その制度概要や現状の利用状況などを見ていきたいと思います。
- 介護業界における外国人採用の重要性
- 外国人介護人材の役割と期待
- 外国人採用の制度とは
- 特定技能制度とは
- 制度のまとめ(4つの在留資格の比較)
- 送り出し機関と登録支援機関の選び方
- 制度の相談窓口
- まとめ
- Topics
介護業界における外国人採用の重要性
現在、日本では深刻な人口減少が進んでおり、今後の人口推計では2100年に約5,000万人まで減少することが予測されています。
日本の総人口は2050年には約1億人へ減少

現在の人口から約60%減少する約5,000万人という数値は、1900年頃(日露戦争や第一次世界大戦などがあった時代)の人口に匹敵します。これは人類がいまだかつて経験したことがないことで、この70年間で様々な変化が生じることが予測されています。
このような人口減少によって、各産業ではすでに深刻な「人手不足」が生じています。特に深刻なのが介護分野です。地域や業務内容によって人材の採用が難しく、介護業界では65歳以上の高齢者が同じ高齢者を介護する「老々介護」という状況が発生したりするなど、大きなリスクを抱えています。
事業運営には若い職員の採用が必要ですが、新卒採用・中途採用ともに人材の取り合いがあり、地域や雇用条件による人材確保の格差が、都市部と地方の間で顕著となっています。
外国人介護人材の役割と期待
人口減少の中で、逆に人口が伸びているのが外国人の在留者数です。出入国在留管理庁(入管庁)によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人(前年比35万6,418人増)で過去最高を更新しました。

出典:法務省「外国人労働者に関する制度概要 2026年3月27日更新版」
在留資格をみても全体的な人数増加となっていて、なかでも就労を理由とした在留人数が増加しており、外国人労働者数は257万1,037人(前年比26万8,450人増/2025年11月時点)と過去最高を更新。これは国内労働者数の約3%にあたり、人材確保が困難な産業を中心に、外国人を受け入れる事業所が年々増加しています。
介護業界でも同様に東南アジアを中心とした各国から、比較的若い人材を受け入れています。今では貴重な担い手として、なくてはならない存在となっています。
外国人採用の制度とは
企業が外国人を雇用する場合、基本的には日本人採用と同じですが、唯一違う点は出入国管理及び難民認定法(入管法)が関係することです。外国人を受け入れる際は、該当する入管法を理解していることが前提となります。業者などに任せきりにするのではなく、制度の理解・把握することが必須です。
在留資格の種類と特徴
在留資格とは、外国人が日本に在留する間、一定の活動を行うことや、身分・地位があることを認めた「入管法上の法的な資格」のことです。現在、日本国では約30種類の在留資格があります。

介護の在留資格(EPAなど4つの資格)について
介護事業所で外国人の受け入れができる在留資格には、就労の制限のない身分系在留資格(永住・定住・日本人の配偶者・永住者の配偶者)と、介護での就労が認められる在留資格(特定技能・技能実習・介護・EPA「介護福祉士候補者/特定活動」)があります。
また、原則就労は認められませんが、「資格外活動許可」を入管庁に追加申請し認められることで、留学や家族滞在の在留資格でもアルバイトとして勤務が可能です。
ただし、アルバイトの場合は週28時間が就労できる上限時間です。28時間を超えて就労すると、「資格外活動違反(不法就労)」の扱いとなり、在留資格の更新や変更が認められず、強制帰国となる場合があるので注意が必要です。
「特定技能・技能実習・介護・EPA」は、介護での就労が認められますが、それぞれ在留資格の目的が違います。各在留資格の違い(概要)は下記となります。

研修目的で受け入れるのが「EPA」「技能実習」、労働者として受け入れるのが「特定技能」「介護」です。「介護」は介護福祉士の資格取得した方で、この4つの在留資格の内では、もっとも即戦力として勤務可能な方といえます。
2024年末の時点で、もっとも在留数が多いのが「特定技能」です。在留資格の取得の難易度や、行うことができる業務内容など、汎用性が高い資格であるため、多くの介護施設で受け入れが進んでいます。
特定技能制度とは
特定技能とは、外国人が日本で就労するのに必要な在留資格のひとつで、現在16の産業分野で受け入れが可能です(2027年度から19分野の見通し)。日本で人材確保が困難な産業分野への人手不足を解消するため2019年に新しく創設された在留資格で、一定の専門性と技能・日本語能力を持ち、即戦力として活躍できる外国人の受け入れを目的としています。
2019年の制度導入以降、コロナ禍の時期を含め右肩上がりで人数が増加しています。

出典:出入国在留管理庁「制度説明資料 2026.3.27更新版」
特定技能制度の詳細

特定技能は制度上、1号と2号があります。ただし、介護分野は2号が認められていないため、特定技能で活動できる期間は最大で1号の5年となります。
採用は、国内在留者・海外在住者双方から採用することができます。採用方法には、技能実習生で介護の実習を3年間以上行った方(技能実習ルート)と、特定技能の試験に合格した方(試験ルート)の2つのルートがあります。
特定技能として勤務できるのは最大で5年間です。5年以上勤務を継続するには、日本人と結婚するなどの「日本人の配偶者となる」か、介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」に資格変更するしかありません。特定技能の介護福祉士合格率は、2024年度試験で33.3%となっており、特定技能5年間での試験対策が大変重要になってきます。
受け入れ可能な人数
特定技能の受け入れ人数枠は、事業所単位で常勤の介護職員の総数を超えないこととされています。ここでいう「常勤の介護職員」とは、介護等を主たる業務として行う常勤職員を指します。
以下の職員は含まれません。
- 技能実習生、EPA介護福祉士候補者、留学生
- 事務職員や就労支援を行う職員
- 看護業務を行う看護師及び准看護師
ただし、医療機関において以下に該当する場合は算定基準に含まれます。
- 看護師や准看護師の指導のもとに、食事・清潔・排泄・入浴・移動等の療養生活上の世話を行う看護補助者
- 当該看護補助者の指導を同一病棟で行っている看護師及び准看護師
特定技能の受け入れの要件(介護の場合)
特定技能1号の就業が認められる施設は、「介護」 業務の実施が一般的に想定される範囲です。具体的には、介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認められるもののうち、厚生労働省が別途定めるものとされています。具体的には下記表のとおりです。
参照:厚生労働省「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」
介護分野における特定技能が従事できる業務
- 技能評価試験の合格等により確認された技能を要する身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)の業務
- 関連業務(例:お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等)に付随的に従事すること
上記以外の業務や作業を行わせてはいけません。また、上記の関連業務が業務の主体となっていたり、実態として身体介護を行っていなかったりする場合も認められません。主な業務として、身体介護を行う必要があります。
特定技能の技能評価試験とは
特定技能は一定の専門性と技能・日本語能力を持っていて、労働者として勤務することができます。この「一定の専門性と技能・日本語」とは、世界各国で実施されている「特定技能評価試験」などに受験し、合格することでスキルを身につけているかどうかを判断しています。
特定技能の試験は、日本国内だけでなく、東南アジアを中心に様々な国で実施されています。介護分野は2026年現在で12か国(フィリピン/カンボジア/インドネシア/ネパール/モンゴル/ミャンマー/タイ/ベトナム/スリランカ/インド/ウズベキスタン/バングラデシュ)で実施されています。
介護分野の試験は2025年6月末時点で計17万5,210人が受験し、13万5,685人が合格していて、合格率は約77%です。
特定技能介護分野の試験概要
試験は介護に関する試験(介護技能評価試験/介護日本語評価試験)と、日本語能力の試験(JLPT or JFT)の3つで、すべて合格する必要があります。

介護の試験2つはCBT方式(パソコンで回答する択一問題)で実施されます。
日本語試験について
特定技能が身につけなければならない日本語は、日本語能力検定のN4とされています。N4程度の日本語レベルとは基本的な日本語を理解することができるとされています。あくまで「理解できる」であって、「話すことができる」ではない点に注意してください。
各在留資格の日本語能力(日本語能力試験:JLPT/JFT)

ちなみに将来、介護福祉士の合格を目指す場合は一般的にN2程度の日本語能力が必要と言われています。
協議会の加入
特定技能を受け入れる際は、必ず特定技能介護分野の協議会に加入しなければなりません。協議会は、特定技能を受け入れている事業者が協力し合い、制度をより良いものにしていくための意見交換や情報発信などを行うために設立されたものです。介護分野も含め、すべての特定技能産業分野で各協議会に加入しなければなりません。
協議会の加入については申請書類を提出するだけで費用はかかりません。一般的には登録支援機関などの業者が案内してくれます。

出典:出入国在留管理庁 制度説明資料「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」
制度のまとめ(4つの在留資格の比較)
その他の注意点などを比較まとめると以下となります。

特定技能は他の在留資格と比べると、夜勤や配置基準について有利な内容になっています。ただし、あくまでも在留資格上(制度上)の優遇にすぎず、特定技能に不足している業務経験などの実業務や日本語はしっかりと教育していく必要があります。
訪問介護について
制度創設・法律施行当時は特定技能による訪問介護は禁止されていましたが、制度が見直され2025年4月に解禁されました。ただし、訪問系サービス業務の実施には一定の条件が設定されているので、サービスの実施を行う場合は以下の事項を遵守する必要があります。
- 介護職員初任者研修過程を修了
- 介護事業所等で1年以上の実務経験
- 利用者・家族への事前説明を行う
- 外国人介護人材に対し訪問介護業務の基本事項等に関する研修を行う
- 訪問介護業務に従事する際、一定期間責任者等が同行し必要な訓練を行う
- 訪問介護業務の説明と、本人の意向を確認しキャリアアップ計画を作成する
- ハラスメント防止の為の相談窓口等の設置
- トラブル等不測の事態に対処できる通信環境の整備などを行う
また、外国人を訪問系サービスに従事させる場合、各事業所は以下の手続きを行う必要があります。
- 適合確認申請
- 巡回訪問への対応
- 定期報告
これら各手続きは公益社団法人の「国際厚生事業団/JICWELS」が実施しています。
ご不明な点は下記へお問い合わせください。
公益社団法人 国際厚生事業団
外国人介護人材支援部
TEL:03-6206-1262 FAX:03-6206-1165
特定技能外国人の訪問系サービスへの従事について
参照:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について『対象施設一覧』」
送り出し機関と登録支援機関の選び方
特定技能を受け入れる場合、現地でのリクルート活動や入国管理局への在留資格取得の手続き、住居準備や生活面のサポートなど様々なタスクが発生します。受け入れ経験が豊富な企業であれば、自社単独で受け入れができるかもしれません。しかし、初めて受け入れる場合や、ノウハウが蓄積できていない、社内リソースを割くことができない場合は、専門業者に委託するのが一般的です。
受け入れにあたり介在する機関としては、「送り出し機関」と「登録支援機関」があります。それぞれについて解説していきます。
送り出し機関とは
送り出し機関とは、特定技能などの日本で就労を希望する人材を、受け入れ企業に代わって「現地募集・面接設定」「実施段取り」「日本語教育」「ビザ取得」の業務を行う機関のことです。各国政府より正式なライセンスを持つ、いわゆる「海外派遣会社」のような存在です。
日本企業が外国人を受け入れたいと思っても、各社が直接相手国に採用に赴いたり、募集したりするにはノウハウが必要です。そもそも相手国の法律に違反してしまうこともあります。海外から人材を受け入れる場合は、この送り出し機関の選定が重要になります。
各国で政府公認された「認定送り出し機関」は、出入国在留管理庁のホームページで確認することができます。
参照:出入国在留管理庁「特定技能に関する二国間の協力覚書」
登録支援機関とは
登録支援機関とは、特定技能に提供しなければならない10個の支援(義務的支援)を、受け入れ企業(入管法上は特定技能所属機関といいます)からの委託を受け、支援サービスの提供を行う法人、または個人です。
2026年4月時点で約1万1,300社が登録支援機関として、法務省に登録されています。
また登録支援機関は職業紹介事業許可を取得しているところも多く、事業許可がある場合は現地送り出し機関と受け入れ企業の間に立って求人・求職のあっせんを行います。
登録支援機関は入国管理庁のHPで最新の業者リストが公開されています。
参照:出入国在留管理庁「登録支援機関」
各社の関わり
特定技能・受け入れ企業(特定技能所属機関)・送り出し機関・登録支援機関・出入国在留管理局の関係性を図にすると以下のようになります。

業者選定のポイント
登録支援機関は、受け入れ企業から支援業務を委託され、かわってサービスを提供するので、必ず業務委託料が発生します。法的に必要な10個の支援を法令通りに実施するのは、どこの登録支援機関でも同じですが、選定のポイントは
☑どの程度の費用で・どこまでの支援をやってくれるのか
☑費用に見合ったサービスを提供してくれるのか
様々な業者から見積もりを取り、詳しく話を聞いてみましょう。
また、最も重要な部分は、「トラブル発生時の対応」です。必要に応じて現地への駆け付けや、対応できる時間帯についても柔軟な体制を取れる業者が安心して業務の依頼ができるということになります。
制度の相談窓口
特定技能の在留資格取得や制度などについての相談・質問は入国管理局が窓口となります。法人の住所ごとに管轄入管が決まるので、該当する管轄窓口する窓口へ連絡します。
インフォメーションセンターもしくは入管窓口でも対応可能です。
参照:出入国在留管理庁「外国人在留総合インフォメーションセンター等」
また、業務内容などさらに細かな点の確認は厚生労働省にて相談が可能です。
厚生労働省社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室
TEL:03-5253-1111(内線2844)
まとめ
外国人を受け入れるには在留資格を取得する必要があり、在留資格ごとにこまかな制度が作られています。入管法は非常に細かくわかりにくい点があるので、制度の概要を把握することはもちろん、登録支援機関等の専門家にいろいろ相談していただくことをおすすめします。
業者選定の際は、「業者の営業担当がどの程度法知識を持っているか」「パートナーとして長い付き合いができるか」などについても確認し、良好な業者を選定・連携し今後の人材確保を進めていくことが大切です。
Topics
特定技能、外食産業分野の受入れ停止が介護事業にもたらす影響とは
2026年1月23日、政府は外国人労働者の在留資格「特定技能1号」と「育成就労制度」について、分野別運用方針と受け入れる上限人数を閣議決定。上限人数50,000人※1に到達が見込まれる外食業分野において、入管庁は受け入れを事実上停止する通達を3月23日に出しました。このため、政府が見直しを行わないかぎり、外食業で新たに特定技能1号※2を受け入れることができなくなりました。
外食業の接客は仕事のイメージがつきやすく、都心の求人が高いことから、外国人から人気が高いことが理由です。外食業分野での特定技能の在留資格が新規取得できなくなると、今後、介護を希望する人材が増加する可能性が高くなっていきます。
また、介護人材が注目される要因として、特定技能2号を取得する外国人が増加傾向にあることも考えられます。
特定技能2号は経営や管理職を行う在留資格のため、特定技能1号の外国人が全員2号になることは制度上ありません。しかし、介護の場合、2号に相当する在留資格「介護」の要件に、管理職業務は含まれていません。このため、特定技能1号で実施した身体介助をそのまま継続することで、長期間勤務が可能となるので、介護を希望する人材が増加することが予測されます。
※1上限人数は2029年3月末までの期間における上限人数
※2すでに外食の特定技能を取得している方を採用することは可能
