居宅介護支援の特定事業所加算完全ガイド|算定要件や注意点を徹底解説

介護施設掲載日: 2025.05.21(更新日: 2025.05.21)
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介護保険制度において、居宅介護支援事業所が質の高いケアマネジメントを提供するための加算に「特定事業所加算」があります。この加算を算定することは、サービスの質の向上だけでなく、事業所経営の安定にも大きく寄与します。しかしその一方で、複雑な算定要件や人員体制の整備、実地指導への対応など、クリアすべきハードルも少なくありません。

本コラムでは、令和6年度の最新通知に基づき、特定事業所加算の種類や算定単位数、要件、実務上の注意点について解説します。経営者視点でのメリット・デメリットや取得のポイントも考慮し、特定事業所加算の取得をするか否かで迷っている方はぜひ参考にしてください。

居宅介護支援における特定事業所加算とは

特定事業所加算とは、一定の人員体制や業務運営体制を整えた居宅介護支援事業所が、通常よりも手厚いケアマネジメントを行うことを評価したものです。特定加算を取得することで、収益性の向上はもちろんのこと、地域における信頼性の高いサービス提供体制の確立にもつながります。

経営者の視点から見れば、特定事業所加算は月額の報酬単価が加算されるため、財務的な安定や収益の増加が期待できます。また、特定事業所の看板は、地域住民や医療機関、行政からの信頼を獲得しやすいといえるでしょう。さらに、人材採用や職員の定着においても、「教育体制が整い、専門性を磨ける職場、集積性の高い職場」として魅力を打ち出すことができるため、採用競争において有利に働くと考えられます。

一方で、特定事業所加算の取得には、主任介護支援専門員や常勤の介護支援専門員の複数名配置の人員基準が求められるほか、利用者1人当たりの担当件数の制限や定期的な研修の実施、24時間対応体制の整備など、多くの要件を継続して満たす必要があります。これにより、人件費の増加や要件管理に伴う事務負担が大きくなる点には留意が必要です。また、要件を満たさなくなった場合には、即時に加算が取り消され、報酬が減額されるリスクも存在します。

従業員にとっても、特定事業所で働くことにはメリットがあります。職員の数が十分に確保されていれば、業務の偏りが軽減され、無理のない業務配分が可能になります。また、研修や会議などの機会を通じてスキルアップが図れる環境が整備されていることで、ケアマネジャーとしての専門性を深めながら、チームで支え合う魅力的な働き方ができるのではないでしょうか。ただし、要件を満たすために制度上必要な研修や会議が多いと負担を感じる職員もいるかもしれません。また、研修の参加や記録により現場では業務過多となるリスクもあるため、運用にあたり業務改善の対策が重要となるでしょう。

このように、特定事業所加算は収益性が改善する反面、継続的な体制の整備とマネジメントが求められる制度です。事業所の将来像と照らし合わせながら、取得・継続の可否を検討することが重要です。

特定事業所加算の種類と単位数

  • 特定事業所加算(Ⅰ):519単位
  • 特定事業所加算(Ⅱ):421単位
  • 特定事業所加算(Ⅲ):323単位
  • 特定事業所加算(A):114単位

算定要件の詳細と算定要件

特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件

  1. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を2名以上配置していること。
  2. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を3名以上配置していること。(主任介護支援専門員とは別に配置が必要)
  3. 利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること。
  4. 24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者の相談に対応する体制を確保していること。
  5. 算定日が属する月の利用者の総数のうち、要介護3~要介護5である者の占める割合が100分の40(40%)以上であること。
  6. 当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること。
  7. 地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること。
  8. 家族に対する介護等を日常的におこなっている児童や障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修会に参加していること。
  9. 居宅介護支援費に係る特定事業所集中減算の適応を受けていないこと。
  10. 指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり45名未満であること。(居宅介護支援費Ⅱを算定している場合は50名未満であること)
  11. 介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること。
  12. 他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること。
  13. 必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス(介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等をいう。)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること。

特定事業所加算(Ⅱ)の算定要件

  1. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を1名以上配置していること。
  2. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を3名以上配置していること。(主任介護支援専門員とは別に配置が必要)
  3. 利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること。
  4. 24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者の相談に対応する体制を確保していること。
  5. 当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること。
  6. 地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること。
  7. 家族に対する介護等を日常的におこなっている児童や障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修会に参加していること。
  8. 居宅介護支援費に係る特定事業所集中減算の適応を受けていないこと。
  9. 指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり45名未満であること。

(居宅介護支援費Ⅱを算定している場合は50名未満であること)

  1. 介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること。
  2. 他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること。
  3. 必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス(介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等をいう。)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること。

特定事業所加算(Ⅲ)の算定要件

  1. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を1名以上配置していること。
  2. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を2名以上配置していること。(主任介護支援専門員とは別に配置が必要)
  3. 利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること。
  4. 24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者の相談に対応する体制を確保していること。
  5. 当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること。
  6. 地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること。
  7. 家族に対する介護等を日常的におこなっている児童や障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修会に参加していること。
  8. 居宅介護支援費に係る特定事業所集中減算の適応を受けていないこと。
  9. 指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり45名未満であること。(居宅介護支援費Ⅱを算定している場合は50名未満であること)
  1. 介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること。
  2. 他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること。
  3. 必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス(介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等をいう。)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること。

特定事業所加算(A)の算定要件

  1. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を1名以上配置していること。
  2. 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を1名以上に加え、常勤換算方法で1以上配置していること。(主任介護支援専門員とは別に配置が必要)
  3. 利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること。
  4. 24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者の相談に対応する体制を確保していること。(連携先事業所等へ携帯電話等の転送による対応等も可。)
  5. 当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること。(他事業所との連携も可)
  6. 地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること。
  7. 家族に対する介護等を日常的におこなっている児童や障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等に関する事例検討会、研修会に参加していること。
  8. 居宅介護支援費に係る特定事業所集中減算の適応を受けていないこと。
  9. 指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり45名未満であること。
  1. (居宅介護支援費Ⅱを算定している場合は50名未満であること)介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること。
  2. 他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること。
  3. 必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス(介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等をいう。)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること。

特定事業所加算を取得する際の注意点

専ら指定居宅介護支援の提供にあたる常勤の主任介護支援専門員および介護支援専門員の配置において、利用者に対する指定居宅介護支援の提供に支障がない場合は、当該居宅介護支援事業所の他の職務と兼務をし、又は同一敷地内にある他の事業所の職務と兼務をしても差し支えないとされています。また、令和6年度の介護報酬改定で、「運営基準減算の適応を受けていない」とする要件は削除されました。

経営目線で考える「取得か否かの分かれ道」

特定事業所加算は収益の改善が期待できる反面、取得のための人件費や体制整備には大きなコストがかかります。特に、人員確保の面では、常勤かつ専従の主任介護支援専門員、介護支援専門員の継続雇用が可能か、万一退職者があった場合、速やかに補充が出来るかが重要なポイントです。また、24時連絡体制の方法や職員の協力があり実現可能か、夜間帯や休日の対応への手当などの整備も必要となります。

特定事業所加算の安定運用にむけて

特定事業所加算を継続的に算定するためには、所定の人員配置や利用者数の管理に加えて、定期的な研修の実施が不可欠な要件となっています。しかし、こうした研修をすべて自事業所内で企画・運営しようとすると、講師の確保、資料の準備、記録の整備といった業務に相当な工数がかかります。そこで注目すべきなのが、地域の関係機関や外部の専門研修機関を活用するという選択肢です。

外部研修を利用することで、実務上の負担が大幅に軽減されるだけでなく、研修の内容は質の高いものが期待できます。たとえば、医療連携のテーマであれば、地域の医師との連携事例や退院支援の実際など、実務に直結する深い学びを得ることも可能です。さらに、外部講師との意見交換の機会があると、職員一人ひとりの視野が広がり、専門職としての意識やモチベーション向上にもつながります。

民間の研究機関を利用する場合はコストがかかりますが、外部研修の費用と算定可能な加算の収益を比較すると、費用対効果という観点で非常に優れた投資となる場合も多いと考えられます。また、職員に対して学びの機会を提供する事業所として、長期的な人材定着や育成にも直結することが期待できます。

このように、外部研修機関を活用することは、単なる実務の効率化だけでなく、制度への対応力の強化、ケアマネジャーの専門性の向上を可能にし、事業所の持続的成長を支えることになるでしょう。

まとめ

居宅介護支援事業所における特定事業所加算は、介護支援専門員の質の高いケアマネジメントを評価し、事業所の体制整備を促す重要な制度です。加算の種類ごとに明確な要件が設定されており、算定にあたっては人員配置や業務体制、研修、記録管理など、実務上の多くの項目にわたって準備と維持が求められます。

収益性の向上や地域における信頼の獲得といった大きなメリットがある一方で、人件費や管理業務の増加といった負担も無視できません。現場のケアマネジャーにとっても、スキルアップや業務の質の向上につながる半面、研修や会議への参加など、時間的・精神的な負荷が伴う可能性があります。

これらを踏まえると、加算の取得と継続は、単なる介護報酬の増加や制度上の評価を得るための手段としてではなく、持続可能で質の高い介護支援体制を実現するための経営判断として捉えることが重要です。制度の要件を正しく理解した上で、自事業所の状況や将来的な方向性と照らし合わせながら、どの加算を取得するか、またどのように運用するのかを戦略的に考えることが、今後の経営の安定とサービスの質の向上の両立につながると考えます。

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  • 合同会社カサージュ代表/主任介護支援専門員/
    BCAO認定事業継続管理者/産業ケアマネジャー

    寺岡 純子

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