【特定事業所加算】訪問介護における個別研修計画とは?計画の立て方や注意点など詳しく解説

介護報酬・加算掲載日: 2024.07.08(更新日: 2024.07.08)
研修の計画を立てている様子

訪問介護事業所では、高齢者の在宅生活を支援するため、様々なサービスを提供しています。これらのサービスの質を保つためには、訪問介護員のスキルアップが不可欠です。そのため、特定事業所加算を算定している事業所では、個別研修計画を策定し、介護員一人ひとりの能力向上を図ることが義務付けられています。

訪問介護における個別研修の重要性

訪問介護事業所における特定事業所加算に必要な要件として、訪問介護員への個別研修の実施が含まれています。

以下の通り、訪問介護の特定事業所加算では(Ⅰ)~(Ⅴ)のいずれの算定においても、個別研修計画の策定と計画に従い研修を実施している又は実施を予定されていることが必要です。

訪問介護の特定事業所加算の算定要件

 (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)  (Ⅴ)
1.個別の訪問介護員等、サービス提供責任者に係る研修計画を策定し当該計画に従い研修を実施又は予定
2.訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催
3.サービス提供責任者と訪問介護員等との間の情報伝達及び報告体制を整備
4.健康診断の定期的な実施体制を整備
5.緊急時等における対応方法を利用者に明示
6.看取り期対応として、病院等の看護師と連携し24時間連絡及び訪問対応が可能であり、看取り期の対応方針の策定と研修を実施   
7.中山間地域等の居住者に継続的なサービス提供    
8.多職種共同による訪問介護計画の随時見直し    
9.介護福祉士の割合が30%以上又は介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者の割合が50%以上いずれか 〇   
10.すべてのサービス提供責任者が実務経験3年以上又は実務経験5年以上の実務者研修修了者   
11.基準を上回る常勤サービス提供責任者を配置  いずれか 〇いずれか 〇 
12.勤続年数7年以上の訪問介護員等が30%以上   
13.以下の重度者の割合が20%以上 ・要介護4・5 ・日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ) ・痰の吸引等を必要とするいずれか 〇 いずれか 〇  
14.看取り期の利用者への対応実績が1人以上ある(併せて、6.の要件を満たしていること)   

訪問介護における特定事業所加算について、より詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。
訪問介護における特定事業所加算とは?算定要件や達成条件について解説【2021年度改定対応】

訪問介護の個別研修計画の基本と考え方

個別研修計画を策定する際には、以下の基本的な考え方を理解することが重要です。

個別研修計画の基本

個別研修は、訪問介護員が直面する多様なケースに対応できるよう、また、訪問介護員の経験やスキルに応じて、その知識と技術を継続的に更新し、専門性を高めることを目的としています。また、介護員のモチベーションを維持し、職場の離職率を低下させる効果もあります。これにより、サービスの質の向上だけでなく、事業所の経営安定にもつながります。

個別研修計画は、介護員の現在のスキルレベル、キャリアプラン、事業所のニーズを総合的に考慮して作成します。従業者の資質向上を目的とし個別で具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期を記載しておく必要があります。

個別研修計画の立て方

個別研修計画を立てる際には、最初に訪問介護員との面談を通じて、その人の強みや改善点、学びたい分野を把握します。次に、事業所のサービス提供の質を向上させるために必要なスキルを特定し、それらを研修計画に組み込みます。研修は、実務に即した内容であることが望ましく、理論だけでなく実践的なスキルの習得ができるような内容を検討しなければなりません。

個別研修計画の立て方や事例ついてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
特定事業所加算の個別研修計画とは?計画の立て方や事例も紹介

訪問介護の個別研修計画を策定する際のポイントと具体例

訪問介護事業所における個別研修計画の策定について、以下にポイントと具体例を挙げます。

個別研修計画のポイント

  1. 個々の訪問介護員のニーズに合わせたテーマ
    介護員の経験、スキル、キャリア目標に基づいて、個別の研修内容を計画しましょう。
  2. 実践スキルが強化できる研修内容
    研修内容は、座学による介護の理論だけでなく、実際の現場で直面する状況に対応できる実践的なスキルの習得を重視したものにしましょう。
  3. 計画は柔軟性を持たせる
    研修計画は、介護員の状況や事業所の変化に応じて、柔軟に調整できるようにしておきましょう。

研修の方法

個別研修は、さまざまな実施方法があります。研修の目的に応じて適した方法を用いるようにしましょう。

  1. ケーススタディ
    訪問介護員が実際に経験したケースを基に、どのように対応したか、どのような点が改善できるかを振り返ります。
  2. ロールプレイ
    実際の介護シーンを模擬でシミュレーションし、コミュニケーション能力や緊急時の対応力などを養います。
  3. ワークショップ
    特定のスキルや知識に関するワークショップを実施します。専門的な技術の向上を図るためには、経験値が十分な講師を選定する必要があります。事業所内部で適当な講師がいない場合、外部講師を活用すると良いでしょう。
  4. オンライン研修プログラム
    時間や場所に制約されず、自分のペースで学べるe-ラーニングの利用は、受講する職員の負担を減らすことができ非常に便利です。

個別研修の具体例

訪問介護事業所における個別研修計画は、介護員の専門性を高め、質の高いサービスを提供するために不可欠ですが、どのようなテーマが良いのか疑問に感じることもあるのではないでしょうか。

以下に、個別研修の具体的なテーマの事例をいくつか紹介します。

  1. 認知症ケアの基礎
    認知症の理解を深め、適切なコミュニケーション技術やケア方法を学びます。
  2. 緊急時の対応訓練
    緊急事態が発生した際の適切な対応方法を習得し、冷静さを保つ訓練を行います。
  3. ターミナルケアの理解
    終末期ケアにおける心理的、社会的支援の方法を学び、尊厳を持って最期を迎える支援ができるようにします。
  4. 家族支援プログラム
    利用者の家族との関係構築や、家族が抱える問題への対応方法を学びます。
  5. 介護技術の最新動向
    最新の介護技術やツールの使用方法を学び、効率的なケアが実施できるようにします。

これらのテーマは、介護員が日々の業務で直面する状況に対応するための知識とスキルを学ぶのに適しています。個別研修計画にこれらのテーマを取り入れることで、訪問介護員はより専門的なサービスを提供し、利用者の生活の質の向上に寄与することが期待できます。

効果的な研修の実施方法

研修は、職員のスキルと知識を向上させ、組織の成長を促進するための重要な手段です。そのため、研修の目的と目標を明確に定義することが重要です。これにより、研修の内容と方法を適切に設計し、期待される成果を測定する基準を設けることができます。また、研修対象者のニーズの把握を十分に行いましょう。対象者が何を必要としているかを理解することが、研修内容を決定する上で不可欠です。アンケート、面談、業務評価などを通じて、対象者のニーズを収集し分析します。

研修は理論だけでなく、実際の業務に即した実践的な内容を取り入れましょう。これにより研修の効果を高め、受講者が意欲的に研修に参加することを促します。研修方法は、ケーススタディ、ロールプレイング、シミュレーションなどが有効です。その他、講義、グループワーク、eラーニングなど、多様な学習方法を組み合わせることで、異なる学習スタイルに対応し、参加者の関心とモチベーションを維持することが可能になります。

研修の進行途中と終了後にフィードバックと評価を行うことで、研修の効果を測定し、改善点を特定します。これには、参加者の自己評価や講師からの評価、テストの結果などが含まれます。このフィードバックと評価はいつ実施するのかを、計画の中に組み込んでおくようにしましょう。また、研修が終了した後も、学んだ内容を実務に活かし、さらなる学習を促進するためにサポートを継続します。具体的には、フォローアップ研修や業務の中で実施した際の問題や課題に対するアドバイス、資料の提供などが有効です。

研修の質は、講師の専門性と教材の内容に大きく依存します。経験豊富で知識の深い講師を選定し、最新の情報を含む質の高い研修内容を準備しましょう。

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研修計画の書式

個別研修計画には①個別で具体的な研修の目標、②研修内容、③研修期間、実施時期等を定める必要があります。また、個別研修計画は、すべての職員等が概ね1年に1回以上、何らかの研修を受講できるようにし計画します。

ただし、職責、経験年数、勤続年数、保有資格や本人の意向に応じて、事業所内の職員をグループ分けして研修を受講させる計画も可能です。ただし、加算の趣旨を踏まえて、資質向上につながる内容にしなければなりません。

個別研修計画例

令和●年度個別研修計画(研修期間:令和●年4月~令和▲年3月)

氏名経験年数保有資格研修目標研修内容・実施時期等備考
事業所内研修外部研修
●● ●●8年介護福祉士サービス提供責任者の役割について、他のサービス提供責任者に指導・助言できるようになる・サービス提供責任者研修を担当 (令和●年12月)コミュニケーション研修 (令和●年7月)研修講師を務める
▲▲ ▲▲5年実務者研修採用1年目職員のOJT担当として指導ができるようになる年間を通じて新人職員のOJTを実施する  
〇〇 〇〇3年初任者研修・ハラスメント対応ができるようになる ・利用者に合わせた調理ができるようになる研修参加後レポートを提出 ・ハラスメント研修 (令和●年1月) ・調理実習研修 (令和●年2月)  

全体研修計画例

また、全体研修計画についても以下に記しておきます。全体研修は事業所の研修の全体像が分かるようにします。研修は事業所内研修または外部研修のいずれかのみでも問題ありませんが、職員の質の向上に必要な機会を適切に提供できるよう計画されていなければなりません。

令和●年度全体研修計画(研修期間:令和●年4月~令和▲年3月)

【事業所内研修】

研修内容対象者研修担当4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
法令遵守全体研修□□           
接遇研修全体研修□□           
認知症と認知症ケア全体研修□□           
事故発生・ヒヤリハット全体研修□□           
緊急時対応全体研修□□           
プライバシー保護全体研修□□           
感染症まん延防止全体研修□□           
災害時対応全体研修□□           
採用1年目研修×× ××▲▲ ▲▲年間
サービス提供責任者研修◎◎ ◎◎●● ●●           
ハラスメント研修〇〇
〇〇
□□           
調理実習研修〇〇
〇〇
□□           

【外部研修】

研修内容対象者研修機関4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
介護職員等実務者研修△△■■          
コミュニケーション研修●● ●●〇〇セミナー           

【勤務体制の確保】

個別研修・外部研修を考慮したシフト作成を行う
・外部研修にかかる費用(研修費、交通費)は法人が負担する
全体研修・できるだけ全員が参加できるようにシフトを考慮する
・研修に参加できなかった場合は、研修担当者による伝達研修を実施する

個別研修計画の事例紹介

ここでは、実際にどのような個別研修計画が策定されているのか、具体的な事例を紹介します。

事例1: 新人介護職員等のための基礎研修

新人介護職員等が対象のこの研修計画では、基本的な介護技術やコミュニケーションスキルの習得を目標としています。研修内容には、移乗支援技術、バイタルサインの測定、記録の取り方などが含まれ、実務に即したロールプレイやケーススタディを通じて学びます。研修期間は3ヶ月とし、週に1回の集合研修とオンラインでの自習を組み合わせて行います。

事例2: 中堅介護職員等のための専門スキル向上プログラム

こちらの研修計画は、特定の専門分野での知識深化を目指す経験豊富な介護職員等を対象としています。例えば、認知症ケア、終末期ケア、リハビリテーション支援など、特定のテーマに沿った研修を行い、専門性を高めます。研修は6ヶ月間にわたり、月に2回の集合研修と専門家によるワークショップ、実地訓練を組み合わせて実施します。

事例3: マネジメント能力強化のためのリーダーシップ研修

管理職やリーダー職を目指す職員のための研修計画です。チームマネジメント、コミュニケーションスキル、業務改善などのテーマを扱い、職員がリーダーシップを発揮し、チームを率いる能力を養います。研修は1年間を通じて行われ、定期的なセミナーやワークを通じて学びます。

これらの事例は、個別研修計画の多様性と柔軟性を考慮し、職員一人ひとりのニーズに合わせた研修を提供しています。個別研修計画の策定は、介護事業所にとって重要な取り組みであり、職員のスキルアップを図ることは、高品質な介護サービスの提供に直結し、利用者の満足度向上にもつながります。

まとめ

訪問介護事業所における個別研修計画は、介護職員等の専門性を高め、質の高いサービスを提供するために不可欠です。この記事では、個別研修計画の重要性や基本的な考え方、策定のポイント、具体的なテーマ例、実施方法、そして特定事業所加算の申請時に必要な書類について解説しました。

特定事業所加算を算定する訪問介護事業所は、個別研修計画を通じて介護職員等の専門性やサービスの質の向上を促し、利用者の満足度を高めることが求められます。個別研修計画の策定と実施は、事業所の責任ある運営を示すとともに、利用者に対する高品質なサービスの提供を約束するものです。事業所は、これらのポイントを踏まえて質の高い研修を提供し、人材育成を効果的に行わなければなりません。

ツクイスタッフでは、最新の情報に基づき、介護業界に特化した総合研修サービスを展開しています。専門性の高い講師による質の高い研修を、「集合研修」と「動画研修」の2つのスタイルから選んで受講することができます。

集合研修は、研修テーマや内容をカスタマイズすることができます。オンライン・オフラインどちらも対応しているため、各事業所のニーズに合わせて自由に設計することができます。

また、動画研修は、職員の隙間時間で受講してもらうことができ、手軽に研修を実施することができます。加算の取得要件の研修テーマも数多く取り揃えており、行政への提出書類を簡単に作成できる機能も実装しています。

このような外部研修もうまく活用し、事業所の質の向上を目指していきましょう。

  • 合同会社カサージュ代表/主任介護支援専門員/
    BCAO認定事業継続管理者/産業ケアマネジャー

    寺岡 純子

    経歴詳細を見る

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