介護福祉士とは?資格概要から取得するメリットまで徹底解説!
介護職員としてのキャリアアップを考えた時に、最初に浮かぶ資格が介護福祉士ではないでしょうか。昭和62年に制定されてから、2021年9月末時点で全国に181万3,281人の登録者がいます。取得することで、働く職員にとっては資格手当などの収入増加が期待できるほか、事業者にとっては介護福祉士が一定以上の割合でいることで加算取得が期待できるなどのメリットがあります。ここでは介護福祉士の定義や仕事内容、取得する方法などをご紹介します。
介護福祉士とは?
介護福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法によって定められた国家資格であり、介護に関わる一定の知識・技能の習得を証明する唯一の国家資格です。法律上の定義は以下の通りです。
「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(かくたん吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるものを含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業(なりわい)とする者をいう。」
言い換えると、「専門的な知識や技術を保有し、何かしらの障害を持った方に対して本人の心身の状況に応じた介護や一部の医療行為、本人とその家族などにアドバイスする仕事をする人」と言えます。
似たような言葉に「ヘルパー」「介護職」「介護士」などがありますが、いずれも介護の仕事に携わる人を指す通称であり、正式な資格の名前ではありません。以前はホームヘルパー1~3級の資格がありましたが、2013年以降は初任者研修などに変わりました。
介護福祉士は「名称独占」の資格であり、介護福祉士の資格を取得している人だけが「介護福祉士」と名乗れます。ちなみに、正看護師や准看護師、介護支援専門員などは「業務独占」と呼ばれます。それぞれ看護業務やケアプラン作成業務のように、その資格を保有していないとできない業務があります。つまり、介護福祉士でなければできない業務は法律上ありません。では、介護福祉士の仕事内容は何なのでしょうか。
介護福祉士の仕事内容は?
介護福祉士の主な仕事に身体介護と生活援助があります。身体介護とは、排泄や食事、入浴、着替えなど利用者の身体に直接触れることが多い業務です。一方の生活援助とは、調理や洗濯、掃除など利用者の身体に直接触れることが少ない業務を指します。どちらも大切な業務ですが、介護福祉士でなくてもおこなえます。日本介護福祉士会では、介護福祉士の仕事内容を以下の3つとしています。
高度な技術を有する介護の実践者としての役割
介護技術の指導者としての役割
介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割
「日本介護福祉士会 介護福祉士の役割」https://www.jaccw.or.jp/about/fukushishi/yakuwari
- 高度な技術を有する介護の実践者としての役割
- 介護技術の指導者としての役割
- 介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割
1.高度な技術を有する介護の実践者としての役割
非資格保有者よりも高度な技術や豊富な知識を所有し、高いレベルで実践する役割です。では、「高いレベル」とはどういうことでしょうか。極端な言い方ですが、「速ければよい」「利用者に言うことをきかせる」ことではありません。2007年以前の社会福祉士及び介護福祉士法では、介護福祉士の業務内容は「入浴、排泄、食事その他の介護等を行う」と定められていました。「三大介護」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。この言葉が、2007年に「心身の状況に応じた介護を行う」に見直されました。つまり、単に入浴や排泄、食事など各場面の介護を行うだけでなく、「利用者本人の有する能力に応じての生活全般を支援する」ことが明文化されたのです。つまり、「本人の希望」や「本人の有する能力」を把握・分析したうえで「本人らしい生活」の実現に繋がる支援の実践が求められていると言えます。今後、介護サービスの利用者数の増加やそのニーズ・価値観の多様化が見込まれる中で、介護福祉士に期待される役割は決して小さくありません。
2. 介護技術の指導者としての役割
1人のご利用者様の支援を考えても、24時間365日続く利用者の生活を1人の介護福祉士で支えることは困難です。他職種も含めたチームケアの重要性は既に意識し、取り組まれている方も多いでしょう。介護福祉士は、介護職のチーム内メンバーに対して必要な技術や知識を指導することも期待されています。他業界からの転職者の増加やアクティブシニア・外国人の活用など職員も多様化しています。チームとして利用者支援に向かうために指導者としての役割は益々重要になるでしょう。
3.介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割
利用者の支援は、1日だけ、1回だけの支援で終わるものではありません。継続してチームで課題解決という支援に向かうためには、チームをマネジメントする存在が不可欠です。利用者の尊厳と自立を支援するためには、介護計画(ケアプラン)などに沿った介護サービスの提供が前提です。介護計画を自身が理解すると同時にチーム内の理解を促し、実践に向かわせることが必要です。また、提供したサービスの質の把握や継続的な改善などもマネジメントが必要な要素と言えます。介護福祉士は、自身が実践するだけでなく介護職チームの中で介護過程を展開させるマネジメントの役割が期待されています。
参考:「社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて(概要)」(平成29年10月)」
介護福祉士になるには?
日本国籍を持つ人が介護福祉士を取得するためには、主に3つのルートがあります。参考までにEPA(経済連携協定)ルートと併せて以下にまとめました。
最も割合が多い実務経験ルートは、介護職としての実務経験3年に加えて、実務者研修の修了が必要です。450時間の受講が必要ですが、初任者研修は介護職員基礎研修などを修了している場合は、一部免除されます。こちらは実務経験の3年間の間に修了される場合が多いようです。また、実務者研修の受講費の一部または全額を補助する事業者も増えています。これから取得を目指す方は、確認してみましょう。
養成施設ルートの「養成施設」とは、「厚生労働大臣が指定する介護福祉士養成施設等」を指し、専門学校などを指します。その隣の福祉系高校ルートも同じですが、卒業(見込み含む)すれば実務経験は不要です。いずれのルートでも、共通していることは最終的に国家試験を受験し、合格する必要があるということです。
実務経験ルートの場合、働きながら資格取得を目指す方が少なくありません。仕事と試験勉強を両立させることは簡単ではありません。最近では、無料もしくは安価に受験対策できるサービスも増えています。ご自身に合った方法を探してみましょう。
介護福祉士を目指すためのキャリアパスがある
2013年4月1日の介護保険法施行規則改正にて、介護の資格制度が見直されました。それまであいまいだった介護のキャリアパスが確立されました。無資格で就業を開始した職員を想定したキャリアパスのイメージは、以下の図の通りです。
「初任者研修」は、多くの方が最初に修了する入門的な研修です。その後、応用編の「実務者研修」を経て、実務経験3年以上の要件を満たした段階で「介護福祉士」取得を目指します。ちなみに、実務者研修を受講するための要件はありませんので、初任者研修を受講せずに実務者研修を受講する方もいます。ただ、研修修了までの期間や必要な費用が異なりますので、ご自身の状況などに合わせて検討しましょう。
また、2015年12月から「認定介護福祉士」が創設ました。こちらは国家資格ではなく民間資格です。介護福祉士取得後の実務経験5年以上かつ指定された研修や課題修了などの要件をクリアすることで取得できる、介護福祉士の上位資格です。2022年時点で全国に100名とまだまだ知名度が低い資格ですが、それだけ稀少性が高い資格とも言えます。その他にも、介護支援専門員(ケアマネジャー)や社会福祉士、相談員へキャリアを展開することもできます。自身のキャリアを考えるうえで参考にして下さい。
介護福祉士の資格を取得するメリットは?
養成機関や福祉系高校を卒業した方を除くと、実務経験3年や実務者研修修了など取得までのハードルが低いとは言えません。では、それらのハードルを越えて介護福祉士を取得するメリットにはどのようなものがあるのでしょう。メリットは主に以下の3点が挙げられます。
- 就職や転職時に知識やスキルを持っていることが証明できる
- 年収や時給など待遇面がよくなる可能性がある
- 仕事の幅が広がりキャリアアップにも繋げられる
就職や転職時に知識やスキルを持っていることが証明できる
介護福祉士の資格を持っていると就職や転職時に「一定の知識や技術がある」ことを証明できます。理由としては主に以下の2つです。
・介護に関わる一定の知識・技能の習得を証明する唯一の国家資格である
・初任者研修、実務者研修を通して450時間の研修と3年以上の実務研修が必須である(※)
※ 実務経験ルートの場合です。養成機関や福祉系高校の場合は異なります。
就職や転職時には、書類や面接など限られた場面を通して自身の経験や知識・技術を伝える必要があります。どれだけ伝わるかは、合否や入職後の待遇面にも少なからず影響するでしょう。介護福祉士を保持していることは、大きなアピールポイントと言えます。
年収や時給など待遇面がよくなる可能性がある
介護福祉士を保有することで待遇面にどのような影響があるのでしょうか。2021年度(令和3年度)の厚生労働省の調査による保有資格ごとの平均給与額は以下のようになっています。
多くの事業者が介護福祉士の資格手当を設けています。そのため、初任者研修や無資格の職員と比較して給与が高くなっています。もちろん、非常勤の場合の場合も手当や時給に上乗せがある事業者があります。給与を上げたいと考えているのであれば、介護福祉士の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
仕事の幅が広がりキャリアアップにも繋げられる
前述の通り、介護福祉士は介護チームのリーダーとしての活躍も期待されています。そのため、サービス提供責任者や生活相談員、ユニットリーダー、主任などの役職を任されることもあります。これらは、事業者に配置しなければいけない役職であり、中には介護福祉士の資格が必要な役職もあります。もしくは、キャリアアップの項目でも書いたように、認定介護福祉士やケアマネジャーを目指す人もいます。介護福祉士はキャリアのゴールではなく、次のキャリアへ進む通過点として考えられるでしょう。
また、役職に就かなかったとしても、介護福祉士の保有者の割合によって事業者は加算取得できることもあり、どの事業者でも必要とされています。仕事の幅を広げ、自身のキャリアアップを考えている方にとって介護福祉士は大きなメリットのある資格と言えるでしょう。
介護福祉士国家試験の受験概要
この記事を書いている2023年2月は、2022年度の筆記試験と実技試験の合間です。介護福祉士の国家試験は毎年1月の最後の日曜日に実施され、3月初旬に実技試験、3月末に合格発表されます。2022年度の開催概要は以下の通りです。
・筆記試験
マークシート方式(125問)
受験日:2023年1月29日(日)
午前の部:10:00~11:50
午後の部:13:45~15:35
・実技試験
受験日:2023年3月5日(日)
※ 福祉系高校ルート、EPAルートの一部の方が対象
※ 実務者研修修了者は基本的に免除
・合格発表
2023年3月24日(金)
気になる合格率を見てみましょう。
受験資格に実務者研修受講が加わった2016年度を境に、受験者数は減り、合格率は向上しています。近年では合格率はおおむね70%前後と高い水準で推移しています。参考までに、社会福祉士は31.1%(2021年度)、介護支援専門員は19.0%(2022年度)と介護福祉士の合格率の高さが見て取れます。実務者研修で学んだことをしっかりと抑えられていれば、比較的合格しやすい資格と言えるでしょう。
まとめ
以上のように、介護福祉士には多くの役割が期待され、その期待に沿うように待遇面でも優遇されることが多い資格です。また、さらなるキャリアアップに繋がる資格とも言えます。一方で、実務経験3年以上や実務者研修修了など受講までのハードルが高いものの、合格率が比較的高く、取得しやすい資格のひとつとも言えます。
近年では、実務者研修や受験対策、受験費用の補助制度を設ける事業者も増えています。これらを活用することで、経済的な負担を軽減させながら取得を目指すことができるでしょう。
様々なメリットや支援制度がある介護福祉士ですが、取得することはゴールではありません。資格取得を通して学んだ技術や知識を、利用者の支援に活かすことはもちろん、その先のキャリアアップにも大いに役立つ資格です。皆さまが介護の仕事を通して、より充実した日々を送れるように応援しています。
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ツクイグループ
株式会社ツクイスタッフ