安全対策体制加算とは?単位数や算定要件について解説

介護報酬・加算掲載日: 2025.01.21(更新日: 2025.01.21)
介護士が胸に手を当てている様子

介護施設では、利用者の安全を確保するための取り組みが非常に重要です。その中でも「安全対策体制加算」は、介護施設が利用者の安全に配慮し、必要な体制を整えている事業所に適用される加算です。高齢化が進む現代において、利用者の安心と信頼を得ることがより一層求められており、施設で積極的に安全対策に取り組むことが必須となっています。

本記事では、安全対策体制加算の概要から、対象サービスや単位数、算定要件、さらに安全管理体制未実施減算との違いについてわかりやすく解説します。

安全対策体制加算とは?

安全対策体制加算は、介護施設が、利用者の安全を守るための体制を整えた場合に適用される加算で、令和3年度の介護報酬改定で新設されました。

介護の現場では、転倒や誤飲、異食、さらには災害時の緊急対応など、さまざまなリスクが日常的に存在します。そこで、事業所がこれらのリスクに対して安全対策体制を整備していることを評価するため、安全対策体制加算が設けられました。

安全対策体制加算の背景

安全対策体制加算が重要視される背景には、介護現場における事故リスクの高さが挙げられます。高齢者の多くは、認知症や身体機能の低下により、転倒や誤飲などの事故に巻き込まれるリスクが高まっています。また、施設内での火災や自然災害への備えも欠かせません。こうしたリスクを最小限に抑えるためには、施設側の継続的な取り組みと組織的な安全管理体制が必要不可欠です。

安全対策体制加算は、介護保険施設におけるこのような取り組みを評価し、施設が安全対策に注力することを求めています。これにより、利用者がより安心して介護サービスを利用できる環境を整備し、組織的に安全を高めることを目指しています。

安全対策体制加算の対象サービス種別と単位数

安全対策体制加算の対象となるサービス種別と、それに対応する単位数は以下の通りです。

対象サービス種別

  • 介護老人福祉施設(特養)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院

施設サービスであっても、特定施設入居者生活介護やグループホームは加算の対象外となっています。

単位数

安全対策体制加算:20単位(入所時に1回のみ算定可)

この安全対策体制加算は算定要件を満たしている状態で、新たに入所者を受け入れる場合に入所に日に限り算定できます。したがって、算定要件を満たした後に新規で受け入れた入所者のみ算定ができ、加算の取得前に入所した入所者は対象外となるので注意が必要です。そのため、算定要件を満たしている施設は、速やかに届出をするようにしましょう。

安全対策体制加算がもたらす効果

安全対策体制加算による収益の増加は決して大きいものではありませんが、安全対策体制加算は、利用者の安全確保とサービスの質の向上を両立するための重要な制度です。その意義を理解し、適切な運用を行うことで、介護現場全体のレベルアップが期待されます。

また、安全性が高い施設は地域での評判が高まり、結果的に入所者の増加や収益の改善につながる可能性があります。さらに、施設で働く職員にとっても安心して働く環境が整うことで、満足度やモチベーションの向上、事故発生に付随する業務負荷の低減、定着率の改善といった効果が期待できます。

このようなことから、安全対策体制加算は、入所者、事業者、職員の三者にとって多くのメリットをもたらすと考えられます。

安全対策体制加算の算定要件

安全対策体制加算を算定するためには、介護施設や事業所が定められた要件を満たす必要があります。これらの要件は、利用者の安全確保を徹底するために設けられており、介護サービスの質を向上させるための重要な基準となっています。

  • 事故発生防止のための指針の整備
    介護施設における事故発生防止のための指針を整備しなければなりません。事故防止のための指針には、事故防止のための基本姿勢や、事故防止委員会、職員の研修、事故発生時の対応や報告についてなどを具体的に記載します。
  • 外部の研修を受けた担当者を配置
    安全対策体制加算の算定については、安全対策にかかる外部研修を受けた安全対策担当者の配置が必要です。外部研修で得た知識を自施設での事故防止対策委員会等で共有を行うことで、施設における安全管理体制をより一層高めることを目的としています。
    なお、外部研修は介護現場における事故の内容や発生防止の取り組み、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含む必要があり、公益社団法人全国老人福祉施設協議会や公益社団法人全国老人保健施設協会、一般社団法人日本慢性期医療協会など介護施設の関係団体が開催する研修が想定されています。介護施設の関係団体が開催する研修を受けることは、加算の取得のためだけでなく、施設における安全対策を具体的に学ぶことで、事故防止対策を強化することにもつながると考えられます。
  • 事故防止のための委員会を設置
    安全対策体制加算を算定するためには、室内に安全対策部門を設置する必要があります。安全対策部門は、施設の安全対策の中核として事故防止を推進する役割を担います。例えば、事故防止委員会や安全管理委員会などを設置し、定期的に委員会を開催します。介護事故やヒヤリ・ハット等の発生件数や発生事例を集約し、介護事故防止策に対する検討など行います。
  • 組織的な安全対策体制の整備
    安全対策体制加算を算定するためには、組織的に安全対策を実施する体制を整える必要があります。そのためには、定期的に職員向けに事故防止を目的とした研修を実施したり、事故やヒヤリ・ハットの事例を収集し、そこから傾向を分析することで、事故の発生を未然に防ぐための対策を講じます。

さらに、安全性を高めるためには、日常業務を見直し、より効率的でリスクの少ない方法を取り入れることも重要です。これらを、適切に職員に周知できるような体制を整備している必要があります。

安全対策体制加算の算定要件を満たすことの重要性

安全対策体制加算の要件を満たすことは、入所者が安心してサービスを利用できる環境が整備されるだけでなく、施設の安全の管理体制を強化することにつながります。また、これらの取り組みを適切に実施していることで、施設は加算を算定できるだけでなく、利用者や家族の信頼を得ることができ、地域社会の中でも評価されるポイントとなるでしょう。

安全管理体制未実施減算との違い

安全対策体制加算に似たような言葉として、「安全管理体制未実施減算」というものがあります。こちらも介護施設における安全管理に関わる制度ですが、その目的や適用される条件は安全対策再生加算と大きく異なります。

安全管理体制未実施減算は、施設の運営基準に定められた安全対策を実施していない場合に適用される、いわば減算の制度です。これは、利用者の安全を損なうような状況を改善させるためのペナルティとして設けられており、以下措置が講じられていない場合に適用されます。

  1. 事故防止指針の整備
    事故が発生した場合の対応、事故が発生した場合に、市町村や入所者の家族への報告の方法等が記載された事故発生の防止のための指針を整備すること。
  2. 事故の分析と従業者への周知の徹底
    事故が発生した場合又はそれに至る危険性がある事態が生じた場合に、当該事実が報告され、その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制を整備すること。
  3. 定期的な委員会・研修の開催
    事故発生の防止のための委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)及び従業者に対する研修を定期的に行うこと。
  4. 担当者の設置
    上記の措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

安全対策体制加算と安全管理体制未実施減算は、それぞれ異なる目的を持っていますが、どちらも利用者の安全を確保するという点では共通の目標を持っています。介護施設は安全管理体制未実施減算を回避するため、また加算を受けて介護報酬を増加させるために、積極的に安全管理のための体制を整える必要があります。

よくある質問

安全対策体制加算の届出はどのタイミングで行えばよいですか?

安全対策体制加算を算定するには、自治体へ事前に届出を行う必要があります。届出が受理された場合、通常は毎月15日以前の届出で翌月から適用され、16日以降の届出は翌々月から適用となります。届出時には、それぞれの自治体で必要な書類を添付する必要がありますので、早めに準備を進めることをおすすめします。

どの程度の頻度で安全対策の取り組みを見直す必要がありますか?

安全対策は継続的な改善が求められます。例えば、事故防止対策委員会は定期的に開催し、施設内で発生した事故やヒヤリ・ハット事例をもとに、改善策を検討する必要があります。また、職員研修は年2回以上行い、新規採用時には必ず事故発生防止の研修を実施し、最新の知識や対応方法を共有することが重要です。

加算を受けている期間中に要件を一時的に満たせなくなった場合、どうなりますか?

要件を満たせなくなった場合には、速やかに自治体に報告する必要があります。この間の介護報酬の減額に影響が出る場合もあるため、迅速な対応が重要です。

事故が発生した場合、加算は停止されますか?

事故の発生そのものは加算の停止理由にはなりません。ただし、事故後に適切な記録や報告、再発防止策を講じない場合は、基準違反と見なされる可能性があります。安全対策体制加算の適用を継続するには、事故後の対応が迅速かつ適切であることが求められます。

まとめ

安全対策体制加算は、介護施設や事業所が利用者の安全を守るための体制を整備することを目的とした加算です。加算取得の難易度は決して高いものではありません。この加算を適切に活用することで、事業所は介護報酬の増加だけでなく、利用者やその家族の信頼を得ることができます。一方で、基準を満たさない場合には安全管理体制未実施減算が適用される可能性があります。

ただし、実際には加算は取得したものの、日々の業務の煩雑さなどにより職員の研修、安全管理体制の整備に課題を抱えている事業所は少なくありません。ここで重要になるのが、専門的な支援を活用することです。

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  • 合同会社カサージュ代表/主任介護支援専門員/
    BCAO認定事業継続管理者/産業ケアマネジャー

    寺岡 純子

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