【2024年度改定対応】通所介護(デイサービス)の入浴介助加算とは?単位数や算定要件など詳しく解説
通所介護において、利用者が安全で快適に入浴できることは、在宅生活の質の向上に重要な役割を果たします。
入浴の支援には「入浴介助加算」が設けられており、介助中の観察や適切な対応が求められています。2024年の介護報酬改定により、この入浴介助加算の算定要件が一部見直されました。
本コラムでは、改定による変更点をわかりやすく解説し、新たに要件に加えられた入浴介助に関する研修についても具体的な例を紹介します。
入浴介助加算とは?
入浴介助加算とは、通所介護、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護、通所リハビリテーションの通所系サービスにおいて、入浴中の利用者の観察を含めた介助を実施する場合に算定できる加算のことです。この加算は、利用者が安全に入浴できるようにするための設備や人員が整っていることを評価するもので、「入浴介助加算(Ⅰ)」と「入浴介助加算(Ⅱ)」の2種類があります。
入浴は高齢者にとって多くのメリットがあります。
入浴により皮膚を清潔に保つことで汚れや汗を洗い流し、感染予防や皮膚トラブルの防止に役立ちます。また、身体の清潔を保つだけでなくリラックス効果や血行促進などの健康を増進する効果もあります。そして、入浴介助を通じて利用者の可能な範囲で自立した入浴動作を行うことは自立を高め、生活の質を向上させることにつながります。
入浴介助加算はこうした効果に繋がることを評価し、適切な介助を提供するための重要な加算であると言えます。
2024年度の介護報酬改定と影響
2024年度の介護報酬改定では、入浴介護加算(Ⅰ)の算定要件に「入浴介助に関する研修等を行うこと」が新たに追加されました。介護職員が定期的に研修を受けることにより、介護技術の向上が期待され、職員と利用者の両方にメリットがあります。
また、入浴介助加算(Ⅱ)では、算定要件が緩和され、「医師等による利用者宅浴室の環境評価・助言」について、人材の有効活用を図る観点から、医師等に代わり介護職員が訪問し、医師等の指示の下、ICT機器を活用して状況把握を行い、医師等が評価・助言する場合も算定できるようになりました。
医師や理学療法士が浴室の環境を評価することは、自宅で自立した入浴を実施するために、どのような介助が必要となるかの個別計画を立てる際に重要です。ICTを活用して遠隔地からでも専門的な評価を受けられることは、生産性の向上につながります。
この他にも、現行のQ&Aや留意事項通知で示されている内容が告示に追加され、より明確な指針が提供されるようになりました。これにより事業所が加算を適切に算定するための基準が明確化されることになりました。
入浴介助加算の算定要件
通所介護等における入浴介助加算の単位数と算定要件は以下の通りです。
入浴介助加算(Ⅰ)
【単位数】
40単位/日
【算定要件】
引用:厚生労働省老健局「令和六年度介護報酬改定における改定事項について)
- 入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して行われる入浴介助であること。
- 入浴介助に関わる職員に対し、入浴介助に関する研修等を行うこと。
入浴介助加算(Ⅱ):55単位/日
【単位数】
55単位/日
【算定要件】
引用:厚生労働省老健局「令和六年度介護報酬改定における改定事項について)
- 入浴介助加算(Ⅰ)の要件に加えて、
医師理学療法士、作業療法士、介護福祉士若しくは、介護支援専門員または利用者の動作及び浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員、地域包括支援センターの職員、その他住宅改修に関する専門的知識及び経験を有する医師等が、利用者の居宅を訪問し、浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を評価し、かつ当該訪問において、当該客の浴室が当該利用者、地震または家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した医師等が介護支援専門員・福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備に掛かる助言を行うこと。ただし、医師等による利用者の居宅への訪問が困難な場合には、医師等の指示の下、介護職員が利用者の訪問居宅を訪問し、情報通信機器等を活用して把握した浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を踏まえ、医師等が当該評価・助言を行っても差し支えないものとする。- 当該事業所の機能訓練指導員が共同して医師等と連携の下で利用者の身体状況訪問により把握した居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること。ただし、個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画に記載することを持って、個別の入浴計画の作成に変えることができる。
- 上記の入浴計画に基づき、個浴(個別の入浴をいう)又は利用者の居宅の状況に近い環境(利用者の居宅の浴槽の手すりの位置や使用する浴槽の深さ、および高さ等に合わせて。当該事業所の浴室に福祉用具等を設置することにより。利用者の居宅の浴室の状況を再現しているものをいう)で入浴介助を行うこと。
入浴介助加算(Ⅱ)は、利用者や家族の同意のうえで、自立支援を目的として利用者自身又は家族等の介護により居宅等で入浴を行えるようになることを目指します。また、利用者の居宅環境や身体状況に基づいた個別の入浴計画を作成することで、より適切なケアが提供されます。
さらに、医師や理学療法士などの専門職が居宅を訪問し、浴室環境や利用者の動作を評価して適切な助言を行うことで、より具体的な環境整備やケアのポイントが明らかになり、居宅等での入浴を可能にできる可能性が上がるでしょう。
一方で、居宅訪問や個別計画の作成など、通常の入浴介助に比べて業務負担が増える可能性があります。また、ケアプランの更新やサービス担当者会議の開催など、ケアマネジャーとの調整が必要となり、スムーズな算定が難しい場合もあります。また、居宅の環境整備や個別計画の実施に伴い、利用者やその家族に対する負担が増えることもあります。そのため、実際に入浴介助加算(Ⅱ)を算定するハードルが高いことが課題となっています。
入浴介助加算の研修の重要性
入浴介助加算の要件として義務付けられた研修は、介護職員が入浴介助に関する知識と技術を向上させるためのものです。実際にどのような研修をすればいいのかと悩むこともあるかもしれません。
以下に、具体的な研修内容について紹介していきます。
研修内容の具体例
基礎的な入浴介護技術について
- 脱衣・着衣の介助
利用者が安全かつ快適に衣服を着脱出来るようにするための技術を学びます。利用者の身体状況に応じた適切なサポート方法や衣服の選び方、着脱の際の声かけ手順、利用者のプライバシー保護等、スムーズに衣服を着脱出来るようにするための工夫を実技を通して学びます。 - 洗髪・洗身の介助について
利用者の頭髪や身体を洗う際の適切な方法と留意点について学びます。例えば、シャンプーやボディソープの選び方、染髪や洗身の手順、利用者の皮膚状態に応じたケア方法などはもちろん、利用者がリラックスできるような声かけや、安全確保についても学ぶとよいでしょう。 - 移乗・移動の技術について
車椅子やシャワーチェアなどから浴槽への移乗を安全に行うための技術や、脱衣室と浴室間の移動に関する介助技術を高めましょう。利用者の身体状況に応じた適切な移乗方法や移動時の安全確保、介助者の身体負担を軽減するための技術などを学びます。また、移乗・移動の際の声かけや、利用者の不安を軽減するためのコミュニケーション方法についても理解を深めましょう。
リスク管理と安全対策
- 転倒防止
入浴中や浴室内での転倒を防止するため、浴室内の滑り止めマットの設置や手すりの設置、利用者の動作に応じた適切な介助方法などを学びましょう。また、転倒リスクの高い利用者に対する個別の対策や、転倒予防のためのエクササイズなどについても研修項目に入れるとよいでしょう。 - 入浴事故防止
入浴中の溺水や火傷などの事故を防ぐため、浴槽の温度管理や水位の調整、利用者の体調確認、入浴中の見守り方法などを学びましょう。また、事故が発生した場合の迅速な対応方法や、事故防止のための事前準備についても検討すると良いでしょう。 - 緊急時の対応
入浴中に緊急事態が発生した場合の対応や手順について確認をします。具体的には、利用者が意識を失った場合や、転倒した場合の対応方法、緊急連絡先の確認、救急車の呼び方などのルール等を確認します。また、緊急時に備えたシュミュレーション訓練や、緊急対応マニュアルの整備についても実施しておきしょう。
利用者の個別ニーズに対応する技術
- 個別プランの作成
利用者ひとりひとりの身体状況や希望に応じた入浴介助計画の立案の仕方について学びを深めます。利用者の身体状況や生活環境、入浴に対する希望や不安を把握し、それに基づいた個別の入浴計画が作成できるようにします。また、計画作成後の見直しや評価方法についても検討すると良いでしょう。 - コミュニケーション技術
補聴器を外した利用者とのコミュニケーションの取り方や視力障害のある利用者への声かけの仕方など、利用者との信頼関係を築き、安心して入浴してもらうためのコミュニケーション技術について学びます。利用者の聴覚・視覚の状態に応じた適切な声かけ方法や非言語的コミュニケーションの活用方法、利用者の気持ちに寄り添った対応方法など、実技を通して技術を高めましょう。
最新の介護技術と機器の活用
- ICT機器の活用
遠隔地からの評価や助言を受けるためのICT機器の使用方法について学びます。タブレットやスマートフォンを活用した遠隔評価の方法や、オンラインで専門職からの助言を受けるための手順、ICT機器の設定や操作方法などを確認しておきましょう。 - 新しい介助機器の導入
入浴介助に役立つリフトやスライディングボードなどの入浴補助具の知識と使用方法、利用者の身体状況に応じた適切な機器の選び方など、最新の情報を得るようにします。また、新しい機器を導入する際の注意点や利用者への説明方法についても理解を深めましょう。
研修の形式とメリット
研修は内部研修と外部研修の両方で実施することが推奨されます。内部研修では事業所内で定期的に研修を行い、職員同士で技術を向上する機会を設けます。個別のケースについて検討を行うなどの研修も効果的です。事業所の実情や利用者のニーズに合わせてカスタマイズを行い、具体的な事例や日常の業務に即した内容を取り入れることで、職員が実際の現場で直面する課題に対処しやすくなるでしょう。
また、研修を通じて職員同士のコミュニケーションが活発になると、チームワークを向上させ、職場全体の連携が強化される効果も得られます。
外部研修では、専門家や経験豊富な講師から直接指導を受けることができます。これにより最新の介護技術や知識を習得することができ、現場での実践力が向上します。例えば、新しい介助機器の使い方や最新のリスク管理方法など、内部研修では得られない情報を学ぶことができます。また、外部研修では外部の専門家が客観的な視点から指導を行います。これにより、内部では気づきにくい問題点や改善点を発見することができます。外部の視点を取り入れることで、サービスの質を向上させるための新しいアイディアやアプローチを得ることができます。
このように、外部研修を活用することで専門的な知識と最新の技術を習得し、客観的な視点を取り入れることができます。また、職員のモチベーション向上や継続的なスキルアップ、法令遵守と信頼性の向上など多くのメリットがあります。
継続的な研修の重要性
入浴介助は利用者の安全と快適さを確保するために非常に重要であり、継続的な研修を通じて介護職員の技術と知識を常に最新の状態に保つことが求められます。介護職員が継続的に入浴介助に関する研修を受けることで、利用者に対して質の高いサービスを提供し、安心して入浴してもらうことが可能になります。
つまり、入浴介助の研修を実施することで個々の介護職員がスキルアップし、利用者の生活の質を向上させることにつながるのです。
介護業界に特化した研修を10年以上実施しているツクイスタッフでは、入浴介助に関する研修も実施しております。介護職員が必要とする基礎的な技術から、最新の介護技術まで幅広くカバーしており、脱衣着衣介助、洗髪・洗身の介助、移乗・移動の介助など日常的な介護技術をしっかり学ぶことができます。
また、事業所のニーズに応じたオリジナルの研修を実施することも可能です。ツクイスタッフの研修を受けることで、介護職員としてのスキルを高め、利用者に安全で快適な入力を提供することができるようになります。
詳しい研修内容や申し込み方法については、ツクイスタッフの公式サイトをご覧ください。
ツクイスタッフの入浴介助に関する研修プログラム例はこちら>>
まとめ
通所介護(デイサービス)における入浴介助加算は、利用者が安全で快適に入浴できるようにするための重要な加算です。2024年度の介護報酬改定により、入浴介助加算の算定要件が一部見直され、特に入浴介助に関する研修の実施が新たに求められるようになりました。これにより、介護職員の技術向上が期待され、利用者に対してより質の高いケアが提供されることが期待されます。
入浴介助加算には「入浴介助加算(Ⅰ)」と「入浴介助加算(Ⅱ)」の2種類があり、それぞれに異なる算定要件があります。特に入浴介助加算(Ⅱ)では、医師や理学療法士が利用者の居宅を訪問し、浴室環境や利用者の動作を評価することが求められますが、生産性向上の観点からICT機器を活用して遠隔地からでも専門的な評価を受けられるようになり、今後算定率が上がると期待されます。