認知症専門ケア加算とは?種類や単位数、算定要件について詳しく解説!

介護報酬・加算掲載日: 2023.11.28(更新日: 2023.11.28)
シニア女性と男性介護職が向き合っている様子

わが国では認知症高齢者が急増しており、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症の状態になると推計されています。

要介護認定を受けている認知症を有する方へ介護サービスを提供することにより、認知症の症状の緩和や進行の予防が期待されるところです。しかし、認知症の介護は専門的な知識と技術を必要とされ、介護職員に認知症への対応力を向上させることは大きな課題となっています。

これらを踏まえ、介護サービス事業所における質の高い認知症ケアの提供を評価するものとして「認知症専門ケア加算」があります。

このコラムでは、「認知症専門ケア加算」の種類や単位数、算定要件などについて解説します。ぜひ、認知症介護を実施する事業所の加算取得の検討にお役立てください。

認知症専門ケア加算とは

認知症専門ケア加算は、認知症の介護について一定の経験を持ち、認知症ケアに関する専門的な研修を修了した職員がサービス提供を実施することを評価する加算です。この加算は、認知症ケアを適切に実施することで、認知症の悪化を予防することを目的としています。

令和3年度の介護報酬改定では、加算の対象となる介護サービスの種類の拡大がされ、居住系サービスに加え新たに「訪問介護」、「訪問入浴介護」、「夜間対応型訪問介護」、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」でも加算の取得ができるようになりました。

介護サービス事業者は認知症専門ケア加算の制度を理解したうえで、適切に活用し、介護サービスの質の向上を図っていくことが求められます。

認知症専門ケア加算を算定するメリット

認知症専門ケア加算を算定するメリットは、次のようなことが挙げられます。

  • 職員のスキルアップにつながる
    加算を算定するためには、認知症ケアに関する研修を修了した職員が他の職員に対して認知症ケアに関する技術を伝達し、事業所全体で認知症ケアの質の向上を図らなければならないため、事業所に勤務する職員のスキルアップが期待できます。
  • 利用者の幅が広がる
    認知症の高齢者に対して適切なケアを提供できる事業所となることで、利用者の幅が広がり、他の事業所との差別化が図れます。また、サービスの質の高い事業所ではケアマネジャーからの紹介も受けやすくなります。
  • 収益が増加する
    認知症専門ケア加算を算定することで、介護報酬が増え事業所の収益が増加します。

認知症専門ケア加算を取得できるサービス種別

認知症専門ケア加算を算定できる介護サービスは以下の通りです。

  • 訪問介護
  • (介護予防)訪問入浴介護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • (介護予防)短期入所生活介護
  • (介護予防)短期入所療養介護
  • (介護予防・地域密着型)特定施設入居者生活介護
  • (地域密着型)介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • (介護予防)認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

これらのサービス事業所が、認知症専門ケア加算にかかる算定要件を満たせば加算の算定が可能になります。

認知症専門ケア加算の種類と単位数

認知症ケア加算の種類と単位数はサービス種別ごとに異なり、以下のようになります。

介護サービス種別認知症専門ケア加算(Ⅰ)認知症専門ケア加算(Ⅱ)
訪問介護3単位/日4単位/日
訪問入浴介護3単位/日4単位/日
夜間対応型訪問介護【夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)を算定する場合】
3単位/日
【夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)を算定する場合】
90単位/月
【夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)を算定する場合】
4単位/日
【夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)を算定する場合】
120単位/月
定期巡回随時対応型訪問介護看護90単位/月120単位/月
(介護予防)短期入所生活介護3単位/日4単位/日
(介護予防)短期入所療養介護3単位/日4単位/日
(地域密着型)特定施設入居者生活介護3単位/日4単位/日
(地域密着型)介護老人福祉施設3単位/日4単位/日
(地域密着型)介護老人保健施設3単位/日4単位/日
(介護予防)介護療養型医療施設3単位/日4単位/日
(介護予防)介護医療院3単位/日4単位/日
(介護予防)認知症対応型共同生活介護3単位/日4単位/日
地域密着型特定施設入居者生活介護3単位/日4単位/日
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護3単位/日4単位/日

これらの単位数は、各サービス種別における算定要件を満たした場合に、事前に届け出を行うことで適応が可能であり、届け出を行わないと算定することができません。また、加算の算定に必要な体制が変更になり加算を取り下げる場合にも、あらためて届け出が必要になります。

認知症専門ケア加算の算定要件

認知症専門ケア加算の算定要件は、以下の通りです。

認知症専門ケア加算(Ⅰ)

  • 認知症の利用者(日常生活自立度Ⅲ以上)が利用者全体の半数以上である
  • 「認知症介護実践リーダー研修」及び「認知症看護にかかる適切な研修」を受講済みの職員が、認知症の利用者(日常生活自立度Ⅲ以上)が20名未満の場合は1人以上、20名以上の場合は1人に加え、対象者が19人を超えて10又はその端数を増すごとに1を加えた数以上を配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施している
  • 当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導にかかる会議を定期的に開催している

日常生活自立度の確認は、医師の判断結果または主治医意見書を用いて、居宅サービス計画あるいは各サービスの計画に記載されることとなっています。ただし、経時的な変化等により複数の判定結果がみられる場合には、最新の判定結果を用います。

医師による判定がない場合は、要介護認定等の実施において、認定調査員が記入した認定調査票の「認知症高齢者の日常生活自立度」の記載を用いるものとされています。いずれの場合も、サービス担当者会議等を通じて、介護支援専門員より情報の共有をしてもらい把握しなければなりません。

また、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の割合の算出は、届け出日が属する月の前3か月間の利用者数について行い、その利用者数は実利用者数または利用延べ人員数のいずれかを用いて計算し、要件を満たせば加算の算定が可能です。この割合は、届け出月以降も毎月計算し継続して半数以上の割合を維持する必要がありますので、ぎりぎりの割合の場合は、利用者の増減によって半数を下回っていないか特に注意していく必要があります。

もし、月途中で認知症高齢者の日常生活自立度の区分の変更があった場合は、月末時点での認知症高齢者の日常生活自立度区分を用いるようにします。

認知症専門ケア加算(Ⅱ)

  • 認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件を満たす
  • 認知症介護の指導にかかる専門的な研修を修了している従業者を1名以上配置し、認知症ケアの指導などを実施している
  • 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施または実施を予定している

認知症ケアに関する専門的研修

加算の算定要件の一つに「認知症ケアに関する専門的研修等」の受講の修了があります。令和3年度の介護報酬改定では対象となる研修の見直しがされ、「認知症看護にかかる適切な研修」が対象となる研修に加わりました。これにより、「認知症ケアに関する専門的研修等」は以下の研修等が該当します。

  • 認知症介護実践リーダー研修
  • 日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修
  • 日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程
  • 日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」(認定証が発行されているものに限る)

認知症介護の指導に係る専門的な研修

認知症介護の指導にかかる専門的な研修は、「認知症介護指導者養成研修」および「認知症看護に係る適切な研修」を指しています。

認知症介護指導者養成研修とは、認知症介護基礎研修や認知症介護実践者研修を自ら企画立案し、講義・演習・実習を担当できる能力を身につけるとともに、地域の介護保険施設や事業者等における介護サービスの質の改善に向けて自ら指導できる人材を養成することを目的とした研修です。認知症介護に関する専門的な知識・技術や研修プログラムの作成方法・教育技術を習得するだけでなく、職場や施設等での実習も含まれています。

なお、受講要件は以下の通りとなっています。

  1. 以下のいずれかの資格を有する者
    • (ア)医師、保健師、助産師、看護師、准看護師
    • (イ)理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
    • (ウ)社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士
    • (エ)上記(ア)~(ウ)に準ずる者
  2. 以下のいずれかに該当するものであって、相当の介護実務経験を有する者
    • 介護保険施設・事業所等に従事している者(過去において介護保険施設・事業者等に従事していた者も含む)
    • 福祉系大学や養成学校等で指導的立場にある者
    • 民間企業で認知症介護の教育に携わる者
  3. 認知症介護実践リーダー研修を修了した者
  4. 認知症介護基礎研修又は認知症介護実践者研修の企画・立案に参画し、または講師として従事することが予定されている者
  5. 地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者

認知症専門ケア加算についてよくある質問

認知症高齢者の日常生活自立度区分とは何ですか?

認知症高齢者の日常生活自立度とは、認知症の程度を踏まえ、高齢者が自立した日常生活を送ることができる程度をランクIからMで示したものです。判断基準は以下のように定められています。

  • ランクⅠ:何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。
  • ランクⅡ:日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。   
  • ランクⅢ:日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。
  • ランクⅣ:日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護必要とする。
  • ランクM:著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護における、認知症高齢者の日常生活区分の計算方法は?

認知症高齢者の日常生活自立度の計算における利用者数は、実利用者数または利用延べ人員数のいずれかを用いて計算しますが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、実利用者数で計算をします。

認知症介護実践リーダー研修は誰でも受けられますか?

認知症介護実践リーダーは、認知症介護の指導や、チームケアの推進を担える人材を育てる研修です。そのため、認知症介護実践リーダー研修は誰でも受けられるわけではなく、受講要件はかなり厳しいものになっています。

研修の実施団体や都道府県等により研修の受講要件に違いはありますが、一般的には以下の受験資格を満たしている必要があります。

  • 介護保険、施設・事業者等に従事する介護職員等で、介護保険施設・事業者等において介護業務に5年以上従事した経験を有する
  • 認知症介護実践者研修(旧基礎課程)を修了し、1年以上経過している
  • ケアチームのリーダー、またはリーダーになることが予定されている

そのため、受講の申込時に事業所や法人からチームリーダーの立場にあるか、または今後そのような立場になることを証明してもらわなければなりません。

まとめ

認知症の高齢者に対する質の高いサービス提供を実施できる体制を評価するものとして、「認知症専門ケア加算」と「認知症加算」について詳しく解説しました。また、サービスごとの加算の算定要件や単位数についてもご紹介しました。

認知症の高齢者の増加が見込まれる中で、質の高い認知症ケアを実践できることは、事業所にとって大きな強みになります。認知症高齢者に対する適切なケアの提供のために、これらの加算の取得を進めていきましょう。

  • 合同会社カサージュ代表/主任介護支援専門員/
    BCAO認定事業継続管理者/産業ケアマネジャー

    寺岡 純子

    経歴詳細を見る

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