介護職員が知っておくべき「ホスピタリティ」って何?

スキルアップ掲載日: 2023.09.13(更新日: 2023.09.21)
おもてなしの心をもって手を重ねている様子

「ホスピタリティ」は元々ホテルなどのサービス業でよく使われる言葉でしたが、最近では介護業界においても求められるようになってきました。 本記事では、ホスピタリティの意味や介護現場で重要視される理由、ホスピタリティのポイント等をご紹介いたします。

介護におけるホスピタリティとは

私が介護施設に就職した1年目に、ホテルでの「サービスマナー」の研修に参加したことがありました。もちろん、接客方法や言葉遣いなども学びましたが、その根本にあるものとして教えられたのが、「ホテルマンとしてのホスピタリティ精神」でした。

ホスピタリティの語源は、ラテン語のHospics。客人等の保護という意味です。そこから派生した単語にHospital(病院)、Hospice(ホスピス)があります。

「ホスピタリティ」は対価を求めるものではなく、「おもてなし」を相手に差し上げたいという想いに重きをおいています。重視されるのは、人柄や価値観、個性、感性などです。目先の報酬を求めての行動ではありません。

Hospitalityとは、「思いやり」「やさしさ」「歓待」と訳されます。「歓待」とは「心のこもったおもてなし」という意味です。

介護現場でホスピタリティが重要な理由

なぜ、介護施設でもホスピタリティが重要視されているのでしょうか?その理由は大きく分けて、以下の3つになります。

  1. 利用者に安心感を与えることができる
    介護現場では、利用者やその家族は、しばしば不安や心配を抱えています。しかし、ホスピタリティを持ち温かく優しい態度で接することで、安心感を与えることができます。
  2. 利用者と信頼関係を築くことができる
    ホスピタリティマナーは信頼関係を築くためにも重要です。あたたかくもてなされているということを感じていただくことで、利用者の心を開くことができます。こうして信頼関係を構築することは、正確な情報の提供や的確な判断を行うために不可欠です。
  3. 施設の評価に繋がる
    ホスピタリティマナーは組織の評判を高めることができます。介護施設は、地域社会や患者からの信頼を得ることが重要です。ホスピタリティマナーを持つスタッフは、組織のイメージを良くし、口コミや評判の向上につながります。優れたホスピタリティマナーを持つことで、利用者や組織全体の満足度を向上させることができます。

介護現場におけるホスピタリティの要素

介護における「ホスピタリティ」とは、利用者やその家族に対して心地よい環境やサービスを提供することを指します。ホスピタリティの原則は、おもてなしの心や思いやりを持ちながら、利用者の個別のニーズや希望に応えることです。

具体的には、以下のような要素が含まれます。

  1. 温かい対応
    利用者やその家族を歓迎し、親切で優しい態度で接することが重要です。笑顔や挨拶、声かけなどでコミュニケーションを図り、利用者が安心感を持てるような雰囲気を作り出すことが求められます。
  2. 個別のケア
    利用者の個々のニーズや要望に合わせたケアを提供することが大切です。利用者の好みや習慣を尊重し、特別な配慮やサポートを行うことで、利用者が自分らしさを保ちながら快適に過ごせるようにします。
  3. 環境づくり
    居心地の良い環境を整えることも、ホスピタリティの一環です。清潔で安全な施設や部屋の提供、快適な温度や照明、心地よい音楽や香りなどに配慮することで、利用者がくつろげる空間を提供します。
  4. コミュニケーション
    利用者やその家族とのコミュニケーションを大切にすることも重要です。利用者の意見や要望を確認し、相互理解を深めるために積極的に対話を行い、信頼関係を築くことが求められます。

ホスピタリティの精神を持った介護は、利用者の満足度や信頼度を高めるだけでなく、その人の心身の健康や生活の質を向上させることにつながります。

介護の現場では、高齢者が日常生活を送る上で、心地よく安心して過ごせる環境を提供することが重要です。温かいおもてなしの心を持って利用者やその家族に対して接するようにしましょう。

ホスピタリティの3つのステップ

「ホスピタリティのある介護職員」とは、利用者が望んでいることを想像して、その方法を一生懸命考えて、利用者が望むサービスを、真心を込めて提供できる職員です。                      

ホスピタリティの重要なステップとして、以下の3つが挙げられます。

  1. 目配り
    ホスピタリティの入り口です。相手を注意深く観察することで、相手のメッセージを受け取ることが出来ます。相手のメッセージに気づく為には「観察力」が重要です。利用者やその家族の状況やニーズを注意深く観察し、必要なケアやサポートを提供します。例えば、利用者が歩行に不安を抱えている場合には、周囲の安全に留意し、手助けをすることができます。
  2. 心配り
    ホスピタリティの中心です。相手のメッセージから、「何をしたら相手の為になるか」を考えます。相手の様子から、相手の気持ちを想像する為には「想像力」が必要です。利用者やその家族の感情や状況に寄り添い、思いやりを持って接します。利用者が苦しんでいる場合には、その辛さを理解し、適切な支援を提供することが重要です。
  3. 気配り
    ホスピタリティの仕上げです。相手が喜ぶ為には、どのような方法でサービスを提供すれば良いかを考えます。自分の動作や言葉に気を遣う「表現力」は決め手です。利用者やその家族とのコミュニケーションにおいて、積極的な関心と理解を示します。相手の話に耳を傾け、共感し、尊重することで、利用者が大切に思われていると感じることができます。

これらのステップを通じて、介護の現場でホスピタリティを実践することができます。利用者やその家族が快適で安心して過ごせるような環境を提供するために、継続的な取り組みが求められます。

実はこの3つのステップ、皆さんが日常生活の中ですでに実践していることです。

例えば、満員電車に、脚の不自由な高齢者が乗車して来たとします。

まず①目配り、「あ、杖をついた高齢者が乗ってきたぞ」と気付きます。そして②心配り、「満員だから譲ってあげた方がいいかな」と状況を理解します。そして最後に③気配り、「どうぞこちらにお座り下さい」と声を掛け席を譲ります。

相手が望んでいることを想像して、その方法を考えて、サービスを提供する。難しい事ではありません。私たちがすでに実践していることなのです。                

ホスピタリティマナーと日本人の「礼儀作法」

利用者や家族への、目に見えない「ホスピタリティ」(温かさ、思いやり、親切さ、おもてなしの心)を、目に見える行動である「マナー」(挨拶・身だしなみ・言葉づかい・表情・態度)を通じて相手に伝える、その表現方法を「ホスピタリティマナー」と言います。

一方、日本には古くから「礼儀作法」という言葉があります。日本人はなぜ、礼儀作法を重んじるのでしょうか。それには以下のような理由が考えられます。

  1. 社会的な調和と協力
    礼儀作法は、社会全体の調和と協力を促進するためのルールとして機能します。相手に対して敬意や思いやりを示すことで、円滑な人間関係を築き、互いに助け合う社会を形成するのに役立ちます。
  2. 共同体意識と他者への配慮
    日本の文化では、個人よりも集団や共同体の利益を重視する考え方が根付いています。礼儀作法は、他者への配慮や思いやりを表す手段として機能し、集団の一員として適切な行動を取ることを助けます。
  3. 美意識と細部への注意
    日本の美意識は、細部にまで注意を払うことを重視しています。礼儀作法も例外ではありません。正しい姿勢や挨拶、言葉遣いなど、細部の注意が美しさや品位を表現する手段とされています。

以上の要素が組み合わさり、日本人が礼儀作法を重んじる理由となっています。

礼儀とは「心」、作法とは「形」のことです。礼儀作法とは「相手を大切に思う心を形にして表す」という意味で、まさに「ホスピタリティマナー」です。

介護における礼儀作法は、相手への尊重と配慮の表れであり、信頼関係を築くために重要です。利用者への敬意と思いやりは、礼儀作法の基本です。彼らの意見や要望を真剣に受け止め、可能な限りの援助やサポートを提供することが大切です。

第一印象を大切に!

「マナー」の研修というと、「言葉遣い」「態度」「挨拶」・・・などが思い浮かぶと思います。もちろんそれも学ばなければならない大切なことなのですが、実はそれ以前に「第一印象」がまず大切です。

人間は外見ではなく、中身が肝心ですよね。でも例えば、皆さんが利用者の立場で初めてデイサービスを利用することになった時、送迎に来た職員があくびをしていたり、怒った顔をしていたら、どのように感じますか?このデイサービスを快く利用できなくなる方も多いのではないでしょうか。。

しかしこの介護職員さん、実は国家資格「介護福祉士」を取得している、ベテランの職員かもしれません。しかし、第一印象で「だらしない」とか「怖い」と思われてしまったら損です。

介護現場における第一印象は、利用者やその家族に対して安心感や信頼感を与える重要な要素です。介護現場で良い第一印象を与えるためのポイントは、主に以下の3つです。

  1. 清潔さと身だしなみ
    衣服や髪型の整備、手指の清潔さなども気を配りましょう。
  2. 姿勢と態度
    正しい姿勢を保ち、利用者やその家族に対して敬意を払いましょう。
  3. コミュニケーション能力
    分かりやすい言葉遣いや声のトーン、明るい表情を保つことで、利用者やその家族と円滑なコミュニケーションを図ることができます。

これらのポイントを意識して行動することで、初めての接触から利用者やその家族に対して好印象を与えることができます。そして、信頼関係を築き、良質な介護サービスを提供することができます。

「優しそうな職員さん」「明るくて楽しそうな職員さん」という第一印象を持って頂ければ、その後のコミュニケーションも円滑に進みます。まずは、第一印象を大切にしましょう。

まとめ「利用者の心に寄り添う」

「何をして欲してのか」は 利用者の心の中にしかありません。

だからこそしっかり向きあい、 耳を傾け、利用者の言葉の奥にある本当の気持ちを考え、 知ることが大切です。これが「利用者の心に寄り添う」ということです。

日々、介護現場では様々な職種が連携を取りながら、「利用者は喜んでくださるだろうか?」「笑顔になっていただけるだろうか?」と考えて、試行錯誤を重ねています。

そして、利用者の満足する生活の実現のために、どうしたらいいかを追求しながら、一つひとつ実現につなげていっています。 まさにこれが「ホスピタリティ」です。

ホスピタリティについて正しく学ぶには、研修の実施が効果的です。ホスピタリティの気持ちを全社員に持ってもらうことで、利用者へのケアの質や満足度の向上、ひいては施設の評価や口コミにも繋がります。

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参考文献

  • 「介護職の為の接遇マナー」蜂谷英津子(介護労働安定センター)
  • 「介護現場における苦情・ハラスメント対応の実務」松宮良典(日本加除出版)
  • 「介護記録の書き方」馬淵敦士(中央法規)
  • 「新しい障害理解ハンドブック」中村 剛(学術研究出版)
  • 「新しい認知症ケア介護編」三好春樹・東田勉(講談社)
  • 「介護福祉士養成実務者研修テキスト」(長寿社会開発センター) 
  • 「介護職員初任者研修テキスト第2版」太田貞司・上原千寿子・白井孝子(中央法規) 「生活援助従事者研修59時間テキスト」堀田力・是枝祥子(中央法規)
  • けあんちゅPro代表(介護人材育成の社会貢献活動)/
    グループホーム管理者/介護支援専門員/
    ツクイスタッフパートナー講師

    森 幸夫

    経歴詳細を見る

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