排泄介助のポイントとは?種類や手順などをわかりやすく解説

スキルアップ掲載日: 2024.01.18(更新日: 2024.03.19)
介護施設のトイレ

自分がトイレに入っているところを、他人に覗かれたら恥ずかしいですよね。これは「羞恥心」といいます。だから必ず扉を閉めてカギを掛けます。

では、介護職員が施設でベッドに寝ている高齢者のオムツ交換をするとき、その高齢者ご本人は恥ずかしく感じていないのでしょうか?例え認知症の高齢者でも、「羞恥心」は必ずあります。障がいなどで「恥ずかしい」と言葉で表現できない方もいます。

私たち介護職員が、高齢者が一番「恥ずかしい」と思うプライバシーの領域に立ち入らせていただき介助をする、これが排泄介助です。つまり、人間の尊厳に関わるケアなのです。

排泄の研修というと、オムツ交換などの「技術」などに目が行きがちですが、「他人に排泄介助をしてもらうなんて、きっと本人が一番辛いんだろうな」という思いを、私たちが持っていることが一番大切です。

この記事で、排泄介助の技術はもちろん、排泄介助とは何か、その心構えを学んでいきましょう。

排泄介助の種類

排せつ介助方法の選び方

高齢者のADL(日常生活動作)の状況等により、適した排泄方法は異なります。紙パンツやテープ式紙オムツなどを使い始めるタイミングは、身体の状態や目的に適したものを選ぶことが大切です。適切に行えば、自立排泄を促進し、ご本人の快適な排泄を保つことができます。

高齢者の状態別の排泄介助方法は、概ね次のように分けられます。

高齢者の状態排泄介助の方法
一人で歩けるトイレ(一部介助)紙パンツ等   ほとんどの方がトイレ介助可能です
介助があれば歩けるトイレ(一部介助)
介助があれば立てるトイレ(介助)
介助があれば座れるトイレ(介助)、ポータブルトイレ
寝て過ごす時間が長いトイレ(介助)、ポータブルトイレ
寝がえりがうてないベッド上でオムツ交換テープ式紙おむつ
下肢の拘縮が強いベッド上でオムツ交換

この表からも分かる通り、「座る」力が残っている限り、トイレの便座に座って自分で排泄することが可能です。

高齢者の場合、自立から一部介助へ、一部介助から全介助へと障がいの程度は進行しがちです。ケアの目標として、少しでも自立へ近づく方向に支援しましょう。

今はベッドで寝たままの状態でオムツ交換をしていても、車イスに移乗ができれば、トイレへ行き排泄ができます。高齢者と介護者が共同し、自立的な排泄に向けて挑戦していく前向きな姿勢と努力が必要です。

介助方法の種類

トイレ介助トイレで自分で排泄することは、人間が人間らしく生活するための基本です。座ることで、排便もしやすくなります。また、「トイレに行く」「紙パンツを脱ぎ履きする」「便座に座る」これらの行動は運動機能の回復につながります。トイレに行くこと、それ自体がリハビリになります。
介助が必要な場合は、移動、立位、紙パンツの上げ下げ、清拭などの介助をします。できることはご自分でやっていただきます。
ポータブルトイレ簡易式の持ち運びができるトイレをポータブルトイレと言い、歩くことは難しいものの、「介助があれば自力で起き上がれる」「トイレに座ることができる」「排泄のタイミングを自身で判断出来る」「短い距離の移動が可能」な方に向いています。また自立の方でも、夜間の排泄が多いなどの傾向があれば、ベッドの近くにポータブルトイレを設置しておくと便利です。
福祉用具として介護保険を利用して購入できます。ウォシュレット付きの電動ポータブルトイレなどもあります。
尿器(尿瓶)尿器は足腰が弱くてトイレまで間に合わない方や、安静が必要な方、介助があれば姿勢を変えられる方には便利です。男性用と女性用があります。
可能であれば、自分で尿器を陰部に当て排泄することで、自尊心を保つことができます。尿器は、おむつと比べて尿が肌に接触する範囲が狭いので、皮膚トラブルを軽減できるメリットがありますが、溜まった尿をトイレに処理しにいく必要があり、汚れるので手入れが必要です。
ベッドの柵に引っ掛けておいて、尿意を感じたら手を伸ばし陰部に当てて使用します。また尿の色は健康状態を知る大切な要素になります。
差し込み式便器ベッド上で寝たまま排便をする便器。足腰が弱くてトイレまで間に合わない方や、日中から夜間まで寝て過ごす時間が多い方で、尿意や便意を自分で伝えられる方が使用します。
仰臥位で腰を上げて、お尻の下に差し込んで使用します。介助をする場合は、トイレットペーパーやタオルを敷くことでベッドを汚しにくくなります。また便の色や形は、健康状態を知る大切な要素になります。
テープ式紙おむつ日中から夜間まで寝て過ごす時間が多い方で、尿意や便意を自分で伝えられない方や、意思疎通ができない方は、テープ式紙オムツがおすすめです。
介護者がオムツ交換を行う場合、前開きのテープタイプが交換しやすいと言われています。寝たままでの排尿や排便で一番多い悩みは、尿や便の横もれ、背中もれです。どのオムツも漏れ防止機能のギャザーやポリマーを使うなどの工夫があります。消臭機能付きであれば、少量の排尿があっても使う方の不快感を減らせます。

排泄介助の方法と手順

トイレを利用した介助の手順(紙パンツの場合)

  1. トイレへの誘導
    安全に移動できるよう、障害物がないか確認する。歩行の状態に合わせて手引き歩行や、車椅子を使用するなどの介助をする。歩く場合は高齢者のペースに合わせる。
  2. 衣服(ズボン、紙パンツ、オムツなど)の脱衣
    介護者がすべて介助するのではなく、本人ができることは本人に任せる。職員が介助する際には、高齢者に手すり(介助バー)を持ってもらい、つかまり立ちの姿勢で、衣服や下着(紙パンツ)をおろす。
  3. 便座に座るまでの移乗介助
    手すりがある場合は、高齢者の利き手(健側)で手すりを握ってもらい、便座に座ってもらう。高齢者の足が床にしっかりとついているか確認し、転倒に注意する。
    尿とりパッドが汚れていれば、座った姿勢でパンツからパッドを抜く。排便のときは、片手を股間部に当てながら外す。排便時は、便だけをトイレに流す。
    紙パンツを交換する場合は、脇を少しずつ破って外すこともできる。小さく丸め、廃棄処理テープがある場合は、後ろの処理テープのつまみを剥がして止める。ゴミ袋などに入れて処理する。
  4. 排泄中は外で待機
    座位が安全している高齢者であれば、排泄が終わったら呼んでほしい(かけ声やナースコールなどを使用)ことを伝え、介護者はトイレの外で待つ。その際にはトイレの鍵はかけず、ドアを少しだけ開けておき、何かあればすぐに対応できるようにする。
    座位が安定しない方などの場合には、横に付き添い見守りをする。横に付き添う際には、下腹部にタオルをかけるなどをしてプライバシーに配慮する。
  5. 排泄終了の確認(声かけ)
    排泄が終わったという合図(声かけやナースコールなど)を待つ。合図がないようであれば、焦らせないように配慮しながら、外から声かけを行い状況の確認をする。
    特に排便の際、瞬間的に力を入れることで、血圧が上昇したり、排便後に血圧低下を起こし、失神することもあるため、注意する。
  6. 清拭
    本人が自力で清拭ができないときには、介護者が素早くケアをする。もう一度、つかまり立ちの姿勢に戻し、おしりや陰部を清拭する。清拭は前から後ろに向けて行う。必要であれば陰部の洗浄をする。
    紙パンツを交換する場合は、前後を確認して、片足ずつ通す。麻痺がある方は、麻痺側の足を先に通す。両足を通したら、パンツの中に尿とりパッドを入れる。パッドの位置はパッドが紙パンツの立体ギャザーの内側に収まるように調整する。
    高齢者が立てる状態の場合には、手すりなどにつかまって立ち上がってもらい、介護職員が背中側にまわって紙パンツをウエストまで引き上げる。
    最後にズボンをあげて、衣類を整える。排泄物や皮膚の状態をさりげなく観察して健康状態を把握する。
  7. 衣類の着衣
    高齢者が自分で衣服を着ることができるのであれば、自分でしてもらう。介助する場合には、手すりを握って立ってもらいズボンや下着を上げる。姿勢が不安定なときには、介護者は高齢者の腰などを腕や足を使い支える。
  8. 排泄後の声かけ
    「失敗なく排泄が上手にできました」「(排泄物の状態から)健康そうですね」など、高齢者が自信を持てるような言葉かけをする。

ここまでの一連の流れはスムーズに行うことが重要です。時間がかかるほど高齢者は羞恥心を感じ、尊厳を傷つけてしまう可能性があります。最初は慣れずに失敗するかもしれませんが、回数を重ねて素早くできるようコツをつかみましょう。

ポータブルトイレを利用した介助の手順

  1. ポータブルトイレのセッティング
    ポータブルトイレをベッドの側で安全な位置に置く。
  2. 声掛け・ベッドからの移動介助
    介助が必要である高齢者であれば、介護者が体を支えて移乗の介助を行い、ポータブルトイレへ移動してもらう。
  3. 便座に座るまでの介助
    衣類や下着を脱衣する介助が必要な高齢者であれば、ベッドに取り付けた介助バーを利用してつかまり立ちの姿勢をとってもらう。高齢者がつかまり立ちで安定していることを確認してから、職員はパンツ等をおろす。
  4. 排泄中は離れて待機
  5. 排泄終了の確認(声かけ)
  6. 清拭
  7. 衣類の着衣
    高齢者に介助者の首に両腕を回してもらい、立っている間に下着とズボンを上げる。

尿器(尿瓶)を利用した介助の手順

  1. 準備と脱衣
    布団をたたんで足元に置き、ズボンと下着をひざ下程度までおろす。ベッドの汚れを防ぐため、お尻の下にタオルなどを敷いておくとよい。
  2. 尿器を当てる
    男性は仰向けか横向きに寝た状態で、女性は仰向けの状態になってもらい尿器を陰部に当てる。可能であれば、尿器は自分で持ってもらう。
  3. 排泄
    下腹部にタオルをかけてプライバシーに配慮し、排泄中は近くで待機する。
  4. 清拭(せいしき)と着衣
    排尿が終わったら綺麗に拭き取り、ズボンと下着を上げる。
  5. 処理
    尿をトイレに流して尿器を洗浄する。このとき、尿の色などを観察して健康状態をチェックする。

差し込み式便器を利用した介助の手順

  1. 準備と脱衣
    布団をたたんで足元に置き、ズボンと下着をひざ下程度までおろす。ベッドの汚れを防ぐため、お尻の下にタオルなどを敷いておく。はねを防止するために、あらかじめ汚物受け部にティッシュペーパーを敷いておく。
  2. 便器をあてる
    仰臥位の状態を側臥位にする。便器を側面からお尻に当てる。そのまま便器を当てた状態で、仰臥位にし、両膝を上げる。尿が飛び散るのを防ぐため、ティッシュを尿道口部分に当てる。
  3. 排泄
    下腹部にタオルをかけてプライバシーに配慮し、排泄中は近くで待機する。
  4. 清拭と着衣
    使用後は腰上げを行ってもらい、上にかぶせたティッシュを汚物受けに入れ、便器を後方に外す。陰部を綺麗に拭き取り、ズボンと下着を上げる。
  5. 処理
    便をトイレに流して便器を洗浄する。このとき、便の色などを観察して健康状態をチェックする。

テープ式紙オムツを利用した介助の手順(ベッド上での交換)

  1. 必要な物品をベッドの足元に用意する
    ・オムツ・尿取りパッド・バケツ・バスタオル
    ・使い捨てグローブ・新聞紙・ビニール袋
    ・清拭(温タオル)・トイレットペーパー
    陰洗ボトル(湯温は人肌より少々熱めの38度程度)
  2. オムツの準備
    尿とりパッドを立体ギャザーの内側に収まるように入れる。
  3. ベッドの高さを調節する(腰痛予防のため)
  4. ベッドサイドレールを外す
    ベッドサイドレールは立てかけて置くと誤って倒した際大きな音がするため、ベッド足元の位置か、ベッド下に横にして置く。
  5. ゴム手袋を装着
    洗浄に入る直前に、高齢者の目に触れないところで手袋を装着する。
  6. 脱衣
    声掛けし、膝を立て、腰を上げてもらいズボンを下ろす。高齢者が自分でできるところは、声を掛けて依頼する(腰を上げてくださいなど)。
  7. 腹部に乾タオルを掛ける
    高齢者の羞恥心や、保温に配慮する。陰部が露出する時間はできる限り少なくする。
  8. 胸の前で腕を組んでもらう
    オムツ交換では、何度か体位変換をする。
  9. オムツを外す
    「交換しますね」と声かけをしながら、外す。
  10. 陰部洗浄と清拭
    高齢者の両膝を立て、横向きにしてから、陰洗ボトルと清拭用タオルを使い、陰部を洗浄・清拭する。汚れが残っていると細菌が尿路に入って、尿路感染症を引き起こしかねないため要注意。
    洗浄するときは、女性は細菌が尿道に入らないように前から後ろに向かってお湯を流し、しっかりと汚れを落とす。男性は、陰茎と陰嚢の間、陰茎と亀頭の間、陰嚢の裏側などに汚れが溜まりやすいのでしっかりと洗う。敏感な部位のため、痛みや熱さなどには充分注意。表情も見ながら、声かけを忘れず十分に配慮する。
    皮膚が弱い部位であるため、清拭(温タオル)で水気を拭き取る際は、こすらず軽く当てるように拭く。
  11. 陰部の健康チェック
    褥瘡ができていないか等、皮膚の状態の観察も忘れずに。また、塗り薬やクリーム等によって保湿が必要な場合は、洗浄・清拭後に塗布する。
  12. 汚れたオムツを外す
    洗浄が終わったら、パッドを取り、古いオムツを丸め込む。汚れが他の部分に付着しないように、ここで必ず汚れた手袋は外す。新しいオムツを古いオムツとおしりの下に半分ほど入れ込む。
  13. 新しいオムツを当てる
    高齢者の身体を反対向きにし、丸まった古いオムツを取り出して、新聞紙やビニールの上に置く。半分ほどおしりの下に入れておいた新しいオムツを引っ張り、形を整える。拭けなかったお尻の部分があれば、体位変換したこのタイミングで拭く。
    高齢者を仰向けにし、足を伸ばしてもらう。足の間を少し広げてもらい、オムツの前の部分を引っ張る。中のパッドがオムツからはみ出ていないか確認し、へその上まで持っていき、オムツをテープで留める。ウエスト部分や太もも部分がきつすぎないか、またはゆるすぎないかを高齢者に確認してもらう。ウエスト部分は指1本入る程度の余裕をもたせるのが理想。オムツのテープはしっかりとクロス止めをする。クロスで止めることで、身体へのフィット性が格段にアップする。                                         
  14. 排泄後の声掛け
    オムツ交換が終わったら、終了の声掛けをする。脱いだ衣類の更衣介助をし、衣類やシーツにシワができないように伸ばす。寝具をかけたり、室温を調節したりして、元の状態へ戻す。汚れたオムツはパッドと一緒にし、新聞紙やビニールに包んで捨てる。

排泄介助5つのポイント

指さしポイント

排泄介助は高齢者にとって、羞恥心を伴うデリケートなケアです。尊厳を傷つけない配慮が必要です。また、本人の機能を活用するために、手を出しすぎないようにし、自尊心を尊重しながら自立意欲を高める排泄介助を心がけましょう。

ここでは、排泄介助で注意すべき5つのポイントを解説します。

自尊心を傷つけない

排泄はプライベートな行為です。ほとんどの人は誰かの手を借りることに抵抗があり、精神的なストレスがかかりやすい場面です。

高齢者ご本人も、介助してもらう申し訳なさを感じるほか、恥ずかしいと感じる方も少なくありません。羞恥心や屈辱感、絶望感など複雑な感情を抱えていることを理解し、高齢者が不快な気持ちにならないように配慮した介助が必要です。

また、排泄介助は相手のペースに合わせて行いましょう。トイレまでの移動や排泄に時間がかかっても焦らず見守ります。プレッシャーや焦り、緊張から排泄しづらくならないように配慮しましょう。コミュニケーションや声かけによってリラックスしてもらえる雰囲気づくりが重要です。

もし、排泄に失敗してしまったとしても、慌てたり動じたりせず冷静に対応するように心がけましょう。失禁をしたときにネガティブなこと言われたり、嫌な表情を見せてしまうと、高齢者は「申し訳ない」という気持ちから飲食を控えたり、便意を我慢したりすることもあります。排泄を急かしたり失敗を責めたりせず、反対に上手くできたときは、一緒に喜ぶ姿勢が大切です。

プライバシーを確保する

排泄は極めてプライベートな領域なので配慮が必要です。高齢者は当然ながら恥ずかしさを感じます。高齢者の尊厳を守るために、オムツ交換の際は、カーテンなどをしっかり閉じて、他の人から見えない空間をつくることが大切です。

また、他の高齢者に聞こえる大きな声で排泄の状況を確認したり、トイレのドアを開けっぱなしにしたりすることは、プライバシーの侵害になります。更衣介助が必要な場合は、トイレから出る前に高齢者の着衣を整えることも意識しましょう。

ポータブルトイレを使用する場合も、カーテンなど仕切りを設けてプライバシーを保ちましょう。よりリラックスできるように、用を足している間はドアを閉めて外で待つなど配慮することも大切です。

排泄物の量や臭いについて口にしないように気をつけ、介助中は楽しい会話を心がけましょう。身体の異常を早期発見するために排泄物や皮膚の状態を観察することは大切ですが、高齢者に配慮してさりげなく観察するようにします。

排泄のリズムを把握する

尿意や便意を感じにくい方や認知症の方には、「排泄チェック表」などで、排泄しやすい時間帯を把握しておき、早めにトイレ誘導します。また、「そわそわする」など排泄のサインに気づいたら、さりげなく声をかけましょう。

人はそれぞれトイレのリズムをもっています。このリズムを把握することが排泄のキーポイントです。一日のスケジュールに「トイレに行く」項目を組み込み、繰り返すことでトイレのリズムが出来上がっていきます。失禁を防ぐ為にも、排泄のタイミングを知っておくことが重要です。その時間を見計らって早めにトイレに誘導出来ればスムーズな排泄が可能となるでしょう。ただしこの時も急かしたり、焦らせたりするような言動は禁物です。

また、高齢者は便秘になりがちです。食事や運動の工夫に加えて、「なるべく朝食後にトイレに行く習慣をつける」「便意を感じた時に我慢しない」ことも便秘予防に効果的といわれています。

こまめな水分補給を促す

自分でトイレに行けない方や、排泄で失敗したことがある方は、排泄介助を頼むことに申し訳なさを感じたり、同じ過ちを繰り返したくないという一心で、極力トイレに行かないで済むよう水分補給を拒むケースがあります。水分不足によって脱水症状や便秘につながるなど、さまざまなリスクがあるため、こまめに水分補給を促しましょう。水分不足による危険性や、水分補給の重要性を理解してもらうことが大切です。

また、排泄に失敗しても決して叱ったり、咎めたりせず、高齢者が気兼ねなく介助を頼める関係性や、安心して水分補給ができる環境づくりを心がけましょう。

トイレに行く(安易にオムツを使用しない)

失禁の回数が増えると、オムツの使用を考えるかもしれません。その方が処理に時間がかからないからです。しかし、まだ尿意や便意の意思表示が可能なのに、オムツに排泄を促すことは、高齢者の自尊心を傷つけてしまいます。

排泄には機能訓練としての役割があります。高齢者の持つ力を活用し、機能の維持や向上を図るために、本人ができることはなるべく自身で行っていただくようにしましょう。思わず手を出したくなる場合でも、本人のために我慢が必要です。高齢者の状態を見ながら、適宜声かけやサポートを行いましょう。安全に配慮し、万が一に備えてすぐに対応できる姿勢で見守ることが大切です。

トイレでの排泄が基本であることは言うまでもありませんが、ご本人に自信がない場合は、外出時や夜間など、特定の時間で尿取りパッドや紙パンツ、紙オムツ等を上手に使い分けるのも自立を進める方法のひとつです。

ただし、オムツの安易な使用は「高齢者の尊厳を傷つける場合がある」「尿意や便意を感じにくくなる」「皮膚がかぶれやすくなる」など心身への悪影響もあります。オムツは最終的な手段と考え、できるだけ尿器や便器、ポータブルトイレ等を活用しましょう。できることは自分でやってもらうことで、自立した排泄を目指しましょう。

まとめ

高齢者の排泄介助では、「羞恥心」という概念が重要です。羞恥心は個人が自分の私的な部分を他者に見られることによって感じる、心の苦しみや恥ずかしさを指します。

排泄介助はその羞恥心を刺激するケアであり、人間としての尊厳に関わるケアといえます。排泄介助を行う際には、まずは周囲の目を避けることが重要です。相手のプライバシーを確保し、個人の尊厳を守ることが求められます。

失禁するようになった高齢者の中には、「失禁を人に知られたくない」「オムツをするのはつらい」「自分で処理したい」と感じる方もいます。そうした高齢者の本音は、「介護の拒否」「オムツを外して隠す」「介護者に対する暴言」などの行動となって表われることがあります。

高齢者施設などの介護現場では、「排泄最優先の原則」をスローガンにケアが実践されています。それは、排泄は我慢が難しい生理現象であり、また排泄の失敗は、その方の生活意欲に大きなダメージを与えてしまうからです。      

私たち介護職員でも、将来自分が介護される側になったときのことを考えると、決して人任せでなく、できる限り自分の排泄は自力で済ませたいと思うのが自然でしょう。排泄は食事と同じで毎日の習慣です。決して怒ったり急かしたりするようなことはせず、本人の残存能力をしっかりと見極めたうえで、本当に必要な介助だけを提供するようにしましょう。                                                                 

三大介護といわれる「食事介助」「入浴介助」「排泄介助」。介護現場ではどれも大切な介護で、きちんと研修を受けて学ぶ必要がありますが、中でも「排泄介助」は技術だけではなく、「尊厳」「羞恥心」「プライバシー」「自尊心」「自立支援」など、対人援助職として大切にしなければいけないキーワードが全て含まれたケアです。

排泄介助は最も時間をかけて学ばなければいけない項目になりますので、講師を外部から招いたり、研修動画を活用したりして、事業所全職員のスキル・知識アップを目指しましょう。

ツクイスタッフでは、介護現場に特化した研修を「動画研修・講師派遣型研修・オンライン研修」の3つのスタイルで総合的に提供しています。排泄介助に関する研修も対応しておりますので、ぜひお問合せください。

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参考文献

  • 「新しい排泄介護の技術」上野文規・下山名月(中央法規)
  • 「看護の現場ですぐに役立つ排泄ケアのキホン」中澤真弥(秀和システム)
  • 「在宅介護マニュアル排泄の介助」坪内弘行(桐書房)
  • 「日中おむつゼロの排泄ケア」竹内孝仁(メディカ出版)
  • 「新しい認知症ケア介護編」三好春樹・東田勉(講談社)
  • 「安全・やさしい介護術」至誠ホーム(西東社)
  • 「介護福祉士養成実務者研修テキスト」(長寿社会開発センター)
  • 「介護職員初任者研修テキスト第2版」太田貞司・上原千寿子・白井孝子(中央法規)
  • 「生活援助従事者研修59時間テキスト」堀田力・是枝祥子(中央法規)
  • けあんちゅPro代表(介護人材育成の社会貢献活動)/
    グループホーム管理者/介護支援専門員/
    ツクイスタッフパートナー講師

    森 幸夫

    経歴詳細を見る

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