介護施設の研修テーマ|効果的なテーマ選びのコツ
介護現場では介護職員のスキルアップや、日頃の業務の振り返りを目的として、定期的に様々な内容の研修が実施されています。研修を開催する頻度は「1ヶ月に1回」「偶数月に1回」など、職場によってさまざまです。
しかし「受講して終わり」という形だけの研修になっていたり、毎回同じ内容になってしまったり、飽きてしまって研修への参加を断る職員がいたりと、なかなか上手くいかないことも多いのではないでしょうか。適切な対象者に、適切なタイミングで、適切なテーマの研修を実施しなければ、研修はその効果を発揮しません。
本記事では、研修の意義を再確認するとともに、研修のテーマの具体例や、進め方についてご説明します。また、介護職が楽しみながら参加できる研修を開催するコツや、研修効果を高める実践的な方法についても詳しく解説しています。
介護施設における研修の目的と重要性
介護研修の目的と重要性
研修は介護施設において欠かせない要素であり、職員の能力向上や施設全体の品質向上に直結します。適切な研修プログラムを導入し、職員の成長や施設の発展をサポートすることで、利用者の生活の質を向上させることができます。
介護現場で行われる研修の目的は、大きく以下の5つです。
介護職員のスキルアップ
介護施設の高齢者の心身状態や、介護業界の最新のケア技術などは常に変化します。 そのような変化に対応するためには、研修を実施して常に最新の知識や技術を身につけることが大切です。
介護技術の向上は、提供するサービスの質を高めるだけでなく、職場環境の改善にも好影響を与えます。また、現場に適したテーマの研修をすれば、職員のモチベーションやチームワークの向上にもつながります。
適切な介護技術を習得し、高品質なサービスを提供するために継続的な学習が必要です。
法令や規則の遵守
研修を通じて法令や倫理規定などを学び、遵守を徹底します。介護に関する知識や法的義務を理解し、倫理的な行動をとるための基盤を整えます。
安全管理の確保
職員が安全に業務を遂行できるよう、研修を通じて感染対策や事故防止などの知識を習得します。これは、高齢者の安心・安全を守るだけではなく、職員の健康管理のためにも重要です。
チームワークの強化
研修を通じて職員同士の連携や協力関係を築きます。チーム全体で同じテーマについて学ぶことで、チームの方向性を確認することができます。職員が一丸となって利用者のケアを支え、円滑な施設運営につながります。
利用者満足度の向上
質の高い介護サービスを提供するために、研修を通じて職員が利用者のニーズに応えるための能力を育成します。これにより利用者との信頼関係を築き、満足度を向上させることができます。
介護研修の開催スタイル
外部講師による研修
外部の専門家を招いて、特定のスキルに関する教育やトレーニングを行います。外部講師は組織外部から雇われる専門家であり、経験豊富な知識を提供します。
例えば、歯科医や内科医、薬剤師などの医療スタッフが病気や薬などの説明を行ったり、介護用品メーカーの担当者が介護施設で使用している車椅子やおむつ、介護用リフトなどの使用方法を説明することがあります。
オンラインでの研修
近年、新型コロナウイルスの影響を受けて、ウェブ会議ツールを使用して、複数の人がオンライン上で集まって勉強会を行う介護施設が増加傾向にあります。画面共有やチャットを活用して情報交換ができます。
オンラインでの勉強会は、時間や場所にとらわれずに実施できるため、効率的で便利です。「子育てや本業の都合で勉強会に参加できない」という短時間勤務のパート職員でも、自宅から気軽に勉強会に参加することが可能です。また、介護施設に出向くことが難しい遠方の外部講師とつながることができるため、受講できる講義の幅が広がります。
動画研修
パソコンやスマートフォンを使い、職員が個別に研修動画を視聴する研修サービスです。こちらも近年ニーズが高まっています。
職員が自分の都合に合わせて自由に研修を受講できることや、繰り返し閲覧できることが動画研修のメリットです。また、施設側は講師や職員のスケジュール調整を行う手間を省くことができますし、サービスの種類によっては、職員がどこまで研修を受講したかの進捗管理を行うことができます。
これらのアプローチを組み合わせて、効果的な研修プログラムを構築することが求められています。
介護施設の研修テーマの選定方法
研修テーマ選びのポイント
介護研修の中でも特に重要なのが、法定研修の実施です。法定研修とは、法令で規定された範囲内で行われる研修のことです。介護事業者であれば必ず実施しなければならず、従業員に対して研修の機会を設ける必要があります。未実施の場合は減算対象となる可能性があります。
一方、その他の研修は、事業所独自の研修計画に基づいて行われます。法定研修が最低限の要件をクリアするのに対し、その他の研修は特定のニーズや組織の方針に基づいて構築されます。法定研修だけでなく、その他さまざまな研修テーマも取り入れることで、より効果的に従業員のスキル向上を図ることができます。
いずれの場合も、介護施設での研修テーマを選定する際には、以下のポイントを考慮するとよいでしょう。
- 法令や規則の遵守
まずは法的要件や介護倫理規定などの遵守が必要です。研修テーマには、法令遵守や倫理的な行動に関する内容を含めることが重要です。 - 施設のニーズと課題
施設内で起きている課題や改善が必要とされている領域を把握し、それに関連するテーマを選定します。例えば、感染症対策や認知症ケアなどが該当します。 - 職員の要望やフィードバック
職員からの要望やフィードバックを受け入れることも重要です。職員が学びたいと思っている分野や、スキルアップを図りたいと考えている点を反映させましょう。 - 高齢者のニーズ
高齢者中心のケアを提供するために、高齢者の健康状態や生活背景、要望に即した研修内容を考えます。 - 最新情報やトレンド
介護の分野は常に進化していますので、最新の情報やトレンドに基づいた研修テーマも選定しましょう。新しい介護技術やアプローチを取り入れることで、サービスの質を向上させることができます。
以上のポイントを踏まえて、介護施設の研修テーマを選定することで、職員の成長や施設の発展につながる研修プログラムを実施することが可能です。
階層別の研修テーマ
介護研修は、職員の階層やキャリアに応じて3つに分けることができます。
まず、初めて介護の仕事に携わる人を対象とした「新人研修」。さらに、ある程度の経験を積んだ人材を対象に実施する「中堅研修」。そして基本事項を押さえて、さらに質の良い介護を行えるようになる、それを新人に教えられるようになる人材を育てるのが「リーダー研修」です。
それぞれの階層別に、お勧めの研修テーマをご紹介します。
① 新人研修向け研修テーマ | |
介護職員としての心構え | 介護職の職業倫理や心構え、施設の理念と方針、介護施設のルールや手順などについて、体系的に学びます。 |
基本的な介護技術 | 食事介助、移乗、排泄介助、車椅子介助、入浴介助などの身体介助や、ケアの提供方法のトレーニングのポイントについて、演習を交えながら学んでいきます。 |
接遇マナーとコミュニケーションスキル | 報連相の基本や敬語の使い方、身だしなみといった最低限のビジネスマナーと、高齢者との接し方を身につけます。 |
リスクマネジメント | 介護の現場にはさまざまな危険が潜んでいます。業務にはどのようなリスクが伴い、それにどう対応していくのか。リスクマネジメントの基礎を学びます。 |
チームワークや協力関係の構築に向けたトレーニング | |
ストレス管理やセルフケアの重要性についての指導 | |
② 中堅職員向け研修テーマ | |
チームリーダーシップの基礎と同僚のサポート方法の学習 | 中堅職員には、チームリーダーとしての役割や後輩の指導などが求められます。 |
高度な介護技術やスキルの習得と向上 | 後輩に教えるためには、正しい知識と技術を、まず自分が身に付けておく必要があります。 |
利用者の個別ニーズに応じたケアプランの作成と実行 | |
問題解決能力や決断力の向上 | |
ケア品質の向上と改善に向けたプロセスの理解 | |
高度なコミュニケーションスキル(利用者や家族との関係構築、他の職員との連携など) | |
③ リーダー職員向け研修テーマ | |
離職率低下に貢献する研修 | スタッフのモチベーションを向上させ、定着率アップに繋げます。 |
実践的なケーススタディ研修 | 現場で直面するさまざまな困難に対応する方法を学びます。 |
チームマネジメントスキルの習得とリーダーシップの発展 | |
スタッフの指導や育成、パフォーマンス管理の方法の学習 | |
問題解決能力の向上と、施設の運営上の課題への対処法の習得 | |
介護施設の方針や目標の理解と実現に向けた戦略的思考の促進 | |
法的規制や安全基準への準拠の重要性についての教育 |
リーダー人材の育成は施設内だけでは困難なため、積極的に外部研修を実施しましょう。また、より質の高い介護サービスを提供していくには、経営者と同じ目線でものごとを考えられるリーダー人材が必要不可欠で、ハイレベルなスキルが求められます。
基本的な研修テーマ
法定研修のテーマ
特養、デイサービス、訪問介護など事業所の種類ごとに、年間で必ず実施しなければならない法定研修が決まっています。各事業所ごとの必須研修項目に関しては、介護サービス情報公表総合サイトを参照してください。
ここでは、法定研修の主な10種類の項目についてご紹介します。
【法定研修項目】
研修名 | 内容 | |
1 | 認知症ケアに関する研修 | 認知症の利用者に対応するための知識を学ぶ認知症基礎研修。介護福祉士や看護師など資格を持たない従業員が対象となる。 |
2 | 利用者のプライバシー保護に関する研修 | 利用者の個人情報を適切に扱うため、情報を安全に管理する方法や、情報漏洩の防止に関する対策などについて学ぶ。 |
3 | 接遇に関する研修 | 介護現場特有の接遇マナーを学べる研修。言葉遣いや訪問時の対応など、基本的なビジネスマナーが習得できる。 |
4 | 倫理・法令遵守に関する研修 | 倫理や法令を遵守することの重要性を学ぶ。倫理・法令遵守を徹底するための能力や知識を向上させ、専門性を持った人材を育成する。 |
5 | 事故の発生、予防、再発防止に関する研修 | 転落や転倒などサービス提供時に起きやすい事故を未然に防ぐ方法を学ぶ。事故が発生した場合は再発を防止するための対策を講じ、周知を徹底する。 |
6 | 緊急時の対応に関する研修 | 災害や感染症など緊急事態が起きた際の役割分担や対策など、業務継続計画について学び、訓練を行う。訓練は非常災害対策と合わせて行っても良い。 |
7 | 感染症及び食中毒の発生の予防及びまん延の防止に関する研修 | 感染症と食中毒対策の基礎的知識や、衛生管理の方法などを学ぶ。実際に感染症などが起きた場合を想定し、訓練の実施も必要。 |
8 | 身体拘束の排除に関する研修 | 身体拘束となる行為や身体拘束による弊害、身体拘束をしない介護ケアについて学ぶ。 |
9 | 非常災害時の対応に関する研修 | 大雨による浸水や地震などの災害が起きた際の対応、避難情報の収集方法、災害リスクについて学ぶ研修。訓練の実施も必要。 |
10 | 介護予防及び要介護度進行予防に関する研修 | 要介護状態の悪化防止や、発生を遅らせるための知識と対策について学ぶ。具体的には介護予防の基本的な考え方や、効果的な取り組みについて学ぶ。 |
スキルアップのための研修テーマ
法定研修ではありませんが、介護施設で働く職員が必要とする基本的なスキルや知識を身に付けるために、必要な研修プログラムをご紹介します。
ここに紹介する研修は、新人職員や中堅職員の研修にも向いています。職員がこれらのテーマを理解し、実践的なスキルを身に付けることで、質の高い介護サービスを提供するための基盤を築くことができます。
コミュニケーションスキルの向上 | 介護の仕事では高齢者やご家族との信頼関係を築くために、安心感を与えるコミュニケーションと接遇マナーが欠かせません。 |
食事・入浴・排泄などの介護技術 | 勤務年数が長くなるにつれて介助の基本的な流れを忘れてしまい、間違った方法が身についてしまうこともあります。実演・実技を交えながら、初心に戻って介助の正しい手順を学び直すことが大切です。 |
感染症対策の基礎 | インフルエンザやノロウイルス、新型コロナウイルスなどの感染症は、職場に「持ち込まない・持ち出さない・広げない」ことが大切です。また、感染症にかかってしまった時の対応を知っておくことで、もしもの時も焦らずに対応できるでしょう。免疫力が低下している高齢者と接する介護職にとっては、非常に有益な知識です。 |
災害対策・災害訓練 | 地震や津波などの天災や火災は、いつ起こるか予測ができないものです。もしもの時に高齢者を安全に救助・避難できるよう、災害の対応マニュアルを確認したり、避難訓練を行ったりすることが大切です。また、非常食の種類や保管場所についても共有しておくようにしましょう。 |
介護保険制度 | 高齢者が介護サービスを利用するにあたり、介護保険制度は非常に重要です。介護現場で働く職員は、意外と介護保険制度の内容や、高齢者が介護サービスを利用するまでの流れを理解していない方が多いです。研修でこれらを学ぶ機会を作りましょう。 |
ケアプランの理解 | ケアプランは、高齢者の個別ニーズに合わせてカスタマイズされたケアや支援の計画であり、その正しい理解は質の高いサービス提供に直結します。介護施設の職員は、ケアプランを見る機会が少ないかもしれませんが、特に「短期目標」を意識してケアに当たることが大切です。ケアプランの理解は、個々の利用者に適切なケアを提供するための基盤となります。職員は高齢者の尊厳を尊重し、彼らのニーズや希望に対応するため、ケアプランを適切に実行することが求められます。 |
面白い研修テーマ10選
介護施設での面白く、興味深い研修テーマを提案いたします。これらの研修テーマは、介護施設での楽しく有意義な取り組みを通じて、職員のスキルや知識をさらに向上させることができます。利用者や職員が共に楽しみながら学び、交流を深めることで、より良いケアが提供される環境が築かれるでしょう。
アンガーマネジメント・ストレスケア | 介護職員がストレスや怒りを管理し、対処するためのスキルを提供することを目的としています。介護現場では、介護拒否のある利用者への対応や、認知症で1日に同じことを何度も言う利用者への対応により、ストレスが溜まりがちです。仕事で溜まった怒りの感情をコントロールするアンガ―マネジメントの方法や、自身のストレスケアについて学ぶ機会を作るようにしましょう。 ・ストレスと怒りの理解…ストレスや怒りの原因と影響について学ぶ。 ・アンガーマネジメントの技術…怒りをコントロールする技術や戦略を学ぶ。 ・コミュニケーションスキルの向上…良好な関係構築のためのスキルを磨く。 |
腰痛予防・ボディメカニクス | 介護施設で働く職員は、高齢者を抱える・持ち上げる・支えるといった動作が多く、腰痛になる介護職が多くいます。腰痛やその他の身体的な負担を予防し、安全に仕事を行うための姿勢や動作の改善を目指す「ボディメカニクス」を学びます。 ・腰痛の理解…腰痛の原因や、介護職員に及ぼす影響や注意すべきポイントを理解する。 ・ボディメカニクスの基本…正しい姿勢や体の使い方、動作の原則を学ぶ。 ・実践トレーニング…実際の移乗介助などをシミュレーションし、実践する。 |
介護食の作り方 | 高齢者の健康や栄養バランスを考慮した食事を提供するために役立ちます。 ・栄養学の基礎…主要栄養素や食品グループ、栄養バランスの考え方を学ぶ。 ・食事の調理技術…食材の選び方や調理方法、盛り付けの工夫など ・食事の提供と配膳…利用者の個々の好みや制限事項に配慮した食事 ・栄養管理と記録…食事記録の記入方法など、栄養管理の重要性を理解する ・飲み込む力に合わせた食形態…キザミ食、ミキサー食、とろみの使用など |
クレームへの対応方法 | 介護施設でのクレームや苦情の対応は重要です。介護職員がいくら注意を払っていても、「高齢者が転倒した」という介護事故や、ご家族からのクレームを100%防ぐことはできません。ご家族から理不尽なクレームを受けてしまったときにはどうすればいいか、その対応テクニックを学びます。 ・介護施設でのクレームの種類…職員の介護方法や言葉遣いに関する要望、介護中の出来事や必要な物品に関する認識の違いからの苦情、医療的な対応についての不満など ・クレーム時の接遇対応テクニック…上司とクレームの内容を共有し、早急に謝罪する |
記憶力向上のための脳トレーニング | 記憶力を鍛えるための認知トレーニングゲームを学び、実践します。記憶力向上に役立つ食事や生活習慣のアドバイスなども行います。 |
音楽療法とその効果 | 音楽が人の心理や身体に与える影響について理解します。音楽を活用した介護現場での具体的なケーススタディや実践的なアプローチについても学びます。 |
ペットセラピーと動物との触れ合いの大切さ | 動物との触れ合いが人の心理や身体に与えるポジティブな影響について理解し、実践的な方法や注意点を解説します。 |
ダンスセラピーでの体を動かす楽しみ | ダンスが身体や心理に与える影響について理解し、具体的なプログラムや実践方法を紹介します。 |
グリーフサポートと喪失に対する理解 | グリーフを体験する人の支援方法やコミュニケーションのポイントを理解し、実践的なアプローチやケーススタディを紹介します。 |
ハンドマッサージを兼ねたアロマセラピー | ハンドマッサージとアロマセラピーが身体や心理に与える影響について理解し、実践的な方法や手法のを紹介します。 |
これらの内容を基に、各テーマごとに講義やワークショップを実施することで、介護職員は理論を理解し、実践的なスキルを身につけることができるでしょう。ご興味があればぜひ取り組んでみてください。
研修の効果を最大化する計画の進め方
研修の効果的な進め方
研修前に職員へ「事前アンケート」を行う
事前アンケートを実施することで、参加する職員の背景や経験、興味関心、学習目標などを把握することができます。これにより、研修内容やアプローチを参加者のニーズやレベルに合わせてカスタマイズすることが可能となります。
事前アンケートを通じて参加者の学習ニーズや課題を把握し、それらに焦点を当てた内容や演習を用意することで、研修の効果を最大化することができます。また、参加者は実際の業務に役立つスキルや知識を身につけることができるため、より積極的に学びに取組み、研修の成果も実感しやすくなります。
研修の中で「実技」や「グループワーク」などの体験的な手法を行う
介護職の仕事は実践的なスキルや技術が重要です。実技やシミュレーションを通じて、実際のケアシーンを再現し、参加者が実践的なスキルを身につける機会を提供します。これにより、参加者は研修で学んだ知識を実際の業務に直接適用する準備ができます。
例えば、参加者同士が協力して問題解決やケーススタディを行うグループワークは、チームワークやコミュニケーションスキルを向上させ、施設内での協力や連携を促進します。また、体験的な学びは、参加者の興味を引き、関心を高める効果があります。
実技やグループワークなどの体験的な手法は、介護職員向け研修において非常に重要です。これらの手法を組み込むことで、参加者はより実践的なスキルを習得し、業務における自信や能力を向上させることができます。
外部の講師に依頼する
外部講師は通常、特定の分野や専門知識を持っています。彼らは最新のトレンドやベストプラクティスに精通しており、施設のスタッフに最新の情報を提供することができます。これにより、介護職員は専門的なスキルや技術を向上させることができます。
また、外部講師は施設の内部にいる職員とは異なる視点や経験を持っています。彼らの経験から学ぶことで、施設内の日常業務に対する新しいアプローチや考え方を取り入れることができます。これにより職員のモチベーションが向上し、自己成長やキャリアの向上に対する意欲が高まります。
これらの理由から、施設の職員が最新の知識やスキルを習得し、より高い水準のサービスを提供するためには、外部の専門家の協力や指導が不可欠といえます。
介護研修の準備をする
- ニーズの分析
まず、施設内の職員や管理職、利用者などのニーズを把握するためのアンケート調査やヒアリングを行い、具体的な研修内容や目標を明確にします。 - 研修計画の策定
ニーズ分析の結果をもとに、研修の目的や目標、内容、形式、期間、予算などを含めた研修計画を立案します。 - 目標設定
研修の目的や受講者のニーズに合わせて、具体的な目標を設定します。目標が明確であることは、参加者のモチベーションを高めるために重要です。 - 講師の選定
専門性や実績のある講師を選定し、研修の質を担保します。 - 参加者の動機付け
研修への意欲を高めるために、参加者に研修の重要性やメリットを丁寧に伝え、期待感を持たせます。 - カリキュラムの設計
内部研修担当者と連携し、適切な研修プログラムを組み立てます。内容が体系的で一貫性があり、受講者がステップバイステップで理解しやすいように計画します。さまざまな教材や活動を組み合わせて、参加者の興味を引くように工夫します。 - 成果の評価(フォローアップ)
研修の効果を測るために、事後アンケートやフィードバックセッションを行い、研修の成果や課題を明確にし、今後の研修計画に生かします。また、参加者や上司と面談を行い、研修内容の理解度や実践への応用力を評価します。 - 実践への支援
研修を通じて得た知識やスキルを実際の業務に繋げるために、進捗や実践での課題を定期的にフォローアップし、必要なサポートを提供します。
これらのステップをしっかりと踏み、研修の効果を最大化するための計画を進めることで、介護現場においてより効果的な研修を提供し、職員のスキル向上やサービス品質の向上につなげることができます。
まとめ
介護現場での職員教育の方法は、大きく分けて二つあります。一つは、OJT(On The Job Training)といい、実際の介護現場で行われ、先輩や上司の指導のもと、仕事を通じて実際に経験を積む形式です。これは実践的な技術やスキルの習得に重点を置きます。
もう一つは、OFF-JT(Off The Job Training)といい、決められた研修テーマに沿って、フロアー(高齢者の生活スペース)外の研修室等で行われる研修です。講義やワークショップなどの形式が一般的であり、基本的な知識、技術の習得に焦点が置かれます。
この記事でご紹介したものは、主に「OFF-JT」のための研修テーマです。つまり、研修室で、職員みんなで学ぶための研修です。しかし、研修を実施しただけで満足してしまい、「やって終わり」にならないようにしてください。
例えば、「接遇マナー」や「排泄介助技術」という研修を受講したとして、それが、介護現場でどう生かされているのか、それを確認するのがOJTです。特に新人職員は、研修を受けただけでは、理解できていないことが多くあります。介護現場で先輩や同僚から受けるフィードバックは、成長の機会として非常に重要です。OFF-JT と OJT を組み合わせることで、理論と実践を結びつけ、職員のスキルや専門性を総合的に向上させることができます。
介護施設で行う研修は、法定研修以外は、「必ずこの内容について学ぶ」という決まりがありません。そのため、自由な発想でネタ探しをして、楽しみながら学ぶことができます。硬い考えにとらわれず、職員が興味を持つネタを取り入れることが大切です。面白いネタを挟みながら、介護職の仕事に必要な知識・技術を学んでいきましょう。
ツクイスタッフでは、介護現場に精通した講師による研修を「動画研修・講師派遣型研修・オンライン研修」の3つのスタイルで総合的に提供しています。
ご興味のある方は、是非お気軽にご相談ください。
>>ツクイスタッフの研修サービスについてはこちら
【参考文献】
- 「介護保険施設・事業所のための新人職員教育研修プログラム・レシピ」河内 正広(産労総合研究所)
- 「介護技術チェックシート」(介護労働安定センター)
- 「こころをつかむ介護職員研修シリーズ第2巻施設内介護で求められる接遇マナー」蜂谷英津子(日本経済新聞出版)
- 「介護福祉士養成実務者研修テキスト」 (長寿社会開発センター)
- 「介護職員初任者研修テキスト第2版」 太田貞司・上原千寿子・白井孝子(中央法規)
- 「生活援助従事者研修59時間テキスト」 堀田力・是枝祥子(中央法規)
【参考サイト】