介護現場はプライバシーだらけ!プライバシー保護とその重要性について解説

介護施設掲載日: 2025.02.14(更新日: 2025.02.14)
介護施設の模型を持ち、人差し指を前に出す女性

介護の現場では「利用者のプライバシーを守りましょう」と聞くことがよくあると思います。介護は、身体介護で利用者の身体に触れたり、生活援助で私生活の場を訪問したり、利用者のプライバシーに介入することが前提で成り立つサービスです。「他人に干渉してほしくない」「恥ずかしい」と感じることに配慮し、利用者のプライドを傷つけたり精神的苦痛を与えたりすることを避けるような配慮が必要です。

介護事業所においては、「プライバシーの保護の取り組みに関する研修」は毎年必ず実施しなければならない必須研修です。この記事では、介護業務におけるプライバシー保護の必要性について解説し、さらに、プライバシー保護の具体的な取り組み事例など、実践的な内容についても詳しく解説いたします。

「プライバシー」と「個人情報」の違いは?

プライバシーとは

プライバシーとは、「他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由」のことであり、「プライバシーの保護」とは、私的な領域への干渉を禁じることです。個人的な趣味嗜好や、入浴や排泄などは「私的な領域」=「プライバシー」にあたります。

近年では、インターネットの発達と普及による情報化社会において、電子データ上の個人情報の保護と削除についての権利、例えば、自分自身に関する情報を誰にどこまで公開するかを決める権利(自己情報コントロール権)もプライバシーに含まれるとされています。また、個人が持つ多様な考え方や価値観が尊重されることや、経歴や宗教、思想などによる不当な差別や偏見を受けない権利もプライバシーと考えられるようになりました。

個人情報とは

一方、個人情報とは、生存する特定の個人を識別することができる情報を指します。例えば以下のような項目です。

  1. 情報それ自体で、特定の個人を識別することができるもの(氏名、顔写真など)
  2. 他の情報と照合することにより特定の個人を識別できるもの(生年月日、住所など)
  3. 個人識別符号が含まれるもの(マイナンバー、旅券番号)

それだけではなく、個人の身体、財産、職種、肩書等の属性に関して、事実、判断、評価を表す全ての情報であり、評価情報、公刊物等によって公にされている情報や本人が映った映像、音声による情報も含まれます。

これらを踏まえて、プライバシーと個人情報の違いを一言でいえば、

  • プライバシー…他人に踏み入ってほしくない領域
  • 個人情報…特定の個人を識別・特定できる情報

ということになり、個人情報は、プライバシーの一部に含まれます。個人情報は、誰が見てもわかる「客観的」なものであるのに対し、プライバシーは人との関係性によって異なるので、「私としてはプライバシーの侵害だと思います」という、「主観的」な基準で判断します。

個人情報の漏洩がプライバシーの侵害につながることはありますが、個人情報とプライバシーは同義ではありません。いずれにしても、介護の仕事に携わる者であれば、「プライバシー」も「個人情報」も非常に身近で重要な問題です。それぞれの違いを意識した上で対策が必要です。

プライバシーと個人情報の関係を表す図

介護現場におけるプライバシー保護の重要性

介護職員は、高齢者の個人的な生活や身体、精神に関係することにも深く関わることが多くなります。自宅での訪問介護だけでなく、施設内での介助や他の利用者との関わり合いなど、いつでもプライバシーや個人情報の問題と接していることを強く意識することが求められます。

「見守り」・「付き添い」・「所在の確認」・「入浴」・「排せつ」など生活を支えることは、「プライバシーに関わる」ということです。介護を受ける側に立って想像してみましょう。

  1. 事故防止を目的に様々な行動を監視される。
  2. 入浴の際に裸を介護職員に見られる。
  3. 排泄や排便をしている姿を安全のため介護職員に監視される。
  4. 排泄や排便を失敗する姿を介護職員に見られる。

排泄・衣類の着脱・入浴では、利用者は介護者に普段人には見せない部分まで見られることになるため、羞恥心に配慮したケアが求められます。

また、個人情報に絞って言うと、私たちが普段から目にしている「利用者基本情報」「ケアプラン」「ケース記録」「アセスメントシート」「介護サービス計画書」「リハビリ評価表」など、介護現場で使用している記録等はほとんど全てが個人情報です。介護サービスは他の事業と異なり、特定の範囲だけで個人情報を扱うのではなく、事業のほとんどの場面で個人情報を使用してサービスを行っているので、対象は広範囲にわたります。以下のような特徴を踏まえた対策が必要です。

センシティブな情報

介護現場で扱われる個人情報は、健康状態、病歴、身体的・精神的なニーズ、経済状況など、非常にセンシティブでプライベートな情報が含まれており、適切な取り扱いが求められます。なお、介護サービスにおける個人情報の範囲として、利用者自体の個人情報ばかりでなく、利用者の家族に関する情報、介護職員の情報も含まれます。

情報の共有と連携

複数のケアプランナーや医療従事者、ケアスタッフなど、複数の関係者が利用者の情報を共有し、連携する必要があるため、適切な情報管理が求められます。例えば、ふらつきの原因になる向精神薬を服用している利用者であることを把握して、利用者の転倒防止のために介護や見守りをしなければならない場合があります。この情報は利用者に関わる全ての職員が共有していなければなりません。そこには雇用形態を問わず、新入職員を含めた全階層、全職種の職員の個人情報保護の強い認識が求められます。

入退所や移動の際の情報管理

介護施設では利用者の入退所やフロアー間の移動が頻繁に発生するため、個人情報を適切に引き継ぐ必要があります、また、情報を使用する場面が広いため、情報と一口に言っても様々な形があります。

例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • サービス担当者会議で使用される個人情報
  • 事業所に直接戻らない訪問介護のヘルパーが事業所に共有するための情報
  • 理美容や調理を外部委託する場合に業者に提供する利用者情報
  • ボランティアが使用する利用者情報

このように各情報が持つ特性と、介護サービスで使用する情報の特徴を十分に踏まえたプライバシー保護対策が必要です。

介護サービスの個人情報使用上の留意点

① 適切な情報取扱い

利用者の個人情報は、法的基準と倫理的な観点から慎重に取り扱われなければなりません。情報収集、保存、利用、共有は適切な手順に基づく必要があります。また、利用者の個人情報には、必要最小限の職員のみがアクセスできるよう制限を設ける必要があります。不正な閲覧や利用を防止するための仕組みを整えることが重要です。

② 秘密保持

介護職員は、利用者の個人情報を外部に漏らさないように厳重に管理しなければなりません。情報漏洩を防ぐために、アクセス制限やデータ暗号化など、適切な情報セキュリティ対策を講じることが重要です。

③ 必要最小限の原則

個人情報の使用は、利用者のサービス提供や健康管理などの業務遂行に必要な範囲内で行われなければなりません。不必要な情報の収集や使用は避けられるべきであり、利用目的の明確化が求められます。

④ 同意と透明性

個人情報を新たな目的で利用する場合や第三者に提供する場合には、利用者やその家族からの同意を得て、情報の取り扱いについて明確かつ丁寧に説明することが重要です。個人情報の扱いについて利用者に理解してもらいやすくするための努力と、利用者のプライバシーを尊重することが求められます。

⑤ 情報の正確性と更新

利用者の個人情報は常に正確なものでなければなりません。利用者の健康状態やニーズが変化した場合には、個人情報を適切に更新し、正確な情報を維持することが求められます。

これらの留意点を遵守することで、介護サービスは利用者の個人情報を適切に取り扱い、プライバシーを尊重することができます。

プライバシーの侵害とは

プライバシーの侵害という概念は、個人の権利と自由が、他人により侵害されることを意味しています。具体的には次のような場合を指します。

プライバシー侵 害
個人や家庭内の私事、私生活興味本位で探ったり、覗こうとしたり、住居等に侵入される
他人に知られたくない個人の秘密公開されたり、噂を流されたり、干渉される
個人の情報やうわさ公開・流出したことにより、他人に自己の真の姿と異なる誤った印象を与えたり、日常生活や精神的に支障をきたす
嘘や間違った情報を修正したり、削除したりすることができない
事業者に提供した個人情報が法律に則り保護されない
氏名や自分の姿が映り込んだ写真、肖像他人が利得のために流用したり、許可無くテレビやインターネット上等に公開される
自分の望む生き方を自由に選択する選択することができず、行動が人の裁量に委ねられる状態
容姿、人格、性別、考え方、宗教、思想、生き方、病歴、経歴、前科等それを理由に差別や偏見を持たれたり、社会生活において否定や干渉を受ける

自分の事業所でも起こり得るリスクを想定しながら、それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。あなたの働く介護施設ではいかがでしょうか?「個人情報の漏洩では?」と感じることはありませんか?

メールの誤送信

利用者の情報をメールで送信する場合は、宛先に注意しましょう。「宛先の設定ミス」「To/CC/Bccの設定ミス」「添付ファイルの選択ミス」のメールの誤送信によって、情報漏洩が起きています。メールの誤送信の原因は、ほとんどがヒューマンエラーです。うっかりミスによって、利用者の個人情報が第三者に悪用される可能性も考えられます。メールの誤送信は気が付きにくく、利用者に指摘されて気が付くケースが多いです。このように外部の人に指摘されてしまうと信用を失います。

利用者の情報に限らず、職員や会社の重要な情報をメールで送信する場合は、何度も確認して確実にミスをなくしましょう。

USBメモリを持ち帰り帰宅途中に紛失した

以前、ある介護施設で、利用者や家族の氏名や生年月日、電話番号などの個人データ156件が記録されたUSBを紛失したという事例がありました。原因は、USBの保管場所に鍵をかけておらず、定期的な確認も怠っていたためです。業務の都合上、USBメモリの持ち出し禁止は難しいかもしれません。そのため、持ち出す際には許可申請し、返却期限を設けたり、一人ひとりが厳重に管理するという意識を持つことが大切です。

業務用携帯電話の紛失

業務用携帯電話(スマートフォン)の紛失も、個人情報漏洩原因の一つです。最近は介護記録支援システムを導入して、スマートフォンで介護記録を行う施設が増えています。しかし、スマホを作業場に置きっ放しにして紛失するトラブルも多くあります。

またスマホは紛失だけでなく盗難の可能性も考えられます。そのため、電車や公共トイレなどに少し置き忘れただけでも、誰かに持ち去られるかもしれません。利用者の個人情報を含むスマートフォンを落としてしまうと悪用されてしまうかもしれません。そのため、スマートフォンやパソコンには、必ずロックをかけておきましょう。

不正アクセスによる個人情報の漏洩

データを送る時に、無料で利用できるフリーメールを利用すると、不正アクセスに狙われやすくなります。実際に、フリーメールを利用した医師が不正アクセスに狙われて、患者の個人情報が漏洩したという報道もありました。このようなフリーソフトのダウンロードは許可なくさせてはいけません。

また、近頃ではウイルス感染メールが普及しています。この感染メールを開封するとウイルス感染して、個人情報が盗まれてしまうのです。サイバー被害も増えているので、セキュリティ対策を行っておきましょう。

今ではほとんどの介護現場が、ネット上で個人情報をはじめとしたデータを管理しています。

そのため、確実にセキュリティ対策をしておき、事前に不正アクセスから情報を守りましょう。また事業所のパソコンで、むやみに業務以外のWEBサイトにアクセスしないことも予防策の一つです。

この他にも、

  • 個人情報に関する書類をそのまま捨てた
  • 申し送りの際に個人情報を大声で言っている
  • 個人のSNSに施設の様子を許可なくアップした
  • プライベートで外食中に利用者について会話した
  • 自分の家族に何気なく利用者のことを相談した

なども、個人情報の漏洩に繋がります。これらの事例からも分かるように、介護現場では様々な形で情報漏洩のリスクが存在し、それらに対処するためには適切な対策と教育が必要です。

プライバシー保護と関連法規の理解

介護事業者は、取り扱う個人情報が多数の利用者やその家族について、他人が容易には知り得ないようなセンシティブな個人情報を詳細に知り得る立場にあり、個人情報の適正な取扱いが強く求められる分野であることから、厚生労働省が「医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイダンス」を示して、その内容を遵守する努力を求めています。

訪問介護を例に、運営基準に示された、個人情報保護や守秘義務の規定を以下に紹介します。

介護保険法における「個人情報保護と守秘義務」の規定

訪問介護・運営に関する基準第33条(秘密保持等)

  1. 指定訪問介護事業所の従業者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。                                        
  2. 指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所の従業者であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
  3. 指定訪問介護事業者は、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。

運営に関する基準とは、介護保険法や各自治体で介護事業所の規模、営業時間、料金、業務内容、記録など、さまざまな要件についてまとめられているものです。事業種別ごとに設けられた運営基準をもとに、介護現場での個人情報保護が実践されます。

当然のことながら、次に紹介する「個人情報保護法」をはじめ、介護事業者に適用される関係法令及び関係通知における個人情報保護に係る規定等を遵守しなければならないことはいうまでもありません。

個人情報保護法

氏名や性別、生年月日、住所などの情報は、個人のプライバシーに関わる大切な情報です。一方、それらの情報を活用することで、介護現場ではサービスの向上や業務の効率化が図られるという側面もあります。

そこで、個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利や利益を守ることを目的とした「個人情報保護法」(正式名称:個人情報の保護に関する法律)が2003年5月に制定され、2005年4月に全面施行されました。

この法律は、個人情報の漏洩や不正利用を防ぐために個人情報の定義や取り扱いに関する基準を設けています。また、法人や団体に対しても個人情報の適切な管理や保護を義務付け、個人情報の取り扱いに関するルールや制裁規定を定めています。この通り、個人情報保護法は、個人のプライバシーや権利を守るための重要な法律です。

その後、デジタル技術の進展やグローバル化などの経済・社会情勢の変化、世の中の個人情報に対する意識の高まりなどに対応するため、個人情報保護法は、これまでに何度か大きな改正が行われました。

名前や性別、住所などはもちろんのこと、病状や介護度、家庭の状況といったきわめて重要な個人情報を取り扱う介護現場。2017年の改正により、取り扱う個人情報の数にかかわらず、ほとんどすべての事業者が同法律の適用対象となりました。どのような情報が個人情報に当たるのか、どう取り扱うべきかを、利用者と直接関わる介護職員もしっかり認識しておく必要があります。介護職員が気をつけるべき個人情報保護法には、以下の点が重要です。

  1. 個人情報の適切な取り扱い
    介護職員は利用者やその家族の個人情報を適切に管理し、漏洩や不正利用を防ぐための対策を講じなければなりません。
  2. 情報の提供と同意
    介護職員は利用者やその家族からの個人情報提供の際に、十分な説明を行い同意を得ることが求められます。また、情報の利用目的を限定し、提供された個人情報をその範囲内で厳密に管理する必要があります。
  3. 情報の安全管理
    介護施設や事業所では、個人情報の紛失、漏洩、改ざん、不正アクセスなどのリスクに備え、情報の安全管理を徹底する必要があります。具体的なセキュリティ対策やアクセス制限などが必要です。

これらの規定に従うことで、介護職員は利用者やその家族の個人情報を適切に保護し、信頼関係を築くことができます。

社会福祉士及び介護福祉士法

社会福祉士及び介護福祉士法の第四十六条(秘密保持義務)は、社会福祉士および介護福祉士が収集した利用者やその家族に関する情報を秘密として保持し、漏洩しないようにするための規定です。具体的には、以下のような内容が含まれています。

  1. 秘密の保持
    社会福祉士および介護福祉士は、職務上知り得た利用者やその家族に関する秘密を厳重に保持しなければなりません。
  2. 情報の漏洩禁止
    取得した情報を第三者に漏らさないよう厳重に注意し、他の者に提供することはできません。
  3. 個人情報の適切な管理
    適切な方法で個人情報を管理し、不正アクセスや情報漏洩の防止に努めなければなりません。
  4. 職業倫理の遵守
    職業倫理や職務上の秘密を守るため、適切な対応を行うことが求められます。

以上のことをさらにわかりやすく言うと、介護業務において知った利用者や会社の情報を第三者に(家族や友人にも)漏らしてはいけないということと、たとえその職場を退職したとしても、秘密保持義務は継続するということです。

この法律の規定により、社会福祉士および介護福祉士は利用者のプライバシーや個人情報を守るために尽力することが求められます。

プライバシー保護の取り組み事例

介護場面でのプライバシー保護

入浴介助

入浴介助を行う際は、利用者のプライベートな部分に触れることが多いため、細心の注意が必要です。利用者様が自分で洗える部分については任せて、介護職員は必要なサポートのみ行うようにしましょう。

入浴介助まで利用者をストレッチャーで移動する際は、利用者が恥ずかしくないように配慮することが大切です。例えば、ほとんど服を脱いだ状態や、タオルなどで覆わないで移動することは、プライバシーの侵害になります。以下のようなポイントを守り、利用者のプライバシーに配慮しましょう。

  • 脱衣所で裸にして長時間待たせない
  • 肌の露出を最小限にする
  • 露出している部位にはタオルをかけるなど保温と羞恥心へ配慮する

排泄介助

排泄は極めてプライベートな領域なので、羞恥心に配慮が必要です。例えば、ほかの利用者に聞こえる大きな声で排泄の状況を確認したり、トイレのドアを開けっぱなしにしたりすることは、プライバシーの侵害になります。着衣のサポートが必要な場合は、トイレから出る前に利用者の着衣を整えることも意識しましょう。

  • 見守りのためとしてトイレの扉を開けっぱなしない
  • 排泄中はトイレの外で待つ
  • 利用者が安心できるよう「近くにいますよ」など声かけを行う
  • ストーマやバルーンカテーテルの管理も配慮する

軽はずみな介護スタッフ間の会話

プライバシー保護への取り組みで見落としがちなのが、「介護スタッフ間の会話」です。利用者のプライバシーに関する会話を職員同士で行う際は、名前を出さないようアルファベットや記号で呼ぶこと、できるだけ専門的な用語を使うことが大切です。万が一ほかの利用者に聞かれたとしても、「誰のことかわからない」「何のことかわからない」ようにすることで、プライバシーの侵害を防げます。以下のような事例には気を付けましょう。

  • 利用者の情報を他の利用者やその家族に知られないようにする
  • 情報共有する場所や声の大きさに配慮する
  • 本人を辱めるようなことを言わない

職員同士のプライバシー保護

  • 一緒に働く職員のプライバシーも大切にする
  • 職員の噂話をしたり根拠のない噂を広めたりしない

IT時代における注意

  • 自分のスマホに職場や利用者の情報を入力したり撮影したりしない
  • 施設内のイベントなどをSNSで発信する際に利用者が映っている場合は発信する前に利用者又は家族の同意を得る
  • 利用者の情報、画像をパソコンで管理する場合、流出しないようパスワードを設定するなど措置を講じる

個人情報の保護の取組み

情報の適切な管理

個人情報を紙や電子ファイルといった媒体ごとに、適切に管理し、不正アクセスや紛失、盗難などから保護します。具体的には、以下のような対策を実施します。

  • 監視カメラを設置する
  • 鍵付きの書庫を用意する
  • 施設への入退室を管理する

設備などを準備するコスト面はデメリットですが、安全性を担保するためにも、非常に重要な対策です。

職員教育

全ての職員に対して、個人情報の重要性や適切な取り扱い方法についての教育を行います。これには個人情報の取得・利用・提供の際の手順や法的責任などを含みます。さらに組織としても以下のような取り組みが必要です。

  • 個人情報保護に関する規定を掲示板やホームページ上で周知する
  • 個人情報保護に関する委員会を設置する
  • 情報漏洩が発生した際の報告連絡体制をマニュアル化する
  • 雇用契約や就業規則で個人情報の守秘義務を示す
  • 個人情報に関する研修を行い、情報の保護意識を高める

組織全体で個人情報保護に対して、安全に管理することを示すとともに、委員会の設置や連絡体制マニュアルの作成といった実践も重要です。さらに法改正の可能性もあるため、職員に対して定期的な勉強会を行い、最新の情報を把握することが求められます。

技術的な対策

最近は介護現場でも、記録管理をネット上のシステムを利用し、ICT化やDX化が進んでいます。個人情報へのアクセスを必要最小限にとどめるため、職員ごとに情報へのアクセス権限を適切に設定したり、電子データの暗号化を行うことで、情報漏洩のリスクを軽減します。具体的には、以下のようなセキュリティ対策が必要です。

  • ログインIDやパスワードの適切な管理
  • ウイルス対策ツールの導入
  • システムへのアクセス権限の管理

ただし、不正アクセスの手法は複雑かつ巧妙化しているため、パスワードの変更やウイルス対策ツールの更新など、定期的な見直しが大切です。

これらの取り組みにより、介護現場で適切なプライバシー保護・個人情報保護を実現し、利用者や関係者の信頼を築くことができます。

まとめ「プライバシーの保護」は信頼関係の構築から

介護サービスを提供する私たち介護職は、利用者やその家族の大切な個人情報を預かっています。そのため、管理職だけでなく介護職員一人ひとりが個人情報保護について学ぶことが大切です。

介護の仕事は、「プライバシーに立ち入る」「個人情報を知る」ことが前提で成り立つサービスです。        そのため、利用者との信頼関係は必須になります。嫌いな相手や信頼できない相手にプライバシーに立ち入られ、個人情報を知られることは、誰しも耐えられないからです。まずは信頼関係を築き、プライバシーに立ち入っても利用者に負担や不満を感じさせないような状態になって初めて、満足度の高い介護サービスを提供することができます。

今回はプライバシーと個人情報それぞれの対象や内容について確認しました。どちらも利用者の人権を守るためにあります。介護の仕事をする上で、人権の尊重は介護の理念の根底となるものです。倫理的な理解と同時に今回の事例をヒントに職場で具体的なケーススタディー、カンファレンスを繰り返し、1人1人のプライバシー保護について考え、現状の介護の方法で良いのか見直す必要はないかと常に意識し、利用者や家族が安心して介護を受けることができるよう努めましょう。

また、「プライバシーの保護の取り組みに関する研修」は法定研修で必須となっています。毎年必ず研修を行い、介護職員がプライバシー保護、個人情報保護に関する知識を継続的に学べる環境づくりが大切です。以下の公的なサイトにもプライバシー保護に関する有益な情報がありますのでご利用ください。

介護業界での研修サービスを10年以上展開するツクイスタッフでは、「プライバシー保護の取り組みに関する研修」も行っております。研修は施設や事業所の目的に応じて「動画研修」「講師派遣型研修」「オンライン研修」の三つのスタイルから選択できます。

さらに、行政の提出書類も簡単に作成できる機能が備わっているため、現場の負担を最小限に抑えつつ、効率的に研修をすすめることが可能です。ご利用者や家族にとって安心できる環境を整えるためにも、ぜひツクイスタッフの研修サービスをご活用ください。

詳しい研修内容や申し込み方法については、ツクイスタッフの公式サイトをご覧ください。

ツクイスタッフの研修サービスについてはこちら>>

ツクイスタッフのプライバシー保護に関する研修プログラム例はこちら>>

  • けあんちゅPro代表(介護人材育成の社会貢献活動)/
    グループホーム管理者/介護支援専門員/
    ツクイスタッフパートナー講師

    森 幸夫

    経歴詳細を見る

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