リーダー職必見、介護職のモチベーション研修で職員定着を狙う

スキルアップ,介護ペディア掲載日: 2025.08.08(更新日: 2025.08.08)

介護現場では、職員のモチベーションがサービスの質や職員定着率に直結します。介護業界の離職率の高さが課題となる中、リーダー職が中心となって職員のやる気を引き出す研修の導入が効果をあげています。本記事では、介護職員のモチベーション向上に効果的な研修内容や現場で実践できる施策をご紹介します。

介護事業所におけるモチベーション研修の重要性

1.モチベーションが職員定着に与える影響

介護業界における職員のモチベーションが与える影響は、単なる個人の感情の問題だけではありません。高いモチベーションを維持している職員は、職場への満足度が高く定着率が高い傾向にあります。結果として利用者への対応も丁寧でサービスの質も安定します。また、モチベーションの高い職場環境は、雰囲気も良く職員の自己成長を促進し、専門性の向上にもつながることが知られています。

2.モチベーションの低下がもたらすリスク

一方で、職員のモチベーションが低下した職場では深刻な問題が発生します。離職率の増加により人手不足が慢性化し、残った職員の負担が増大する悪循環に陥ります。人員の入れ替わりが多いと、業務が特定の職員に集中する属人化が進み、チームワークの崩壊を招くケースも少なくありません。さらに、重要なのは、職員のモチベーションの低下が利用者への対応に影響し、機械的なケアによって利用者満足度が低下することで、事業所経営に大きなリスクをもたらします。

介護士のモチベーションを高めるための研修内容

1.やりがいを再認識する研修

介護職のモチベーション向上には、仕事のやりがいを再認識させる研修が効果的です。利用者やその家族からの感謝の声を共有し、自分たちの仕事が他者の人生にどのような影響を与えているかを実感でき、「この仕事をしていて良かった」「この仕事が好きだ」と感じる機会を提供することが重要です。具体的には、サービスの提供により利用者の生活の質が向上した事例や、家族からの感謝の手紙などを職員間で共有するなど、仕事の価値を再認識できる機会を持てるようにすると効果的です。

2.コーチング技術を活用した研修

介護現場のリーダー職は、他の職員の指導の際に指示・命令型の指導手法ではなく、職員の内発的動機を引き出すコーチング技術の習得が求められます。これは、介護職が高度な専門性と人間性を要求される職種であることや、一人ひとりが自律的な判断ができるようになる必要性があるためです。また、近年の労働環境における働き方に対する考え方が多様化していることを受け、従来の指導方法では受け入れられないなど、個々のニーズに応じた指導が必要になっています。

コーチングの技術である傾聴・承認・質問力を高めることで、職員同士の信頼関係を構築しながら、個々の職員が持つ潜在的な能力や意欲を引き出す指導を実施することができます。リーダーが職員一人ひとりの価値観や目標を理解し、それに応じた適切な支援を提供できるようにコーチング技術を学ぶ機会を得ることで、介護職員との信頼関係が構築でき、職場のモチベーションも高まっていくでしょう。

おすすめのモチベーション研修プログラム

1.実践的なワークショップ形式

モチベーション研修は座学だけでなく、実践的なワークショップ形式で実施することが重要です。「感情マネジメント」、「ストレスケア」、「自己肯定感向上」など介護職に必要な心理的スキルを高めるテーマを設定し、参加者同士のグループディスカッションやロールプレイを行うことで、より学びが深まります。また、成功事例の共有により現実的で実践的な学びを促進するためには、外部講師の活用も有用です。

具体的な研修プログラムとして、まず基礎編として新人介護職員等を対象にした、やりがいを発見するワークショップが効果的です。このプログラムでは、参加者が「介護の仕事でうれしかった瞬間」や「利用者から感謝された体験」を振り返り、グループで共有することで自分の仕事の価値を再認識し、同僚の体験から新たな視点を得ることができます。

応用編として、リーダー職や中堅職員を対象とした「コミュニケーション力向上研修」を実施すると良いでしょう。この研修では、職員間の信頼関係の構築と利用者との良好な関係性の向上を目的とし、傾聴スキル、共感的理解、アサーティブコミュニケーションの実践をロールプレイ、事例検討、フィードバック練習を通じて学びます。この研修により、職員同士のコミュニケーションが円滑になることで職場の雰囲気が改善し、利用者からの信頼度が向上することが期待できます。また、リーダー職の指導力の向上により、チーム全体のモチベーションの管理やサービスの質の向上がより効果的に行えるようになります。

さらに、介護職員の心理的負担の軽減と離職防止のために、継続的な「ストレスマネジメント研修」の実施をおすすめします。この研修では、介護現場特有のストレスの要因の理解、セルフケアの技術の習得、リラクゼーション法を学びます。それにより、職員が自分自身のストレスの状態を正しく把握し、効果的な対処法を実践できるようになり、バーンアウトの予防や業務でのパフォーマンスの向上が期待でき、長期的には職員の定着率の向上が目指せます。

2.段階的なスキルアップ研修

職員のレベルや経験年数に応じた段階的なキャリアパスを設計することで、より効果的な学習の支援が可能になります。新人職員(経験1年未満)には、介護職としてのアイデンティティの形成と基本的なコミュニケーションスキルの習得を重点課題とし、「介護職としての心構え」や「利用者とのかかわり方」などの研修を実施します。中堅職員(経験2-5年)には、指導力の向上とチームへの貢献意識の醸成を目的として、「リーダーシップ研修」や「指導スキル」「チームワーク向上」をテーマとした研修を実施します。経験豊富なベテラン職員やリーダーには、組織全体のモチベーション向上と人材育成スキルの向上を図るため、「コーチング技術」や「組織マネジメント」「メンタルヘルスケア」についての研修を実施すると良いでしょう。

3.継続的な学習環境の整備

研修は一回限りではなく、継続的に実施することが重要です。定期的なフォローアップ研修や、日常業務の中で学んだスキルを実践する機会を設けることで、研修効果を持続させることが可能になります。

継続学習では、研修で学んだスキルの実践報告や困ったことや改善点の共有、次月の目標設定などを月次の振り返りとして実施します。研修で学んだスキルを実践した場面や結果を簡単に記録しておき、振り返りの機会を設けることで成長を実感できる機会となります。自拠点でこれらの仕組みの構築が難しい場合は、コーチや研修機関との連携、オンライン学習のプラットホームの活用なども効果的です。

介護職員のモチベーションを維持するための施策

1.定期的な評価とフィードバック

職員のモチベーション維持には、管理者やリーダーとの定期的な評価とフィードバックが不可欠です。月1回程度の面談を実施し、業務の振り返りと目標設定を行うことで、職員の成長を支援しましょう。特に重要なのは、ポジティブなフィードバックを重視し、職員の良い点や成長を積極的に認める承認文化」を職場に醸成することです。単に職員を「褒める」だけよりも「承認」することで、自信と意欲を高める効果が得られます。

2.キャリアパスの明確化

職員が将来のビジョンを描けるよう、明確なキャリアパスを提示することも重要です。スキルアップに応じた昇格制度や資格取得支援制度を整備し、職員が自身の成長を実感できる環境を作ることで、将来的なビジョンを描きやすくなり長期的なモチベーション維持が可能になります。

研修参加者の声と成功事例

実際にコーチング研修を受講した介護事業所の方々からは、以下のような感想が寄せられています。

研修を受けた参加者の声

  • これまでは、つい自分の聞きたいことや言いたいことを話していた。しかし、それでは相手が話したいことや知ってほしいことを導き出すどころか、相手に敬遠されてしまい良好な関係性が保てなくなるかもしれないと気付いた。
  • コーチングスキルを身に付けることで、相手の言葉の奥にある「なりたい自分」や「思い描く未来」を知ることができ、同じ方向性で成長を見守りたいと感じている。
  • 否定されることなく話を聞いてもらえるだけで、失敗してもモチベーションが低下することがなくなった。先輩に相談しやすくなり仕事が楽しいと思えるようになった。

研修後の職場環境の変化

研修導入後、職員間のコミュニケーションの取り方に変化がみられ、聞く姿勢や話したいことをしっかり話せる雰囲気になりました。また、ご利用者からも「職員さんがよく話を聞いてくれるようになった」「雰囲気が良くなった」とサービスの質の向上も実感しているとの感想を聞くことができました。

よくある課題と解決策

ここでは、介護現場での職員のモチベーションの維持に関してよくある課題と解決策をご紹介します。

1.研修時間の制約への対応

モチベーション研修を行いたいが、「忙しくて研修時間が取れない」という場合は、15分程度のミニ研修や、業務後のオンライン研修など、柔軟な形式での実施が有効です。段階的、継続的に実施できる現実的なアプローチを選択することで、時間の制約を解決することができます。

2.モチベーション低下職員への対応

モチベーションが低下している職員に対しては、どのように声を掛けたらいいのか迷うという方も多いのではないでしょうか。下手な対応をして、余計に追い詰めてしまうのではないかと躊躇してしまうという声も耳にします。このような場合には、まず「最近どう?」といった気軽な声かけから始めることが大切です。否定的な態度ではなく、相手に関心を示すことで信頼関係を構築することから始め、相手が自分から話せる雰囲気を作ることができれば、根本的な問題解決につなげることができます。

まとめ

介護業界における人材不足が深刻化する中、職員のモチベーション管理は事業所の存続にかかわる最重要事項です。介護職員のモチベーション向上と職員の定着は、研修だけでなく、職場環境全体の改善が必要です。研修はあくまで職場改善の一つの方法に過ぎず、真の成果を得るためには組織全体での継続的な努力が不可欠です。

リーダー職が中心となって、職員一人ひとりの価値観や目標を理解し、適切な支援を提供することで、働きやすく居心地の良い職場環境を構築することができます。この際に重要なのは、画一的なアプローチではなく、個々の職員の特性やニーズに応じたきめ細やかな対応ができることです。また、研修で学んだスキルを日常の業務で実践できる環境づくりと、その成果を適切に評価・承認する仕組みの構築も忘れてはなりません。

まずは、職員同士のあいさつを増やす、感謝の言葉を積極的に伝えるなど、小さなことから始めることが大切です。これらの小さな変化を継続することで、職場の雰囲気は確実に改善し、職員のモチベーションも向上していくでしょう。介護の質の向上と魅力的な職場の両立を目指して、職場環境の構築に取り組んでいきましょう。

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  • 合同会社カサージュ代表/主任介護支援専門員/
    BCAO認定事業継続管理者/産業ケアマネジャー

    寺岡 純子

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