リーダーシップとは?種類やマネジメントとの違いについて解説

スキルアップ掲載日: 2023.03.10(更新日: 2023.05.02)

介護業界では、1人の利用者様に対してチームで関わる場面や、様々な専門職種が協力して仕事を進める場面などが多く存在します。そこで重要なことの一つに「リーダーシップがうまく発揮されているか」という点があります。ところが、自身のリーダーシップに悩むリーダーや、リーダーになることに不安を感じている声も多くある様です。本記事では、リーダーシップとはいったい何なのかを詳しく説明します。

リーダーシップとは?

リーダーシップは生まれ持った能力や素質でもなければ、経営者や管理職だけが持っていれば良い能力でもありません。例えば、役職者ではなくても「このシフトの時間帯の責任者は○○さん」や「今日の日勤帯の一番ベテラン職員は○○さん」のように、役職者でなくても、ある場面においてリーダーシップを期待されることはあります。これまで様々な有識者がリーダーシップについて論じていますが、ここではまず、マネジメントの父とも言われているピーター・ドラッカーのリーダーシップ論を紹介します。

  1. リーダーシップは生まれ持った資質ではなく「仕事」である目標・基準・優先順位などを定めるとともに維持・行動するのがリーダーである
  2. リーダーシップは地位や特権ではなく「責任」であるリーダーとしてスタッフの行動を支援しながら、責任を持つことが必要
  3. リーダーシップは「信頼」である

リーダーとしての仕事をしてメンバーに対する責任を持つことで最終的に信頼が得られスタッフがついてくる

ドラッカーは上記の様なリーダーシップ論を提示しています。日々忙しい介護の現場でも、仕事の優先順位や、お客様への関わり方の基準などを定めることはとても大切です。また、シフトやローテーションがある中で、他の職員に気を配り、支援してくれる人がいることもとても心強いものです。そういった仕事の進め方が、職員たちの信頼に繋がってくるはずです。

リーダーシップの種類

リーダーシップにはさまざまな理論が存在します。リーダーにも色々な性格や価値観があり、チームの職員たちにもさまざまな状況や個性があります。「リーダーシップは○○だ!」と思い込んでしまうのではなく、職員や状況に合わせて効果的なリーダーシップを使い分けることで上手くいくことも多くあります。本記事では、代表的なリーダーシップの種類を紹介します。チームの特性や職員の個性を考えながら、効果的なリーダーシップについて考えてみましょう。

PM理論

PM理論とは、三隅二不二氏(元九州大学教授・社会心理学者)によって1966年に提唱された有名なリーダーシップ行動理論です。リーダーシップとは、【P:目標達成機能(performance)】と【M:集団維持機能(maintenance)】という2つの要素で成り立つとしています。
【P:目標達成機能(performance)】とは、例えば、施設や事業所の目標設定や、計画立案
、職員への指示など、目標を達成するために必要な働きかけです。【M:集団維持機能(maintenance)】とは、職員同士の人間関係を良好に保ち、安心して働けるチームを維持するために必要な働きかけです。良いチームケアと、職員の定着の両立は確かにどちらも重要ですね。PM理論では、このPとMの強弱によって、以下の4つに分類しています。

  • PM型 目標や計画を具体的にし、かつ職員をまとめる力も強いタイプ
  • Pm型 目標や計画を具体的にして成果をあげるが、職員をまとめる力は弱いタイプ
  • pM型 職員をまとめる力は高く信頼されているが、仕事の成果が弱いタイプ
  • pm型 成果をあげる力も、職員をまとめる力もどちらも弱いタイプ

SL理論

SL理論とは、ポール・ハーシー氏(アメリア・行動科学者)とケネス・ブランチャード氏(アメリカ・経営コンサルタント)が体系化した理論で、「リーダーシップとは常に同じように発揮するのではなく、部下の状況に応じてリーダーシップの型を変える」という状況対応型のリーダーシップです。SLの原語は「Situational Leadership」で、訳すと「状況対応型リーダーシップ」となります。

勉強はしているけれど行動することが苦手な職員や、一人では動き出すことに不安がある職員など、働く一人ひとりに合わせたリーダーシップは、多様な職員が働く介護の仕事でもイメージしやすいはずです。

  • S1:教示的リーダーシップ・・・経験が少ない職員や、意欲が少ない職員に対しては、「教示的リーダーシップ」によって、具体的な指示を与えて業務の経験値を上げたり、計画的な業務遂行を促します。
  • S2:説得的リーダーシップ・・・知識や経験はあるものの、自発的な行動が少ない職員に対しては、「説得型リーダーシップ」によって、コミュニケーションをとって関係を深めるとともに、目標設定などの重要な決定を行い、そこに向かう意欲的な行動を促します。
  • S3:参加的リーダーシップ・・・能力はあるものの、一人で行動することに不安があるタイプに対しては、「参加型リーダーシップ」によって、ともに考えて目標や計画を決定し、サポートを十分に行うことで行動を促します。
  • S4:委任的リーダーシップ・・・やるべきことがわかっていて、行動力があるタイプに対しては、「委任型リーダーシップ」によって、職員の自由やモチベーションを尊重し、意見をよく聞きながら自立的な業務遂行を支援します。

ダニエル・ゴールマンによる6種類のリーダーシップスタイル

ダニエル・ゴールマン(アメリカ・心理学者)が提唱した6種類のリーダーシップスタイルは、組織やチームの状況に合ったリーダーシップや、部下の特徴に合わせたリーダーシップタイプを考えるうえで役立ちます。

  • ビジョン型リーダーシップ・・・チームが目指す目標を職員に伝え、チームを巻き込み、一丸となって目標達成に向かわせるリーダーシップです。リーダーの牽引力が必要になりますが、それについていく職員の帰属意識も高まります。
  • コーチ型リーダーシップ・・・職員のやり方や考え方を尊重し、自立心とモチベーションを高めるリーダーシップです。仕事や専門分野に対してモチベーションが高い職員に対しては特に効果的です。
  • 関係重視型リーダーシップ・・・チーム内の人間関係を特に重視するリーダーシップです。例えば多職種連携時など、利害関係が異なる仲間とともに仕事を進める場面などでは有効です。但し、関係を重要視するあまり、成果がおざなりにならないよう注意が必要です。
  • 民主型リーダーシップ・・・職員の提案や意見を聞き、同じ目線で話し合い、目標や仕事の進め方を決定します。意見が認められることで職員のモチベーションアップにも繋がります。経験が多い職員や、意見が言える職員が多い組織で特に有効です。
  • 実力型リーダーシップ・・・リーダー自身がプレイヤーとして高いパフォーマンスを発揮することで、チームを引っ張るリーダーシップです。リーダーの能力が高いことが重要です。見本を見せてもらえることで、職員が業務の成功イメージを持ちやすくなります。
  • 強制型リーダーシップ・・・強制力を用いてチームを目標に向かわせるリーダーシップです。例えば、施設内で感染症のクラスター発生時や、大規模災害に罹災した時など、短期間でチームを導く際に有効です。しかし、人材育成やモチベーションには直結しないため、長期間続くと離職率が上がることがあります。

クルト・レヴィンの3種類のリーダーシップ型

クルト・レヴィン(アメリカ・社会心理学者)は、リーダーシップを専制型・放任型・民主型の3つに分類しました。その中でも民主型リーダーシップがもっとも生産性が高く、職員のモチベーションも高まるとしています。まずは3つの分類を見てみましょう。

  • 専制型リーダーシップ・・・リーダーが全ての指示を出し、チームの行動に関与します。人材育成や職員の自立には繋がりませんが、緊急時や、リーダー以外の職員の経験値が極端に少ない場合などには有効です。
  • 民主型リーダーシップ・・・リーダーと職員が話し合い、一緒に意思決定を行います。また業務の進め方や進捗などを職員に任せることもあります。職員の成長とモチベーションアップが両立出来る好ましいスタイルとされますが、職員と十分に話し合う時間を取ることが前提です。忙しい介護の現場で実現するためには、時間管理の意識も求められます。
  • 放任型リーダーシップ・・・リーダーは目標設定や判断には関わりますが、チームの業務遂行にほとんど関与しないことが特徴です。職員それぞれの積極性やスキルが高い場面では有効です。異なる専門職種を集めたチームなど、介護業界でも時折見られるチームのあり方です。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップとマネジメントには様々な解釈があり、その違いがわかりにくいこともあります。以下にその意味をまとめます。

リーダーシップ:「集団の中での役割」
 マネジメント:「課題解決に向けた仕事の進め方」

リーダーシップとは、「集団の中での役割」です。例えば、家庭の中でも「母から見た自分は子供」であり、「我が子から見た自分は父」であったりします。職場の中でも、「ある限られた集団の中で、判断や指示をおこない、チームをまとめて業務を遂行する役割」がリーダーシップです。

一方でマネジメントとは、「課題解決に向けた仕事の進め方」です。例えば、リーダーシップと異なり、タイムマネジメントやセルフマネジメントのように自分ひとりでもスキルを発揮することが出来ます。介護の仕事では「ケアマネジメント」という言葉が有名ですが、把握、分析、計画、目標設定、計画作成、統制・統率、実行、評価といった一連の行為がマネジメントです。

つまり、リーダーシップは発揮すべきチームや職員の状況によって、そのスタイルを変化できるという点が大きな特徴です。自分が任されるチームについてしっかりと目を向け、効果的なリーダーシップを選択しましょう。

リーダーシップを身につけるには?

ここまでにも紹介した通り、唯一普遍的なリーダーシップはありません。書籍を読んだり、インターネットで調べたりて情報をインプットし、職場での実践に取り入れてみると良いでしょう。

また、リーダーシップを発揮する場面は、考えるだけではなく、チームや職員へのコミュニケーションを介して行われることがほとんどです。理論を学ぶだけでなく、コミュニケーションスキルについても合わせて学ぶとより効果的です。そのためにはリーダーシップに関する研修などを受け、理論と実践方法を合わせてを学ぶこともおすすめです。

まとめ

本記事では、介護の現場で参考になりそうな、様々なリーダーシップについて紹介しました。リーダーシップは経営者や管理職にだけ必要なものではなく、チームで業務を進めるうえで多くの職員に必要なスキルです。また難しい仕事はリーダーに任せるということではなく、チームの職員がどのように関わったら、リーダーを最大限活かせるチームになるのか、職員のフォロワーシップについても合わせて考えると、組織やチームはさらに成長に向かえるはずです。

  • ツクイグループ

    株式会社ツクイスタッフ

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