【2024年度改定対応】看取り介護加算とは?算定要件や単位数など詳しく解説
- 看取り介護加算とは
- 看取り介護加算の算定要件と加算内容
- 看取り介護加算のポイント
- 看取り介護加算の課題と対応策
- 看取り介護加算に関するよくある質問
- 看取り介護加算における現場スタッフの心構えとチーム連携
- まとめ
高齢化社会が進む中、介護施設や在宅での「看取りケア」の需要が増えています。2021年度の介護報酬改定では、看取り介護加算の算定要件や加算内容が見直され、より質の高い終末期ケアが求められるようになりました。
このコラムでは、看取り介護加算の概要から対象となる介護サービスや具体的な算定要件、算定のポイントについて詳しく解説します。さらに、現場での課題や対応策、スタッフの心構えとチーム連携の重要性にも触れ、利用者が尊厳を持って最期を迎えられるための介護の在り方について考えたいと思います。
介護職としての経験や日々の取り組みを踏まえ、質の高い看取りケアを実現するためにお役立てください。
看取り介護加算とは
看取り介護加算とは、回復の見込みがないと医師の判断を受けた要介護者に対して、質の高い看取りケアを実施する事業所に適用される加算です。この加算は、本人の意思を尊重した医療ケアの方針決定に対する支援を目的としており、要介護者とその家族の希望に寄り添った「尊厳ある最期」の実現を目指しています。
看取り介護加算の目的と背景
看取り介護加算の導入の背景には、高齢化社会が急速に進む中で、要介護者の最期を支える施設や在宅介護サービスが増加していることがあります。
これまで病院などの医療機関で行われることが多かった看取りですが、要介護者の生活の場である施設や在宅での看取りを希望する人が増えています。そのため、令和3年度の介護報酬改定で看取り介護加算が見直され、介護施設や訪問サービスでも「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことが必要とされ、算定要件や単位数の変更がされました。
対象となる介護サービスと施設
看取り介護加算は、以下のサービスで算定が可能です。
- 介護老人福祉施設(特養)、地域密着型介護老人福祉施設
- 特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護
- 認知症対応型共同生活介護
看取り介護加算の算定要件と加算内容
看取り介護加算を算定するには、基準を満たす必要があります。
看取り介護加算の算定要件と詳細
看取り介護加算は、その取り組みが、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿っている必要があります。その上で、質の高いケアの提供ができるように、サービス種別ごとに様々な算定要件が設けられています。
以下に算定要件の詳細を挙げます。
看取り介護加算(Ⅰ)の算定要件
<施設基準>
- 常勤の看護師を一名以上配置し 、当該施設の看護職員、又は病院等の看護職員との連携により24時間連絡できる体制を確保していること。
- 看取りに関する指針を定め、入所時に本人又は家族に対して内容を説明し、同意を得ていること。
- 看取りに関する話し合いの参加者として、生活相談員を明記すること。
- 看取りに関する職員研修を行っていること。
- 看取りの実施時に個室または静養室の利用が可能になるように配慮されること。
<入所者>
- 医師が医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断された者。
- 医師、看護職員、介護支援専門員、その他の職種の者により共同で作成した計画について、内容の説明を受け同意した者。
- 看取りに関する指針に基づき実施される介護についての説明を受け、同意した上で介護を受けている者。
看取り介護加算(Ⅱ)の算定要件
- (地域密着型)介護老人福祉施設
・加算(Ⅰ)の算定要件を満たしていること
・医師と施設の間で入所者の注意事項、病状等の情報共有、連絡方法、診察依頼について具体的に取り決めていること。
・複数名の医師の配置または協力病院の医師との連携により、24時間対応できる体制が確保できていること。 - (地域密着型)特定施設入居者生活介護
看取り期に夜勤または宿直で看護職員が配置されていること。 - 認知症対応型共同生活介護
看取り介護加算(Ⅱ)の算定はない。
看取り介護加算の単位数
2021年度の改定で看取り介護加算の加算期間の拡充が行われ、死亡日の45日前から加算の算定が可能になりました。また、特定施設入居者生活介護での看取り介護加算(Ⅱ)の算定要件では看護職員の夜勤又は宿直が必要となっており、介護老人福祉施設に比べて高い単位数となっています。具体的な単位数は以下の通りです。
(地域密着型)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
看取り介護加算(Ⅰ) | 看取り介護加算(Ⅱ) | |
---|---|---|
死亡日45日前~31日前 | 72単位/日 | 72単位/日 |
死亡日30日前~4日前 | 144単位/日 | 144単位/日 |
死亡日3日前~前日 | 680単位/日 | 780単位/日 |
死亡日当日 | 1280単位/日 | 1580単位/日 |
(地域密着型)特定施設入居者生活介護
看取り介護加算(Ⅰ) | 看取り介護加算(Ⅱ) | |
---|---|---|
死亡日45日前~31日前 | 72単位/日 | 572単位/日 |
死亡日30日前~4日前 | 144単位/日 | 644単位/日 |
死亡日3日前~前日 | 680単位/日 | 1180単位/日 |
死亡日当日 | 1280単位/日 | 1780単位/日 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
看取り介護加算(Ⅰ) | |
---|---|
死亡日45日前~31日前 | 72単位/日 |
死亡日30日前~4日前 | 144単位/日 |
死亡日3日前~前日 | 680単位/日 |
死亡日当日 | 1280単位/日 |
看取り介護加算のポイント
介護施設で看取り介護を実施する際には、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った取り組みが求められます。利用者や家族が安心して最期を迎えられるよう、以下の具体的なポイントを押さえたケアを提供することが重要です。
- アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実施
看取り介護では、利用者本人の意思や価値観を尊重するために、事前の話し合いが不可欠です。利用者が元気なうちに希望や価値観を確認し、記録する「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」を実施しておくことが有効です。この話し合いは一度で終わるものではなく、繰り返し行い、本人や家族の意思を共有することが大切です。 - 利用者の意思決定を尊重
利用者が可能な限り意思を表出できる環境を整えることが大切です。また、意思は状況に応じて変化する可能性があるため、定期的に確認し、柔軟に対応する姿勢が必要です。本人の希望を尊重し、尊厳ある看取り介護ができるようにしましょう。 - 医療・ケアの提供体制
看取り介護では、医師、看護師、介護職員が連携した多職種チームでのケアが重要です。看取り期におけるケアは、利用者の苦痛を緩和し、安心して過ごせる環境を提供することが中心となります。特に、医療処置や薬の使用については、利用者の状態や希望に基づいて慎重に判断します。 - 家族への支援
利用者だけでなく、家族への心理的サポートも欠かせません。家族が抱える不安や悲しみに寄り添い、相談や情報提供を行うことで、負担の軽減を図ります。また、利用者が亡くなった後も、家族へのフォローアップを行うことが望まれます。 - ケア方針の明確化
ケア内容や話し合いの記録を文書化し、施設内で共有することで、全職員が利用者の意思を理解し、同じ方針で対応することができます。また、医療処置や看取り方針については、利用者本人や家族の事前同意を得ておきます。 - 倫理的配慮
本人の希望を第一に考え、不必要な延命処置を避けることが求められます。また、利用者が最期まで人間らしく尊厳を持って生活できるよう配慮することが看取り介護の基本です。 - 職員への研修
職員が看取り介護についての正しい知識を持ち、適切な対応ができるよう、定期的に研修を実施します。緩和ケアやACPの基礎知識を学ぶだけでなく、職員自身のストレスケアにも目を向けた研修が必要です。
看取り介護の実践では、利用者本人の尊厳を守ると同時に、利用者の家族や職員にも寄り添うことが重要です。ガイドラインに基づいた適切なケアを提供することで、施設全体の信頼とケアの質が向上し、より良い終末期ケアの実現に繋がります。
看取り介護加算の課題と対応策
看取り介護を実施している現場では、体制の整備や人員の確保、スタッフのスキル向上など多くの課題が存在します。特に、スタッフの負担の軽減や家族とのコミュニケーションは重要な課題であり、さまざまな工夫や対応が必要となります。
看取り介護における課題
看取り介護の現場では、以下のような課題が生じることがあります。
- 人材の不足
24時間対応を実現するためには、看護職員や介護職員の確保が不可欠ですが、慢性的な人手不足の問題が顕在化しています。特に夜間帯の看取り介護では通常の業務に加えたケアも必要となり、人員を増やして対応することが望まれますが、プラスの職員の確保が難しいのが現状です。 - 職員の負担増
看取り介護は精神的にも大きな負担がかかる業務です。利用者の最期に立ち会うことで、職員も心理的なストレスを抱えることがあり、職場環境の改善や職員の精神面でのフォローが必要とされます。 - 家族とのコミュニケーションの難しさ
看取り介護では、家族の意向や感情にも配慮する必要があり、適切なコミュニケーションが欠かせません。特に急変時の対応や看取り後の手続きの説明など、あらゆる場面で家族に対する配慮が必要です。
課題に対応するための取り組みと事例
看取り介護を実施している施設では、看取りケアが円滑に実施できるように、これらの課題に対処するための工夫が行われているところがあります。以下にいくつかの取り組みと事例を紹介します。
- 人員確保のためのシフト工夫
人手不足の問題を軽減するため、夜勤の人員配置を見直し、看取り対応できる体制を工夫する施設もあります。また、夜間帯の看護師が不在の場合には、協力医療機関との連携により、迅速に医師に連絡できる体制を整え、夜勤スタッフが安心してケアが行える環境を整えています。 - 職員のメンタルケア
看取りケアに従事する職員に対する心理的なケアを実施する取り組みが行われています。メンタルヘルスに関する研修や面談の機会を設け、職員が負担を感じずに業務を続けられるような取り組みが進んでいます。 - 家族へのサポート強化
家族へのケアの一環として、事前に看取りケアの流れを説明し、不安を和らげるような対応を行う施設もあります。さらに、看取り後にグリーフケアを行い、家族への心理的サポートを行う体制を構築している事業所もあります。
看取り介護加算に関するよくある質問
入所の際に看取りに関する指針を説明し、施設での看取りの希望を確認しています。入所後に看取り介護の必要性が認められた場合、既に説明し同意を得ているとして良いですか?
看取りに関する指針の説明及び同意の有無に確認は、原則入所時に行う必要があります。ただし、入所者の意思に関わる同意の有無に関しては、入所時と変わりがないかを看取り介護の開始前に再度行う必要があります。
看取り介護行う際には、本人が多床室を希望した場合でも個室に移動しなければなりませんか?
看取り介護加算の算定要件では、利用者が個室への介護を希望する場合のために個室を確保しておく必要があるとされており、利用者が多床室を希望するのであれば、多床室においての看取り介護行い加算を算定することは問題ないとされています。
看取り介護加算における現場スタッフの心構えとチーム連携
看取り介護加算の算定において、ケアの質を高めるためには、現場のスタッフがどのような心構えで業務に臨むかが非常に重要です。看取り介護は、通常の介護業務と異なり、利用者の「最期の瞬間」を支えるという特別な役割を担います。そのため、介護職員や看護職員がその理解と覚悟を持ち、看取り介護に臨むことが求められます。
現場スタッフの心構え
看取り介護に従事するスタッフには、利用者や家族に寄り添う「共感」と「尊厳を守る姿勢」が求められます。最期の時期には、利用者も家族も複雑な感情を抱えるため、スタッフは「傾聴」と「受容」の姿勢で接することが大切です。
例えば、利用者が苦しみや不安を口にしたときには、スタッフが積極的にその思いを受け止める姿勢で向き合います。また、最期の時間を本人らしく穏やかに過ごせるように、照明や音楽、温かさなどの環境にも配慮すると、ご利用者と家族に安心感を与えられます。
チーム連携の重要性
看取り介護は、多職種が一丸となって取り組まなければなりません。医師や看護師、介護職員、ケアマネジャーなどが一つのチームとして情報を共有し、利用者の状態や家族の要望を適切に把握することが重要です。
特に、終末期には利用者の状態が変わりやすく、早急な対応が必要となります。そのため、定期的なカンファレンスの実施や、必要に応じた情報共有が重要であり、医療と介護のチームケアが、利用者の「尊厳ある最期」を支える基盤になります。
看取りケアにおけるセルフケア
看取り介護に従事するスタッフは、心身に大きな負担を抱えることがあります。最期に立ち会う経験はスタッフ自身にとっても感情的な影響を及ぼすため、適切なセルフケアが必要です。
事業所が提供するメンタル面へのサポートや研修制度を活用し、ストレスを緩和する工夫が求められます。看取りケアの経験を通じて得られる個人の成長もありますが、一方で、無理をせず自分をいたわることも大切です。
まとめ
介護に従事する者として、利用者の最期を支えることは非常に大切で責任の重い役割です。利用者とその家族の気持ちに寄り添い、安らかな最期を迎えられるような体制が今後ますます求められます。看取りケアにより、命の尊厳と向き合う経験を得ることは、職員自身の成長や人間性の向上にも繋がるでしょう。
看取り介護を適切に実施するためには、計画的かつ効果的研修の実施が欠かせません。
介護業界での研修サービスを10年以上展開するツクイスタッフでは、看取りケアの加算取得要件となっている、看取りケアに関する研修も行っております。研修は施設や事業所の目的に応じて「動画研修」「講師派遣型研修」「オンライン研修」の三つのスタイルから選択できます。
さらに、行政の提出書類も簡単に作成できる機能が備わっているため、現場の負担を最小限に抑えつつ、効率的に研修をすすめることが可能です。看取りケアの質を高め、ご利用者や家族にとって安心できる環境を整えるために、ぜひツクイスタッフの研修サービスをご活用ください。
詳しい研修内容や申し込み方法については、ツクイスタッフの公式サイトをご覧ください。