介護施設におけるクレーム・苦情とは?事例や対応策について解説

介護施設に寄せられるクレームの対応に困っている方も多いのではないでしょうか。介護現場において昔からクレームはありましたが、最近では解決の糸口が見つけ出せない程の困難なクレームが多く持ち込まれています。
理由の一つとして、介護保険制度が、ある程度国民生活の中に浸透し、介護サービス利用が、一種の商品として確立されたという点です。つまり、負担と給付をめぐって、権利であるといった考え方から、クレームが起こる土壌ができたということです。
さらに「2025年問題」です。介護施設を利用する高齢者のほとんどが戦後世代の高齢者という事態を迎えます。今後発生するクレームは、質・量ともに、現在とは比べものにならないほどの勢いとパワーをもつクレームということになりますので、介護施設としても対策が必要です。
ここでは、介護施設等でのクレーム対応事例を紹介し、また、クレームの種類に合わせた聴き方やテクニック・円滑なクレーム処理方法を解説しています。
介護施設におけるご家族からのクレームとは?
クレームとは何か
クレーム(claim)とは、商品やサービスに対する不満や問題を指摘することです。介護業界に限っていうと、利用者・家族が介護施設等に対して行う苦情や要求であり、サービスの質、約束された内容との違いなどが含まれます。同じような言葉には「苦情」というものもあり、本来は別の意味を持っていますが、現在ではほぼ同じ意味として使用されています。
一般的な社会のクレームは、主に「丁寧に対応してほしい」、「早く対応してほしい」といった顧客の欲求が満たされないことで起こります。「不快な感情を満たしてほしい」、「不便な部分を解消してほしい」という顧客の要求がクレームとして表れるのです。
クレームを受けたときには「文句を言われた」とネガティブに捉えがちですが、介護施設のサービスを向上させるきっかけと考え、一人の問題ではなく、事業所全体の問題として捉え、クレームから皆で学ぶ姿勢が重要となります。問題に対して迅速に対応できれば、利用者・家族の高い満足度に繋がる可能性もあります。
クレームの種類
クレームには色々な種類がありますが、苦情や要望を言う人の欲求や要求から内容を整理すると、以下のような4つに分類できます。
- サービス(品質)が足りない
- 費用が高すぎる
- 大切に優先的に扱ってほしい
- 損害を受けたから賠償してほしい
また、クレームや苦情のきっかけとなる事案には以下のような4種類があります。
- 利用者・ご家族が理解できていなかった
- 説明不足の為、誤解していた
- 意図的にトラブルに発展させた
- 事故や不可抗力
介護の仕事では、利用者に対して介護、対応などのサービスを提供します。それぞれ一生懸命に相手に向き合っても、相手から見たら不十分・不満足という点があるかもしれません。
クレームや苦情は、得られていない欲求を満たすために起こしている行動であるという側面を考えて対応することが大切です。良いクレーム対応は、施設や病院のイメージを逆にアップさせる要因にもなりえるのです。
介護施設でクレームが発生する背景
介護施設でクレームが発生する背景には、いくつかの要因があります。日頃から苦情が発生しやすい場面を想定し、十分な予防措置を講じることが重要です。
コミュニケーション不足
職員と利用者やその家族との間での情報共有が不十分な場合、誤解や不信感が生まれやすくなります。介護サービスの提供が適切に行われていたとしても、説明が不十分だったり、また、事業者としては十分説明をしたつもりでも、利用者・家族に十分理解されないまま介護サービスが行われたために苦情となる場合もあります。口頭での説明だけでなく、 書面による説明を併せて行うなど、利用者・家族が理解しやすい方法を工夫し、同意を得ることが重要です。
サービスの質や個別対応の不足
提供されるサービスが期待に応えられない場合や、利用者それぞれのニーズに応じた個別対応ができていない場合にクレームが発生します。
利用者・家族の意向や要望の把握が不足していたために、 適切な介護サービスが行われていない事が原因です。サービス担当者会議や日頃からの聞き取りにより、利用者・家族の要望の的確な把握に努めるとともに、特に利用者の状態が不安定で、その変化が予想されるときには、変化に応じた要望の把握に努め、把握した要望については、必ず記録に残し、関係者間で情報共有することが重要です。
人手不足
介護職員の不足により、十分なケアが提供できないことがあり、その結果、利用者やその家族から不満が出ることがあります。
環境の問題
施設の設備や環境が不適切である場合(例えば、バリアフリーが不十分など)、利用者やその家族からのクレームにつながります。
これらの要因を理解し、アセスメントの適正及び再発予防策について施設として検討し、研修の充実、緊急時の対応の見直し、利用者・家族への丁寧な説明、職員間の情報の共有に努めることが、クレームの発生を減らすために重要です。
これらの要因を理解し、アセスメントの適正及び再発予防策について施設として検討し、研修の充実、緊急時の対応の見直し、利用者・家族への丁寧な説明、職員間の情報の共有に努めることが、クレームの発生を減らすために重要です。
よくあるクレーム事例と対応策
介護現場でのクレームには、どのようなものがあるのでしょうか。東京都国民健康保険団体連合会の「令和4年版 東京都における介護サービスの苦情相談白書」 (令和3年度実績)の中から、実際に起きた事例とその対応について紹介します。
介護職員の対応や接遇に対するクレーム
クレーム内容 | 介護事業所の対応 |
家族が面会に行った際、女性介護職員の爪が長く伸びてマニキュアをしているのが気になった。 利用者の太ももを見るとみみず腫れがあった。職員が引っかいた訳ではないと思うが、長い爪をして介護していると疑われても仕方がないと施設の責任者に伝えてほしい。(特養、ご家族) | 保険者から施設の生活相談員に報告した。施設では調査をすると同時に、就業中の身だしなみについて再度確認した。 |
身だしなみに関するクレームは多く聞かれ、上記事例以外にも髪色や髪形、ピアスなどのアクセサリーといった様々なケースがあります。服務規程などを参考に、当該職員にはしっかりと理由を説明して、おしゃれと身だしなみは違うと理解、納得してもらうことが大事です。このような事例のような身だしなみの改善は、職員が顧客の立場に置き換えた考えが理解出来れば、速やかな改善は可能です。
上記の事例では介助中における事故防止の観点からも手順書等における改善も必要であること、また当該職員が周囲に今後も誤解を受ける可能性が高いために、それを避け、守る目的があることを伝えると素直に受け入れられやすいでしょう。
受傷、紛失、破損などの損害に関するクレーム
クレーム内容 | 介護事業所の対応 |
施設で複数回転倒している。いつ、どのように転倒したのか施設側に説明を求めたが「わからない」との回答だった。 納得がいかず文書での説明を求めたが、その内容も納得できるものではなかった。(老健、ご家族) | 保険者から施設に状況を確認し、ご家族へ再度丁寧に説明するように依頼した。 |
この事例では入居者が転倒してしまった事実よりも、その後の説明や対応に問題があるといえます。たとえば誰も見ていない状況で転倒して状況が不明なのであれば、なぜ誰も見ていなかったのかを含めて丁寧な説明が必要です。また再アセスメントを行い再発防止のための手立てもケアプランに位置付けることを含めて説明する必要があるでしょう。
このような事例は対応を誤ると、その後の展開が難しくなりがちです。施設・事業所側に非がある場合は素直に認め、誠意をもって謝罪しつつ対応することが望ましいでしょう。
説明不足や誤解によるクレーム
クレーム内容 | 介護事業所の対応 |
施設の申し込みをしており、健康診断書の提出を求められ、相談者は近日中に入所ができると思っていた。 しかし入所検討会議の結果、現在は受け入れが困難な状況であるとの回答だった。納得できない。(特養、ご家族) | 入所の候補者として相談者に声をかけたが、あくまでも候補者であり、入所検討会議の結果によって入所の可否が決まること、空きがない場合にはすぐに入所できない可能性があることを事前に説明していたとのことだった。 その後、施設側から相談者へ説明が不十分なため不快な思いをさせたことについて謝罪を行った。あわせて施設の入所検討のプロセスを説明し、条件が合えば今後も入所の声かけを継続すると伝えた。 |
サービス内容や料金に対するクレーム
クレーム内容 | 介護事業所の対応 |
今月の利用料を引き落とされた後に請求書が届いた。本来は請求書が先に届くべきだと事業所に直接指摘したが、大事ととらえていないようだ。 このような対応で問題はないのか。家族から言っても真剣に取り合ってもらえないので、行政から是正を促してほしい。(通所介護、ご家族) | 保険者から事業所管理者に連絡したところ、早急に謝罪して対応するとの回答があった。 |
その他にも、以下のような事例が報告されています。
- 退所の時期や退所に向けた段取りについての苦情
- 介護中の出来事や、生活に必要な物品や費用についての認識の違いから発生した苦情
- 余命や病気の詳細について本人に知らせないという約束だったが話してしまったことについての苦情
- 介護方法や対応方法を取り決めたが、スタッフに十分に共有されていなかったことによる苦情
- 施設の医師や看護師が医療的な面や治療などでどこまで対応できるかの認識の違いによる不満
- 家族に連絡を入れる頻度についての苦情
- 軽度の事故や介護上の難しさなどについて相談や報告が不足していたことについての苦情
- 職員の声掛けや、利用者の物品、衣類などに関する要望
クレーム対応の5つの実践テクニック
介護は対人サービスなので、様々なクレームが起きやすい業界ともいえます。クレームが発生した際の一次対応を怠ると、さらに相手を不快にさせることにつながるため注意が必要です。以下のような対応は、クレームをさらに悪化させますので、注意が必要です。
- 笑ってごまかす
- 馴れ馴れしい態度
- 「はいはい」と軽い相槌
- 話をさえぎる
- 業務しながら対応
- たらいまわしにする
- 人のせいにする
- 言い訳をする
- 相手を長時間待たせる
クレーム・苦情を受けた時の対応は、以下のような流れで行います。
共感・謝罪
原因に関わらず、相手の心情や起こっている状況に共感しましょう。相手が何に対して怒っているのか、どうしてほしいのかを含めて丁寧に経緯と内容を聞き取るようにしましょう。相手が興奮状態のときは、共感の姿勢を示しながら、感情が静まってから内容を整理していくとよいでしょう。
事実確認ができていないことには謝罪の必要はありませんが、サービス利用時に不快にさせたことの謝罪は必要です。
例)「ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」「すぐに不満の気持ちに気付けずに、お話をお聞きするのが遅くなって申し訳ありませんでした」
さらに、クレームを頂いたことによって、施設・事業所のサービスをより向上させることができるという感謝の気持ちも伝えられると、相手の感情も良い方向に動きやすいです。
傾聴
クレームは、何らかの欲求が相手にあり、期待に満たなかったその欲求を叶えるために行動に出ている状態です。苦情・クレームを伝えてくる人は、とにかく「伝えたい」「全部知ってほしい」と思っているものです。事実を把握し正しくジャッジするという面からも、傾聴に徹して相手の言い分をすべて受け取ることはとても大切なテクニックといえるでしょう。
介護の仕事の基本的な姿勢として傾聴が重要視されているとおり、クレーム対応や苦情の聞き取りでも最後まで話をよく聞くことが最も大切な姿勢です。途中で話を遮らずに相手が「話し切った、言いたいことはすべて伝えた」と思える程度にしっかりと聞き取りを行いましょう。 なお、この最初の聞き取りではできるだけ初期対応者が対応し、すぐに責任者が出て行かないこともテクニック的には大切です。すぐに最終責任者が対応してしまうと、対応がうまくいかなかった場合にどのように落とし所を見つけていくかの選択肢が狭まるためです。
確認
相手の話について一通り傾聴し、相手の興奮や感情が静まったところで、話の内容を整理していきます。それに合わせ、自分に答えられる範囲で自分たちの立場、自分たちの事情などを説明し、合理的に相手の同意や納得感を確かめていきましょう。
例)「すぐにお調べ致しますので、少々お待ちいただけますか」「恐れ入りますが、私では判断いたしかねますので、後ほど担当の者から改めてご連絡致します」
介護の分野では、関係性が崩れてしまっている場合や、悪質な場合を除けば、施設側の立場や事情について伝えることで難しさなどに理解を示そうとしてくださる方もいます。同情を誘うわけではなく、今の状態について説明した上で、相手の要望にもできるだけ答えていくという姿勢を示すことで、クレームや苦情の落とし所を考えやすくなり、まとめやすくなるでしょう。
提案
クレームの内容を把握したならば、苦情対応の責任者を中心に解決策や代替案などを検討して、時間を空けずに示す必要があります。重要事項説明書などを基に説明を行い、対応の必要があれば可能な限り、要望に沿う姿勢を見せるべきでしょう。
ただし必要以上の要求に対しては検討が必要です。もしも上司や担当者に対応を変わるように要望があった場合は、速やかに対応できるように事前の報告や相談が重要になります。
また、行政に対して、苦情対応に関する通報をされる可能性も踏まえ、内容によってはあらかじめ行政に報告、連絡、相談するとよいでしょう。簡単に解決できると思ったクレームも話がこじれる場合もありますので、いざというときにフォロー頂くためにも速やかな報告は必要です。
感謝
クレームは業務改善やサービス品質向上のきっかけにもなります。ほとんどの場合苦情やクレームを言ってくる方は、要望を伝えれば施設は応えてくれると考え、アドバイスや指導という意味合いも込めている場合が多いです。
得るものが少しでもあったら「業務改善やサービス品質向上の気付きのきっかけを与えてくださりありがとうございます」というニュアンスのことを伝えます。 対応した履歴はきちんと経過記録に記載し、担当者や責任者から職員に周知徹底するようにしましょう。そして苦情報告書を作成し、職場内で会議を行い、再発防止策を講じましょう。
カスハラとクレームの違い
「カスタマーハラスメント」ってお聞きになったことはありますか?いわゆるカスハラです。カスタマーハラスメントとは、顧客という立場の優位性を盾に、悪質な要求や理不尽なクレームを行う行為のこと。介護現場でも実は多く、利用者や家族からのセクハラやパワハラも含まれます。
令和3年度の介護報酬改定で、全ての介護サービスにおいてハラスメント対策の強化が求められました。その背景にあるのは職員間のハラスメントよりもカスタマーハラスメントが主な要因です。
カスハラの法的定義はありません。厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」においても、以下のように記載されています。
企業や業界により、顧客等への対応方法・基準が異なることが想定されるため、カスタマーハラスメントを明確に定義することはできませんが、企業へのヒアリング調査等の結果、企業の現場においては以下のようなものがカスタマーハラスメントであると考えられています。 顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの |
クレームは利用者・家族からの要求や改善提案を指します。正当なクレームは成長のチャンスになるため、適切な対応をすべきです。一方、カスハラは嫌がらせなどの不当な行為であり、正当性はありません。
介護現場でのカスタマーハラスメント
介護現場では介護職員に対する、ご利用者・ご家族によるカスタマーハラスメントが深刻化しています。そしてそれらが社会問題にもなってきました。カスタマーハラスメントとして考えられる主なものは、①身体的暴力、②精神的暴力、③セクシャルハラスメントです。
身体的暴力
介護職員に対する身体的暴力とは、利用者やその家族からの攻撃や暴力行為を指します。例えば、叩く、蹴る、殴る、手を引っ掻く、職員の手を払いのける、物を投げつけるなどといった身体的な攻撃が考えられます。
精神的暴力
これは特に、ご家族から受ける場合が多いと考えられます。介護職員に対する家族からの精神的暴力は、言葉や態度、行動によって介護職員が心理的な苦痛や傷つきを受けることを指します。例えば、罵倒や威嚇、脅迫、無視、理不尽な要求を繰り返す、威圧的な態度をとる、命令の乱用、批判的な言動をとる、恥辱的な言動、長時間にわたり必要以上に何度も同じ内容で激しく叱責する、謝罪のため土下座を要求するなど、さまざまな形態があります。自宅で認知症や精神疾患を抱える高齢者を介護する家族が、ストレスや感情的な負担に直面し、それを介護職員に向けて発散することによって引き起こされることもあります。
セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)は、性別や性的指向に基づいて他人を不快にさせるような言動や行為のことを指します。セクハラは個人の尊厳や人格を侵害するものであり、介護職員に対する精神的な負担やストレスを引き起こす可能性があり、仕事に影響を及ぼすことがあります。このような状況が発生した場合、まずは自身の安全を最優先に考え、上司や労働環境に関する専門家へ相談することが重要です。セクハラの例は以下の通りです。
- 不適切な言葉
利用者やその家族から、性的な冗談や不適切な言葉が使われることがあります。また、入浴介助中等に性的な話をされるなどもセクハラです。 - 身体的接触
利用者やその家族から、手や腕を触られる、いきなり抱きしめられるなど、不適切な身体的接触がある場合があります。これは、明らかにプライバシーや人格を侵害するような行為です。 - 不適切な要求や提案
利用者やその家族から、職務外の性的関係や嫌がらせに関連する要求や提案がある場合があります。これには、セクシャルなサービスを要求する、関係を持つことを迫るなどが含まれます。
カスタマーハラスメントの発生要因
令和3年度の介護報酬改定で、指定居宅介護サービス等の運営基準が改定され、事業者は職場におけるセクハラやパワハラを防止するための必要な措置を講じることが義務付けられました。特に力スタマーハラスメント対策については、他の新項目とは違い、3年間の経過措置は設けられていません。つまり事業継続のため、すぐに取り掛かる必要があります。
介護職員に対する利用者家族からのカスタマーハラスメントの発生要因は、以下のような要素が考えられます。
感情的なストレス
利用者家族は、自身の家族の健康や生活に深く関わる介護サービスを提供している職員に対して、感情的なストレスを抱えていることがあります。これによって、怒りや焦り、不安などの感情が高まり、ハラスメントの要因になることがあります。
期待の違い
利用者家族が介護サービスに対して持つ期待と、実際のサービス提供に差がある場合も、ハラスメントの要因となり得ます。介護現場では、限られた時間や人員で多くの業務をこなさなければならないことがしばしばあります。そのため、介護職員が期待に応えられず、利用者家族からのイライラや不満が生じることがあります。
コミュニケーションの問題
利用者家族と介護職員の間で、意思疎通が困難な場合もあります。特に、言葉の障害や認知症の進行により、コミュニケーションが円滑に行えないことがあります。このような場合、利用者家族は介護職員に対してイライラや不満を示すことがあります。
これらの要因を踏まえて、介護施設や組織は、利用者家族とのコミュニケーションを強化し、期待や不満を共有する機会を提供することが重要です。また、利用者家族への教育やサポートも必要です。さらに、介護職員に対するカウンセリングやストレス管理の支援を行い、彼らが適切なケアを提供するための環境を整えることも重要です。
介護事業所で行うカスハラ対策
厚労省の資料「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」に、介護事業所として介護職員に対して取り組むべきこととして、次のように挙げられています。
介護事業所としての基本方針の周知
「ハラスメントは許さない」という、基本的な考え方やその対応について決定するとともに、それに基づいた取組等を行う。利用者・家族に対し、理解を求めておきたい事項、ご協力いただきたい事項を周知する。
マニュアル等の作成と職員への研修の実施
ハラスメントを防止するための対応マニュアルの作成や、発生したハラスメントの対処方法のルールの作成・などの取り組みを図っていく。職員研修では「契約書」や「重要事項説明書」の利用者への説明方法や、介護保険制度や契約の内容を超えたサービスは提供できないことの説明方法も学ぶ必要がある。介護サービスの範囲や目的などについて、契約締結時の説明や、利用者やその家族等の理解が不十分だったことが原因となり、苦情に発展し、利用者・家族とのトラブルにつながる恐れがあります。
相談窓口の設置、相談しやすい職場環境づくり
事業所として、職員の相談を受け付ける相談窓口の設置等体制を整え、職員に周知
しましょう。ハラスメントが発生した場合、職員の安全を第一に、即座に対応をすることが必要です。管理者等はハラスメントの状況を確認し、ハラスメントを受けた職員への対応、行為者への対応等を指示します。必要に応じて外部の関係者、例えば、ケアマネジャーや地域包括支援センター、医師、行政、警察などに連絡・通報します。
できるだけ早くハラスメントマニュアルを作成し、研修の設定などハラスメント対策を講じていきましょう。ハラスメント対策は、介護保険法改正に伴い義務づけられたため「知らなかった…」では済まされません。これを機に、もう一度確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ~クレーム対応力の向上~
クレーム事例を参考に介護現場の業務改善を!
多くの人は、介護サービスに対して感じた不満をわざわざサービス提供者に伝えることはせず、黙って他の施設や事業所に切り替えてしまうことが多いです。これは「サイレントクレーム」と呼ばれ、サービスの改善点が提供者に伝わらず、顧客が不満を抱えたままになってしまうため解決につながりにくいです。
現在では、誰でも簡単にSNSや口コミサイトに不満を書き記すことができ、ネット上に書き込まれた批判は何年も残り続ける場合もあり、それを見た人にサイレントクレームが伝播する可能性もあるので、一つの不満からその後の施設・事業所にとって非常に大きな損失となってしまいます。そのためクレームが発生した際には、あえて声を上げて教えていただいたことで、介護サービス事業者の課題や問題点に気付けたと、業務改善に結びつけていくことが、今後の前向きな成長につながります。職員にもクレームをネガティブでなく、ポジティブに伝えるようにしましょう。
苦情対応マニュアルを整備しましょう
介護の仕事でのクレーム対策をマニュアル化することは、迅速かつ適切な対応を可能にし、利用者やその家族の信頼回復に繋がります。マニュアル化により、スタッフ間で対応が統一され、問題解決の効率が向上します。また、クレーム対策のマニュアルを通じて、施設全体のサービス品質の向上や再発防止策の確立が促されることにも繋がります。
また、介護保険サービスの事業所には、運営基準上「利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。」という法律上の苦情窓口の設定義務があります。
この苦情相談窓口は、事業所の中で苦情対応責任者を選任することや、区市町村の窓口、国保連合会や保険組合などの保険者に関わる窓口などを、重要事項説明書などで利用者や家族に説明する必要があります。
「苦情対応マニュアル」には以下のような内容が含まれます。
- 苦情の定義
- 苦情解決の目的
- 基本的な心構え
- 苦情解決体制
苦情解決責任者:施設長
苦情受付担当者:生活相談員
第三者委員 - 苦情解決の手順
関係者への周知
苦情の受付
苦情やクレームの内容を的確に伝達していくために、施設ごとに定めている苦情対応マニュアルや、クレーム対応記録、利用者やご家族からの声を取り入れた例などを、誰もがわかるように共有することが大切です。
また、介護施設での「接遇マナー」等の研修は、利用者の満足度向上や信頼関係構築に不可欠です。スタッフは適切なコミュニケーション能力や問題解決スキルを学び、自信を持って対処できるようになります。結果として施設の信頼性が向上し、職場環境も改善されるため、定期的な研修は重要です。
介護業界での研修サービスを10年以上展開するツクイスタッフでは、「苦情・クレーム対応、ハラスメントに関する研修」も行っております。研修は施設や事業所の目的に応じて「動画研修」「講師派遣型研修」「オンライン研修」の三つのスタイルから選択できます。
さらに、行政の提出書類も簡単に作成できる機能が備わっているため、現場の負担を最小限に抑えつつ、効率的に研修をすすめることが可能です。ご利用者や家族にとって安心できる環境を整えるためにも、ぜひツクイスタッフの研修サービスをご活用ください。
詳しい研修内容や申し込み方法については、ツクイスタッフの公式サイトをご覧ください。
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