デイサービスの送迎研修で使える、送迎マニュアルと交通事故対応

介護ペディア掲載日: 2025.10.23(更新日: 2025.10.23)

デイサービスやデイケアにとって、送迎業務は利用者の皆様にサービスを届けるための生命線です。しかし、送迎中は事故や車両トラブル、不測の事態など、様々なリスクが発生しやすいものです。

送迎を担当する職員は、ご高齢の方の命を預かっているという重大な責任を自覚し、定められたマニュアルを厳守、同時に研修で学びを深めることが求められます。今回用意させていただいた内容をもとに、自施設のマニュアルを作成いただければと思います。

1. 送迎業務の基本:徹底事項と禁止事項

🔹 送迎時の徹底事項

  1. 高齢者への配慮:急な動きによるケガ防止のため、急発進、急停止、大きく重心が移動する速度域でのカーブは避ける。
  2. 安全最優先の運転:到着時間よりも安全を意識した運転を心がける。
  3. 基本義務:後部座席もシートベルトを必ず着用。車いすの固定も確実に。細い道でのすれ違いは必ず止まって待機する。
  4. 体調管理:体調不良や服薬により運転に不安がある場合は、必ず上長に報告・相談し、運転を代わってもらうなどの対応をとる。

🚫 送迎時の禁止事項

  1. 飲酒:前日夜遅くまでの飲酒を控え、毎朝のアルコールチェックを欠かさず行い、基準値(0.15mg/L)超えた場合は運転不可。
  2. 喫煙:休憩時間(喫煙所のみ)以外の業務時間中は禁止。
  3. 運転中の携帯・スマホ使用:緊急以外は使用禁止。施設・利用者に電話をかける際は必ず安全な場所に停車してから行う。
  4. 業務以外での送迎車の使用:私的な使用は原則禁止。例外については上長の承認を得ること。
  5. 送迎範囲外での立ち寄り:送迎範囲は「自宅から施設まで」。送迎途中の寄り道は丁寧にお断りする。
  6. 車両の傷・不具合・異変の未報告:小さな接触事故や車両の不具合も、重大事故につながる可能性があるため必ず報告する。

2. 送迎前の確実な準備と車両点検

出発前の準備と車両チェックは、事故を未然に防ぐための重要なステップです。

項目確認内容
事前確認アルコールチェック、送迎表の確認(送迎時間・順路)、初めての利用者宅の地図確認。
携行品運転免許証、送迎表、運行日誌、鍵、ボールペン、携帯電話、必要に応じて踏み台や車椅子。
車両チェックガソリン残量、タイヤの空気圧、ブレーキランプ、破損部分、車内の忘れ物・ゴミ・車椅子の乗りっぱなしがないか。

3. 安全な乗降介助の手順とマナー

利用者の身体状況に合わせた適切な介助と、快適な移動のための配慮が求められます。

介助の種類ポイント
乗車(歩行)良い方の足(健側)から乗車を促す。必要に応じて踏み台を使用。
降車(歩行)弱い方の足(患側)から降車を促す。必要に応じて踏み台を使用。
車椅子リフト使用時は車椅子を確実に固定する(最重要)。姿勢が不安定な方にはクッション等で補助し、補助員も検討する。
マナー明るく爽やかな挨拶を心がける。体調や服薬、鍵の施錠など、必要な事項を乗車前に確認する。
車内環境冬場や夏場は、事前に冷暖房をつけ、快適に乗っていただけるよう配慮する。
情報共有送迎時の利用者との会話や気づきは、必ず他のスタッフに引き継ぐ。

4. 中停車・待機場所のルール徹底

安全かつスムーズな送迎のため、駐停車・待機場所は利用者・ご家族と事前に打ち合わせを行います。

  • 安全と配慮:待機場所は、安全面に配慮し、駐車場や歩行者の邪魔にならない場所を選ぶ。
  • 法令遵守:駐車禁止区域や駐停車禁止区域では絶対に待機しない。特に、交差点や横断歩道から5m以内、バス停から10m以内は駐停車禁止。

5. 万が一の際の対応(事故発生時)

人命を最優先に行動し、勝手な判断で事を進めないことが重要です。

  1. ドライブレコーダー停止:容量不足で事故直後の映像が消えるのを防ぐため、すぐに録画を止める。
  2. 負傷者の確認:怪我人がいる場合は、すぐに救急車を要請する。
  3. 施設へ連絡:上司の指示に従う。
  4. 警察へ連絡:他の車両等との接触事故の場合は必ず警察を呼び、当事者同士での処理は絶対に行わない。
  5. 情報確認:相手方の氏名、住所、勤務先、保険会社を確認する。

事故直後に避けるべき行動

・現場を離れること
人身事故の場合、「軽傷だから」と判断して現場を離れるとひき逃げとみなされることがあります。
どんな軽微な事故でも、必ず警察へ連絡しましょう。

・当事者間でその場解決をしないこと
必ず保険会社を通じて対応。どのような場合でも、施設へ連絡し上司の指示を仰ぐこと。

事故後の対応

事故後は、次の8項目を順に確認・実施します。

  1. 負傷者の救護
  2. 危険防止措置(車を安全な場所へ移動するなど)
  3. 救急車・警察への連絡
  4. 事業所への連絡・報告(状況・怪我・車両状態など)
  5. 相手情報の確認(氏名・住所・電話番号・車種・ナンバー)
  6. 連絡先の交換(施設の連絡先を相手に渡す)
  7. 損傷箇所の撮影(車両や周囲の損傷を写真で残す)
  8. 事故報告書の作成と提出

停車中の車・物への接触事故の対応

万が一、停車中の車や壁などに接触してしまった場合も、必ず警察へ届け出ましょう。
そのうえで以下を実施します。

  1. 所有者情報の確認(氏名・住所・電話番号など)
  2. 連絡先の交換
  3. 事業所への連絡
  4. 損傷箇所の撮影
  5. 事故報告書の作成と提出

6. 運行を支える「日常的な点検」の義務

道路運送車両法に基づき、送迎車は日常的に点検することが義務付けられています。日頃から以下の15項目を目視等で確認し、安全な運行に努めましょう。

部位点検項目(計15項目)
エンジンルーム (5項目)ブレーキ液、冷却水、エンジンオイル、バッテリー液、ウィンドウウォッシャー液の量。
車の周り (4項目)ランプ類の点灯・点滅、亀裂・損傷、タイヤの空気圧、タイヤの溝の深さ。
運転席 (6項目)エンジンのかかり具合、ウォッシャー液の噴射状態、ワイパーの拭き取り能力、ブレーキの踏みしろと利き具合、駐車ブレーキの引きしろ、エンジンの低速・加速状態。

まとめ

送迎中の重大事故は近年増加しており、人命に関わる業務であることを再認識しなければなりません。このマニュアルを活用し、職員への周知徹底と定期的な研修を行うことで、安全意識を高め、質の高い介護サービスを提供していきましょう。

  • ツクイグループ

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