介護業務効率化の重要性と具体的手法を解説!成功事例や研修の活用法も紹介

スキルアップ掲載日: 2025.06.03(更新日: 2025.06.03)
タブレットを使用している女性介護職

介護現場において業務の効率化は、介護スタッフの負担軽減やサービス品質の向上に欠かせません。本コラムでは、介護業務効率化の重要性と具体的手法、成功事例、そして業務改善に向けた研修の活用法について詳しく解説します。

介護業務効率化の重要性と背景

介護現場では日々多くの業務が発生し、スタッフの負担が大きくなりがちです。特に近年は社会全体の高齢化が進み、介護サービスの需要が急増しています。

高齢化社会における介護の需要増加

日本では高齢化が進んでおり、要介護状態にある高齢者も増えていることから、介護サービスの需要は、年々増大しています。また、介護事業の運営に必要とされる記録や研修等も増加傾向にあります。

こうした状況に対応するためには、現場の業務を見直し、より効率的にサービスを提供できる体制づくりが必要です。業務の効率化により、基準の遵守だけでなく、限られた人材でより多くの高齢者に質の高い介護サービスを提供することが可能になります。

人材不足がもたらす影響

介護業界では慢性的な人材不足が深刻な問題となっています。人材不足は、介護スタッフの負担を増加させ、サービスの質を低下させる可能性があります。スタッフ一人ひとりの負担が増えることで、業務の質や職場の雰囲気にも影響が出かねません。そのため、スタッフの業務量を適正にできるよう業務効率化を図ることが求められます。

特に調節的なケア以外の業務量を軽減することで、より多くの時間を利用者のケアに充てることができます。これにより、介護サービスの質を維持しながら、スタッフの働きやすさも向上すれば、人員不足の解消にもつながると考えられます。

介護業務効率化の具体的手法

実際に介護業務を効率化するにはどのような方法で行っていけば良いのでしょうか。ここでは、現場で取り入れやすく、効果が期待できる具体的な手法をご紹介します。

業務プロセスの見直し

まず取り組みたいのが、日々の業務の流れを見直すことです。無意識のうちに行っている非効率な作業や、重複している手順を洗い出すことで、業務全体のスリム化が図れます。

これまでやってきた「当たり前」なことが、実は無駄や非効率なことが多かったというケースはよく耳にします。まずは、その業務は本当に必要か、他にもっと効率的な方法はないかという視点で業務プロセスを見直し、無駄を排除することで効率化を図りましょう。

例えば、業務の流れを整理し、必要最低限の手順を明確にすることで、業務のスムーズな進行が可能となります。これにより、スタッフの負担が軽減され、より多くの時間を利用者のケアに充てることができるようになります。

ICTの活用による業務改善

テクノロジーの進化により、介護現場でもICT(情報通信技術)の導入が進んでいます。記録の電子化や情報共有ツールの活用は、業務のスピードと正確性を飛躍的に向上させる鍵となります。

ICT(情報通信技術)の導入により、業務の効率化は大きく進みます。例えば、介護記録の電子化やコミュニケーションツールの活用により、情報共有を迅速かつ正確に行うことが可能になります。また、音声入力やAIを活用した会議録の作成などでは、時間のかかっていた業務を劇的に時間短縮できる効果があります。

業務マニュアルの整備

サービスの質を安定させるためには、誰が担当しても同じように対応できる「標準化」が重要です。そのために欠かせないのが、業務マニュアルの整備です。日々の業務に沿ったマニュアルは新人教育にも役立ち、属人化の解消や業務の標準化が図れます。これまで、人から人に伝えていた業務をマニュアルに従って実施することで、質が一定に保たれ、効率的な業務遂行が可能となります。

また、正しい業務の方法がマニュアル化されていることで、わからないところを自分で確認することができるようになります。新人教育で、しばしば問題になる、「人によって言っていることが違う」というようなことがなくなり、新人スタッフでも、スムーズに業務を習得できる効果も期待できます。

業務効率化を実施するメリット

介護現場での業務効率化は、単なる「作業の時短」をすることだけではありません。人手不足や業務の属人化といった課題を解消し、スタッフの働きやすさやサービスの質を高めるために重要な取り組みであるといえます。介護現場での業務効率化のメリットをまとめました。

  • 介護サービスの需要増加への対応
    超高齢社会における介護の需要増加に対応するため、限られた人材でより多くの高齢者に質の高い介護サービスを提供することが可能になります。
  • 人材不足の解消
    業務効率化により、スタッフの負担を軽減し、より多くの時間を利用者のケアに充てることができます。これにより、介護サービスの質を維持しながら、スタッフの働きやすさも向上し、人材の定着につながります。
  • サービス品質の向上
    効率的な業務プロセスを確立することで、スタッフは利用者に対してより丁寧で質の高いケアを提供することができます。また、業務の標準化により、サービスの質が一定に保たれるため、利用者の満足度も向上します。
  • コスト削減
    無駄な作業や重複した業務を排除することで、コスト削減が可能となります。例えば、業務効率化による残業時間の減少による人件費の削減、ICTの導入により、紙ベースの記録を電子化することで、紙やインク代などのコストを削減できます。
  • スタッフのモチベーション向上
    業務効率化により、スタッフの負担が軽減されることで、働きやすい環境が整います。これにより、スタッフのモチベーションが向上し、業務に対する意欲が高まります。業務に対する意欲が高まることでより質の高いサービスの提供も可能になります。

業務効率化のためのステップ

業務効率化を成功させるためには、やみくもに取り組むのではなく、段階的に進めることが大切です。現場の課題を正しく把握し、改善策を計画的に実行しながら、効果を検証していくようにしましょう。ここでは、介護現場で業務効率化を進めるための基本的なステップをご紹介します。

現状分析と課題の特定

まず、現状の業務プロセスを分析し、課題を特定します。どの部分が非効率であるかを明確にすることで、改善策を立てることが容易になります。例えば、重複している業務はないか、手間がかかっている、無駄ではないかと考えられる課題を洗い出していきます。

改善策の立案と実行

次に、特定した課題に対する改善策を立案し、実践していきます。改善策は具体的かつ実行可能なものであることが重要です。例えば、重複している部分はまとめ、手間がかかっているものはICTツールを導入するなど、具体的な手法を検討し取り入れます。

効果測定とフィードバック

改善策を実施したら、その効果を検証し、フィードバックを行います。効果が確認できた場合は、改善策を継続し、さらに効率化を図ります。効果測定の方法として、例えば業務の進行状況を定期的にチェックすることで、以前のやり方と比べてどれくらい時間の短縮になっているか、費用が削減できたかなどを調査します。また、必要に応じて実施した対策に修正を加え、より効果的な改善策にブラッシュアップしていきましょう。

介護業務効率化の成功事例

業務効率化の必要性は理解していても、「実際にどう取り組めばよいのか」「本当に効果があるのか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。そこで参考になるのが、すでに効率化に成功している介護事業所の事例です。ここでは、ICTの導入や業務マニュアルの整備など、具体的な取り組みをした事業所の成果をご紹介します。

業務効率化の成功事例

事例①:ICTツール導入による記録業務の効率化(特別養護老人ホーム)

ある特別養護老人ホームでは、紙ベースの介護記録をタブレット端末に切り替えることで、記録作業の時間を大幅に短縮できた。

スタッフは利用者のそばでリアルタイムに記録を入力できるようになり、転記作業が不要に。さらに、音声入力機能を活用することで、記録時間が従来の約半分に削減された。

効果:記録業務の時間が1日あたり約1.5時間削減・情報共有のスピードが向上し、申し送りミス(伝え漏れや伝え間違い)が減少

事例②:クラウド型介護記録システムによる記録の効率化(訪問介護)

訪問介護の支援記録をスマートフォンからの記録に切り替え、音声入力も併用することで記録にかかる時間を短縮させることができた。導入当初は現場のヘルパーから反対意見が出たが、操作のマニュアルを作成し、研修を行ったことで「すぐに慣れた」との声が聞かれた。

効果:記録の時間が5分から1分に短縮・実際のサービス時間を増やすことができた

事例③:動画研修による新人教育の効率化(大手介護事業者)

新人職員の教育にかかる時間と負担を軽減するため、動画配信型の教育システムを導入。

スタッフはスマートフォンやタブレットで、いつでもどこでも研修動画を視聴できるようになり、OJTの負担が軽減された。

効果:現場の教育担当者の時間を月20時間削減・新人の定着率が向上(3か月以内の離職率が半減)

事例④:センサーとインカムによる見守りと連携の強化(グループホーム)

夜間の見守り業務を効率化するため、ベッドセンサーとインカムを導入。

利用者の離床や異常をセンサーが検知し、スタッフにリアルタイムで通知。インカムで即時に連携できる体制を整えた。

効果:夜勤スタッフの巡回回数が30%減少・転倒事故の発生件数が半減・入眠パターンを分析し、生活リズムをつけることができた

介護業務効率化における課題と対策

介護業務の効率化は多くのメリットをもたらしますが、実際に取り組むとなると、現場ならではの課題に直面することも少なくありません。特に、スタッフの意識やスキルの差、既存の業務習慣、ICT導入への抵抗感などは、効率化を妨げる要因となり得ます。ここでは、介護現場でよく見られる課題と、それに対する具体的な対策について解説します。

スタッフの抵抗感を克服する方法

介護業務効率化を進める際には、スタッフの抵抗感を克服することが重要です。新しい方法やツールを導入する際には、スタッフがそれに対して抵抗を感じることがあります。特に、年齢の高いスタッフやデジタル機器に苦手意識を持っているスタッフが強い抵抗感を示すことが多いです。これを克服するためには、スタッフに対して十分な説明を行い、理解を深めてもらうことが必要です。

また、研修を通じて新しい方法やツールの使い方を学んでもらうことも効果的です。苦手意識を持っていても、実際にやってみると思ったほど難しくなかったという意見も多く聞かれ、年齢に関わらず、業務に必要な操作を使えるようになるためのハードルはそれほど高くないことも多いと思います。

持続可能な改善のための体制構築

業務効率化を持続的に実現するためには、改善を継続するための体制を構築することが重要です。例えば、定期的に業務プロセスを見直し、改善点を洗い出す仕組みを作りましょう。また、業務改善は管理者レベルのみで進めるのではなく、現場のスタッフの意見を取り入れながら進めることで、より効果的な業務効率化が可能となります。

「現場改善の仕組みを整えても、最終的にそれを担うのは“人”です。スタッフの理解度や実践力を高めることが、業務効率化を持続的に実現するカギとなります。」

業務改善に向けたセミナー・研修情報の活用

介護業務の効率化を進めるうえで、現場のスタッフ一人ひとりのスキルや意識の向上は欠かせません。特に、業務の標準化やICTの活用を定着させるには、実践的な学びの場が必要です。しかし、どのようなことを伝えるとスキルや意識が向上するのか悩ましいのではないでしょうか。

そこで効果的なのが、外部のセミナーや研修を活用することです。職場の上司に言われるのと、外部の講師に学ぶのではスタッフの受け止め方も違ってきます。ここでは、業務改善に役立つ研修テーマや、研修を導入する際のポイントについて詳しくご紹介します。

なぜ“業務効率化”に研修が必要なのか?

業務効率化には研修が欠かせません。なぜなら、現場課題の多くは「スキル差」や「認識のズレ」から起きるため、ICT導入やマニュアルだけでは解決しないことが多いからです。また、現場の属人化が非効率の温床となり、「〇〇さんにしかできない」がサービスの質のばらつきの原因になります。さらに、マニュアルを読んでも行動に移せないスタッフが一定数いると考えられるため、実技を取り入れて、体験的に学べる研修が効果的です。

業務効率化に役立つ研修のテーマ例

介護記録の書き方・ミスを減らす方法

介護記録の書き方を学ぶことで、記録の正確性が向上し、ミスを減らすことができます。具体的な研修内容としては、記録の基本的な書き方や注意点、よくあるミスの防止方法などを学びます。研修を実施する際のポイントは、実際の記録例を使って具体的に説明することです。これにより、スタッフは実践的なスキルを身につけることができ、簡潔かつ具体的な記録の書き方マスターできるようになります。

チーム連携・情報共有の強化(引き継ぎ・申し送りの質向上)

チーム連携や情報共有の強化は、業務の効率化に直結します。研修内容としては、引き継ぎや申し送りの方法、情報共有の重要性、コミュニケーションの取り方などを学びます。研修を実施する際のポイントは、実際の業務シーンを想定したロールプレイングを行うことです。これにより、スタッフは実際の業務での連携方法を体験的に学ぶことができます。

業務の優先順位付けやタイムマネジメント

業務の優先順位の付け方やタイムマネジメントを学ぶことで、効率的な業務の遂行が可能となります。研修内容としては、業務の優先順位の付け方、時間の使い方、効率的なスケジュール管理などを学びます。具体的な事例を使って実践的に学ぶことで、スタッフは自身の業務を効率的に管理するスキルを身につけることができます。

新人教育の効率化(OJTの補完)

新人教育の効率化は、業務のスムーズな進行に寄与します。研修内容としては、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の補完として、新人スタッフが業務を迅速に習得できるようにする方法を学びます。具体的な研修内容としては、業務の基本的な流れや注意点、実際の業務シーンでの対応方法などを学びます。研修を実施する際のポイントは、体験的な内容に加え、何度も繰り返し確認できるように動画やマニュアルを併用することです。

ICT・DX推進に関する研修

ICTツールの操作研修は、業務の効率化に直結します。研修内容としては、LIFEや記録システム、ケアプランデータ連携システムなどの操作方法を学びます。具体的な研修内容としては、ツールの基本的な操作方法や注意点、実際の業務での活用方法などを学びます。研修を実施する際のポイントは、実際のツールを使って具体的に説明することです。

外部の研修を活用

外部の研修サービスを活用することは、介護現場の業務改善において非常に効果的な手段のひとつです。現場のスタッフだけで課題を解決しようとすると、どうしても「いつものやり方」や「慣習」にとらわれがちです。しかし、外部の専門的な研修を取り入れることで、第三者の視点から現場を見直すきっかけが生まれ、新たな気づきや改善のヒントを得ることができます。

特に、介護業界に特化した研修サービスでは、現場で起こりがちな課題に対して、実践的かつ再現性の高いノウハウが提供されます。例えば、介護記録の書き方や申し送りの質の向上、ICTツールの活用法、タイムマネジメントなど、日々の業務に直結するテーマが豊富に用意されており、すぐに現場で活かせる内容は業務の効率化に直結します。

また、動画研修・オンライン研修・講師派遣型研修など、施設の状況や目的に応じて柔軟に選べる形式があれば、忙しい現場でも無理なく導入できるでしょう。さらに、動画研修であれば、受講履歴や理解度を可視化できる仕組みがあるサービスも多く、研修の成果をしっかりと確認できる点も大きな魅力です。

「現場の課題を根本から見直したい」「スタッフのスキルを底上げしたい」「業務の属人化を解消したい」といったニーズをお持ちの事業所にとって、外部研修の活用は、業務改善を加速させるにはぴったりです。

まとめ

介護業務の効率化は、介護スタッフの負担軽減やサービス品質の向上に欠かせない取り組みです。超高齢社会における介護の需要増加や人材不足の問題に対応するため、業務プロセスの見直しやICTの活用、業務マニュアルの整備など具体的な手法を導入することが重要です。他事業所の成功事例を参考にしながら、段階的に業務効率化を進めることで、スタッフの働きやすさやサービスの質、生産性を高めることができます。

また、外部の研修を活用することで、スタッフのスキルや意識を向上させ、持続可能な改善体制を構築することが可能になります。

研修を検討中の事業所様は、介護・医療に特化した研修を開始して20年以上の実績を持つ、ツクイスタッフへご相談ください。ツクイスタッフでは、実践的な研修を通じてスタッフの専門性を高めることを目指しています。また、研修プログラムは集合研修やeラーニングサービスなど、多様なニーズに合わせた形式で展開しております。これにより、スタッフは自身のスキルアップを図りながら、より良い介護サービスの提供を目指すことができます。

介護の専門性を高め、質の高いサービスを提供するためには、継続的な学びと成長が必要です。ツクイスタッフの研修プログラムは、そのような成長を支援するための環境を提供しています。詳細については、ツクイスタッフの公式サイトをご覧ください。

>>ツクイスタッフの研修サービスについてはこちら

  • 合同会社カサージュ代表/主任介護支援専門員/
    BCAO認定事業継続管理者/産業ケアマネジャー

    寺岡 純子

    経歴詳細を見る

よく読まれている記事

  • 令和6年度から全介護施設で高齢者虐待防止の推進が義務化!概要や取り組み方について解説

    介護報酬・加算掲載日: 2024.01.15(更新日: 2024.05.23)
    続きを読む
  • 介護現場での緊急時の対応マニュアル!介護職員の心得や緊急時対応の事例も紹介

    スキルアップ掲載日: 2023.10.19(更新日: 2023.12.05)
    続きを読む
  • 介護施設の法定研修とは?内容や年間計画の作成方法について解説

    介護報酬・加算掲載日: 2024.05.28(更新日: 2024.05.28)
    続きを読む
  • 介護現場で起こる職員へのハラスメントとは?事例と対策を紹介

    介護施設掲載日: 2023.09.15(更新日: 2023.12.05)
    続きを読む
  • 介護職における接遇マナーとは?5原則とその重要性について解説

    スキルアップ掲載日: 2023.09.05(更新日: 2023.12.05)
    続きを読む

研修についてのお問い合わせはこちら

お問い合わせ